ゴリラ爆発#3 ゴリラバカンス◆1
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減衰世界
@decay_world
＿ザリガニ騎士団も、ペンネ騎士団もいなくなった、火焔ヒマワリの街。正確に言えば、一部の団員は常駐している。今日もペンネ騎士団の従者が買い物の手配をしていた。 まだ若い娘だが、てきぱきと仕事をこなす。仲間が帰ってきたときに準備が整っているように。 61
2016-03-09 17:09:29
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＿若い娘は商店街をぶらついていた。右手には買い物メモ。しかし、目の前の魅力的な製品を見ていると、つい買いたくなってしまう。ちょうど古道具屋の店先に、高価な掘り出し物が並んでいたりするのだ。 娘はその商品に目を奪われた。嫌な予感がする。 62
2016-03-09 17:16:20
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「親父さん、これって……」 「おう、目が高い！ これはな……」 商品の説明を聞いて、血の気が引く思いがした。それを購入し、急いで魔法店を探す。長距離テレパスの呪文を買わなければならない。この際金は後だ。 「はやく知らせなくちゃ……」 63
2016-03-09 17:20:26
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＿一方、荒野のど真ん中に立ち往生した戦車。ザリガニ騎士団の防御魔法は尽き、明らかに不利な状況となっていた。 ザリガニ騎士団の面々は遠巻きに戦車を監視する。しかし、包囲の輪が広がると、進入路も増えるということだ。日は沈もうとしていた。 64
2016-03-09 17:24:56
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「いい加減戦車を捨てて投降しろ！」 長身の女騎士が告げるが、返ってきたのは砲弾だった。慌てて逃げる女騎士。轟音、土埃。 あれほど照り付けていた太陽も、今は寒々としていた。風が強くなる。 「これ以上は無理だな……ん？」 65
2016-03-09 17:28:45
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＿戦車の蓋が開き、白旗が上がる。拡声器で中から声が響く。 「状況が変わった。もう貴様らは追わない、狙わない、奪わない！ だから戦車だけでも回収させてくれ！ 呪いの契約をしてもいい！」 長身の女騎士と、3人の猛士は物陰で顔を見合わせる。 66
2016-03-09 17:33:09
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＿呪いの契約は神々への誓約の元結ばれ、反故にするときついペナルティが課せられる。そのため、法の無い荒野では最も一般的な契約の手段であった。 15日分の不戦契約を交わし、戦車を修理して、ペンネ騎士団はすごすごと去っていった。ぽかんとした顔で見送るザリガニ騎士団。 67
2016-03-09 17:37:45
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＿一方街でも、急に追手の追撃が止んだと思うと、ボルトでの矢文が飛んでくる。 「ひぇぇ、どうしたんだろう……」 バルメルが文面を読み上げる。 「ゴリラは勘違いでした。我々の狙っている商品とは違いました。ゴメンネ」 「まじかよ……」 68
2016-03-09 17:41:41
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「結局ゴリラは何だったんだろう」 不健康そうな技師は、ゴリラを小突いて言う。明らかに疲労の色が濃い表情だ！ 「手紙によると……ただの……ゴミだそうで……」 バルメルは泣きそうな声で言う。金髭はにやりと笑って肩をすくめた。 69
2016-03-09 17:45:39
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＿通行人は、がやがや騒ぐ。ザリガニ騎士団だけが、恥ずかしい思いをして道端に立ちすくんでいた。ゴリラの置物は、そんな彼らの心境を知るわけもなくガタガタと震え、空に向かってビームを乱射する。 金髭は大声で笑った。 「ハハハ！ 悪いのは全部ゴリラだ、それでいいじゃないか！」 70
2016-03-09 17:49:45
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【用語解説】 【テレパスの呪文】 言葉を交わさずに意思疎通を行う魔法。交信をする二人の距離が近いほど、簡易で、安い呪文になる。複数人に対して交信する広域テレパスはかなりの難易度。脳内イメージなども送れる。傍受する呪文もあるため、重要なことは送らないか、暗号化する必要がある
2016-03-09 17:56:31