集団遊びで起きる子どもの問題行動とその対策~アドラー心理学をベースに~
- gameryouiku
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さて、今日はゲームを通じて現れてくるお子さんの問題行動について、その原因と対応を、療育的意義も交えて解説する。
2016-04-04 21:01:48ゲームの進行を困難にさせるようなお子さんの問題行動には以下の様なものがある。①ゲームに参加しない ②暴言を言ったりわざとルールを破るなどして場を壊す ③わざと負ける
2016-04-04 21:11:57こうした問題行動の裏には、お子さん自身の過去の失敗体験に起因する、「ルールを間違えて恥ずかしい思いをするのではないか」とか「負けて人から馬鹿にされるのではないか」という不安な気持ちが隠れている。
2016-04-04 21:15:22従って適切なグルーピングとゲーム選択、そして適度な大人の介入でもって、子どもたちが失敗を恐れず安心して遊べる環境を整えたなら、時間を経るごとに問題行動は減少していく。そしてこの「他の子たちと安心してルールを守りあって楽しく遊べた」という経験自体が集団参加への自信回復に繋がる。
2016-04-04 21:29:25ただし、「安心して遊べる」までには一定の道のりがある。先の①ゲームに参加しない ②暴言を言ったりわざとルールを破るなどして場を壊す ③わざと負ける という3つの問題行動には、その道のりの遠さ(深刻さ)において明確な序列がある。みなさんはどれが一番深刻な問題だと思われるだろうか。
2016-04-04 21:32:34一番深刻ではない、「安心して遊べる」状態に最も近いのは、①ゲームに参加しない子である。このお子さんは失敗するのではないか、負けるのではないか、という不安がストレートに「参加しない」という行動にあらわれている。従って不安さえ取り除けば、水を得た魚のようにゲームを楽しむようになる。
2016-04-04 21:42:07具体的にはシンプルなルールで、ビジュアル的に興味を惹きやすいゲーム(写真のベルズなど)を用意し、最初は見学してもらう。そして子どもたちが楽しんでいる様子を見せた上で、二回目以降のプレイに誘うとたいていは乗ってきてくれる。 pic.twitter.com/SWn3Q6ft4B
2016-04-04 21:46:52最初不安で参加をしぶっていた子ほど、いったん楽しんでゲームをプレイした経験ができると、誰よりもゲームの時間を望むようになる。「勇気を出してゲームに参加したら楽しかった」経験は、お子さんにとってはまるで砂漠でオアシスに出会ったような気分のはずだ。
2016-04-04 21:54:12次に程度が軽いのは、②「暴言を言ったりわざとルールを破るなどして場を壊す」ことだ。先述の通り、ルールを間違えたり負けることが怖いので、「ルールを守りあってゲームを楽しむ」という本来の目的とは違うところで自己の優位性をアピールしようという動きである。
2016-04-04 22:04:48この手の問題行動では指導者の誤った対応がなされやすい。たとえば暴言を言う子に、「やめなさい!」と叱責することは、「先生に叱られるワルい自分」という優位性を他の子にアピールできる点で、その子の狙い通りになる。したがって叱責をすればするほどその子は問題行動をエスカレートさせる。
2016-04-04 22:12:03逆に暴言にたいして「今、そういう気持ちなんだね」などと共感を示すのもNGだ。お子さんにとっては指導者の特別の注目を引き出した点で狙い通りだからだ。この場合、お子さんの中に「問題を起こせば先生が注目してくれる」という認識が生まれ、問題行動はさらにエスカレートする。
2016-04-04 22:15:43そこで暴言に対する指導者対応の基本は「無視」になる。が、残念ながらこの対応はマンツーマンでしか通用しない。集団ではいくら指導者が暴言を無視したところで他の子が怒ったり、あるいは冗談めかした内容に笑ったりするといった反応をしてしまうため、やはりその子の行動を強化してしまう。
2016-04-04 22:21:59ここで役立つのがアドラー心理学の「論理的帰結の演出」というテクニックだ。具体的には暴言を言う子に対し、「あなたの行動は他の子の迷惑になるので、同じ行動が繰り返されるなら、この場から離れてもらいます。」と”アナウンス”するのだ。それでなお暴言がなくならなければ粛々と強制退場させる。
2016-04-04 22:28:44この際、指導者は私情を交えず、あくまで論理的に振る舞う。このとき、指導者は先生でもなく友人でもない。カジノにいる黒服の警備スタッフである。他のお客様にご迷惑をかける方には予め定められた規約に基づきご退場いただくのである。そこには「命令」の要素も「指導」の要素もあってはならない。
2016-04-04 22:32:48もし指導者の言葉に「命令」や「指導」の要素があると、それが子どもとの間に上下関係を生み出し「反抗」を引き出す。そうではなく、フラットな立場で「この場にはこういうルールがあります。それを破ると退場させられます。あなたはルールを守りますか。破りますか。」と問いかける。
2016-04-04 22:38:49この問いかけはその子に「ルールを守ってこの場に居続けるか、ルールを破って退場するか」の葛藤を生む。出てくる答えは常に前者である。なぜか。退場したら誰も自分のことを認めてくれないからだ。しかしルールを守るのはあくまで自分の意志であり、先生に命令された訳ではない、という所が重要だ。
2016-04-04 22:48:06お子さんは他者の承認を得るためにする「暴言を言う」という行動が、実際には機能しないばかりかその場から退場させられかねない危険な行動であることを認識し、自らの判断でそれを修正する。すなわち本来の目的であるゲームの「ルールを守り合い、活躍すること」で他者の承認を得ようと決めるのだ。
2016-04-04 22:53:32お子さんにポジティブな方向修正が見られたとき、状況次第では、私はカードの引きを操作して意図的にその子を勝たせることすらある。そして勝利を賞賛する。「暴言を言う」という過去の間違った方向から「ルールを守りあって楽しむ」という新しい方向への転換が間違いでないことを認識させるためだ。
2016-04-04 23:04:32最後に③「わざと負ける」 これが一番回復に時間がかかる。②「暴言を言う」は、間違った方法ではあるものの、「自分の優位性をアピールしていく」という点でポジティブな要素がみられるのに対し、こちらは自分の無能さをアピールすることで他者の注目を集めようとする動きだからだ。
2016-04-04 23:19:37従って、わざと負ける子が、ゲームに真剣に取り組み、その過程を楽しめるようになるためには、「無能さをアピールして他者の注目を得ようとするのは間違いであること」「自分は無能ではないこと」の二つを理解してもらわねばならず、その分だけ改善に時間がかかる。
2016-04-04 23:32:28わざと負ける子に決してやってはいけないのは「やる気が無いならやめてしまえ!」などと叱責することである。これは子どもを崖から突き落とす行為である。
2016-04-04 23:36:45その子はまともにゲームをやっても恥ずかしい思いをするだけだと考え、かといって指導者に反抗するという強行策に出る勇気もなく、仕方ないので自分の無能さをアピールしているのである。それすら否定されたら、もうその子にはなにも出来ることはなく、絶望するしかない。
2016-04-04 23:38:49かといって本人の無能さに共感を示すのも、②と同じ理由で本人の誤ったアピールを強化してしまうことになるため、適切ではない。
2016-04-04 23:51:20わざと負ける子に即効性のある対策はない。唯一の救いは、集団全体にとって、わざと負ける事自体はゲームの進行を妨げるほど重大な問題にならないことだ。なので、わざと負けることには注目を与えず、代わりにゲームで繰り返し遊ぶ中で、活躍できそうな機会を丁寧に作って行くのが基本的な対応になる。
2016-04-04 23:53:42この「わざと負ける子」の回復過程は中々に興味深いものがある。まず口では「負ける」「もうダメ」とか言いながら、プレイイング自体は勝ちに向かったものに変わってくる。
2016-04-05 00:01:51