「デッドムーン・オン・ザ・レッドスカイ」 #8

翻訳チームによるサイバーパンク・ニンジャ活劇小説「ニンジャスレイヤー」リアルタイム翻訳 (原作:Bradley Bond-san & Philip Ninj@ Morzez-san) ニンジャスレイヤー公式ファンサイト「ネオサイタマ電脳IRC空間」 http://d.hatena.ne.jp/NinjaHeads/ 続きを読む
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ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

第1巻「ネオサイタマ炎上」より 「デッドムーン・オン・ザ・レッドスカイ」#8

2011-02-01 00:00:05
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

(前回までのあらすじ:ダルマ・テンプルでスガワラノ老人の成れの果て、ゾンビーニンジャ被検体1号レベナントを辛くも破ったニンジャスレイヤー。生首となったスガワラノ老人と最後の会話を行っていたニンジャスレイヤーの背後から、武装霊柩車ドライバーのデッドムーンが現れる)

2011-02-01 00:02:45
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

(デッドムーンと彼の武装霊柩車は、ニンジャスレイヤーとの戦いで敗北を喫している。デッドムーンは自らの正体がスガワラノ老人の一人息子スガワラノ・ヒトリであることを明かし、瀕死の父に礼の言葉を投げかけた。そしてデッドムーンは腰からオートマチック銃を抜き、静かに引き金を引いたのだった)

2011-02-01 00:05:25
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「アバー……ヒトリ……キョート…」生首が声を発した。「今日は仕事が休みでな」と、ぞっとするほど不吉な顔でデッドムーン。「アバー……ドーモ……」「親父よ、あんたのお陰で俺は、誇りある仕事に就いてるぜ。ありがとうよ」そう言うと、彼はジーンズからぶっきらぼうに銃を抜き、トリガを引いた。

2011-02-01 00:05:51
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

銃声が薄暗いダルマ・テンプルに響く。フジキドは動かなかった。死ぬつもりはなかったが、デッドムーンには自分を撃つ正当な権利があると考えたからだ。だが、彼の体に銃弾は触れもしなかった。代わりに、フジキドのかき抱いていたスガワラノ老人の生首が、紫色のゾンビエキスをぶちまけて弾け飛んだ。

2011-02-01 00:08:13
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「アバー……」という安らかな断末魔の声とともに、レベナントの生首は木っ端微塵に破壊された。生き地獄を味わうスガワラノ老人のソウルに対し、デッドムーンがカイシャクを行ったのだ。ニンジャスレイヤーは驚きと敬意に満ちた目でデッドムーンを見た。

2011-02-01 00:11:30
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「あんたは撃たん。俺はプロフェッショナルだ。スピーカーから聞こえてくる声で全て理解した。俺は偽の仕事を与えられ、はめられたんだ。俺はアブで、あんたはハチさ」何たる冷徹さ、そして判断力か! 車内で注射した各種薬物の力を借りているとはいえ、デッドムーンの精神力は驚くべきものであった。

2011-02-01 00:17:41
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「ドーモ、ヒトリ=サン……」ニンジャスレイヤーは言葉に窮した「すまない。己のウカツのせいで…スガワラノ老はソウカイヤに捕えられたのだ」。デッドムーンは皮肉な笑みを返した「俺はもうミフネ・ヒトリですらない。ただのデッドムーンだ。あんたもその類なんだろう? ニンジャスレイヤー=サン」

2011-02-01 00:26:12
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

その時! ダルマ・テンプル内の四隅に置かれた灯篭がメカニカル展開し、高性能プラスチック爆薬が激しく破裂した! 火花が狂ったように回転し、ヒノキ木材の壁を燃やす! 続けざま、丘の下にスタンバイしていた100人のクローンヤクザ軍団が、テンプルに向けてマシンガンの一斉射撃をくり出した!

2011-02-01 00:32:53
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「くだらん茶番だ!」トコロザワ・ピラーの宴会室で映像を確認していたラオモトは、レベナントの敗北とアブハチトラズな状況に怒り心頭し、近くに置かれた黄金シシマイを拳で叩き割った。マイクのスイッチを押し威圧的な声で吐き捨てる。「サヨナラ! 余興は終わりだ、ユーオールマストサッファー!」

2011-02-01 00:37:20
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

トコロザワ・ピラーの宴会室は死の静寂に静まり返る。暴君ラオモトの怒りは、ニンジャスレイヤーとデッドムーンに対して浴びせられただけでは済むまい。ニュービーニンジャたち数十名は正座の姿勢のまま凍りついていた。何の脈絡も無くセプクを言い渡されるかもしれない。暴君とはそういうものなのだ。

2011-02-01 00:40:15
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

粉々に砕かれた黄金シシマイを目の前にして、フブキ・ナハタは恐怖のあまり静かに失禁する。だが余人ならばいざしらず、リー先生だけは、ラオモトへの恐怖を科学的興味で克服していた。「……これは素晴らしい研究結果ですネェ……。ゾンビーニンジャは、生前の記憶や知性を保っていたのです……」

2011-02-01 00:42:42
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「ムウ?」ラオモトはリー先生に大股で歩み寄る。彼の力をもってすれば、小指ひとつでこの科学者を死んだマグロに変えられるだろう。だがリー先生はまくし立てた。「つまり、ラオモト=サンの死後も、その自我を保った状態で復活させられるのです! 今はまだ不完全ですが、いずれ必ず実現できます!」

2011-02-01 00:43:36
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「フウム……ム…ムハ……ムッハハハハ! 豪胆さに免じて許そう、リー先生よ」ラオモトは宴会室のニンジャらに強者の威厳を存分に見せつけたことで満足を覚えた「では俺様もひとつ、科学的見解を示してやろう。今後被検体には善人など使うな。ニンジャと同じくらい卑劣で無慈悲な極悪人を選ぶのだ!」

2011-02-01 00:45:27
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

かくしてラオモトは退室し、トコロザワ・ピラーの宴会室はニュービーニンジャらの安堵に満ちた顔で溢れる。一方、ダルマ・テンプルはバクチク装置の作動からわずか数十秒で火炎地獄と化していた。丘の上のテンプルは赤々と燃え、低く垂れ込めた月がデッドムーン・オン・ザ・レッドスカイを成していた。

2011-02-01 00:51:24
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ホタルめいた火の粉が飛び交う。天井まで火が回り、飾られていたショドーやダルマが次々と落下してきた。クローンヤクザ軍団は丘の下から威嚇射撃を続けている。ニンジャスレイヤーは毒を飛ばすため座ってチャドー呼吸を行い、デッドムーンは薬物で覚醒しきったニューロンを使いハイクを詠んでいた。

2011-02-01 00:58:44
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「逃げないのか?」ニューロンの中でハイクをひとりごちながら、デッドムーンは不思議そうにニンジャスレイヤーに問うた。「毒が回ってきたようだ。そちらこそ、逃げないのか?」とフジキドは返す。「ショウタイムは終わりさ。ネズミハヤイはもう動かない」デッドムーンは他人事のように言った。

2011-02-01 01:06:17
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

クラッシュ時に自動注射される各種薬物の力により、デッドムーンは全身の痛みを感じることもなく平然と振舞っていた。それどころか、彼の思考力はフジサンの頂上を吹き抜ける風のごとく澄み渡っていた。その思考力が、彼に冷酷な事実を突きつけていたのだ。もはや脱出不能のデッドエンドであることを。

2011-02-01 01:09:37
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「何故動かない?」とフジキドが訊いた。「大仏に突っ込んでフレームが曲がった上に、足を取られている」とデッドムーン。「私が押してみよう」とフジキド。「押して動く訳が無い。何トンあると思ってる?」「私はニンジャだ、押してみよう」と、フジキドは力強く繰り返して言った「私はニンジャだ」。

2011-02-01 01:15:15
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

BLAMBLAMBLAM!!!! 「ザッケンナコラー!」本堂に対するマシンガンの制圧射撃はなおも激しさを増し、クローンヤクザの怒声が不協和音を奏でる。そして後方から到着したバズーカ部隊の砲撃が容赦なくダルマ・テンプルを責め苛み……ナムアミダブツ! ついに本堂は大爆発を遂げたのだ!

2011-02-01 01:28:43
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

だが、テンプルが紅蓮の火柱を上げて大爆発を起こす直前……その本堂の奥深くから重く静かな、しかし断固たる決意を秘めた掛け声が聞こえた! 「Wasshoi!」と! 直後、武装霊柩車のモニタから「脱出不能」の文字が消える! ニトロエンジンが火を噴く! 4つのヘッドライトが闇を切り裂く!

2011-02-01 01:32:42
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

飛んだ! 満身創痍のネズミハヤイは、再びクロームシルバーの翼を広げ、デッドムーン・オン・ザ・レッドスカイを成す丘の上空を旋回したのだ! それは死の翼を持つ夜の怪物! ニトロエンジンの轟音! 乱射されるマシンガン! バズソーとダイヤモンド・カマ! タケヤリ! クローンヤクザの絶叫!

2011-02-01 01:37:07
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

毒で半ば意識を失ったニンジャスレイヤーは、ネズミハヤイの小型シュライン部分に死んだように身を横たえてしがみつき、武装霊柩車が飛ぶ独特の感覚を味わっていた。彼の横では、腕だけになったスガワラノ老人が棺もなく佇んでいた。殺戮を終えたデッドムーンは、武装霊柩車を夜の闇へと溶け込ませた。

2011-02-01 01:41:04
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

チャドー呼吸を繰り返して毒を飛ばしながら、ニンジャスレイヤーはおぼろげな思考を続けていた。デッドムーンを一人の戦士として理解し、敬意を払いもする。確かに彼は敵ではない。だが自分とは絶対に相容れぬ者だ。デッドムーンも恐らく、誰一人とも相容れぬだろう。だからネズミハヤイを選んだのだ…

2011-02-01 01:44:10
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

追っ手を振り切ったと考えたデッドムーンは、レッカーに連絡を入れるべく、廃倉庫のシャッターを突き破って強引にネズミハヤイを隠した。恐らくソウカイヤやダークオニ・ヤクザクランは、もう今日は彼に攻撃を仕掛けてこないだろう。運びの仕事は終わったからだ。

2011-02-01 01:46:44