富野流仕事術~自分の個性を信じる~その3 (講演最終パート/質疑応答まで)
<Gレコ劇場版へ向けて> Gレコの大問題とは、ヒットしなかったこと(会場笑)ドラマよりも設定消化の作品になってしまった。これを理解しているから映画化を見据えた再編集版を作っている。「実績にあぐらをかいて作っているのでは?」と言われればそれまで。反論はしない。
2016-04-21 03:19:01ただ、Gレコのテーマのためにも、もう少し広く見てもらえるようにしたい。分かりやすく言うと、Gレコを「ゆるキャラ」のように作っている。つまり表現シンボルとしての分かり易さを手に入れる。知育があって抱っこしにいってもいいような気分。理念として背景に置く。
2016-04-21 03:19:39その結果、とても面白いものになっているなと思う。自分の我、エゴの表現ではなくキャラクターの持っているものを出すところに行き着けたのではないか。
2016-04-21 03:20:05映画版の一本目はとても面白くなっている…と言うのはエゴでしょ?一本目がヒットしないと二本目はなくなる。これに囚われると一番始めのスターウォーズのようになる、がしなかった。AKB的な作り、ラブライブにもしない。
2016-04-21 03:20:32映画版は半年くらいやっている。これに際して勉強した。Gレコのシナリオ段階から抜け落ちている大問題、とは『統治論』、政治。映画版一本目はやっていいよと言われたので勉強した。アイーダに世界中を統治する「資質」を持たせたかったから。
2016-04-21 03:21:18どんな本を?と思ったら、本棚に昔からあった岩波の「統治論」、でも旧仮名・旧字体で、昔の言葉遣いなので嫌!読んでもわからない。今は岩波で「統治二論」というのがある。読むことができた。イギリスのジョン・ロックJohn Lockeが著した。
2016-04-21 03:21:42本書では「社会契約」や「抵抗権」を説いた。これらはアメリカ独立宣言やフランス人権宣言に影響を与えたとされている。「抵抗権」とは一人の人間にも主権があり、違う意見を言うことができる権利。本書のキモは、『ものごとは広く考えなければならない。第三者が人を説得する方法はない』ということ。
2016-04-21 03:22:07具体的にいうと、『人間は生まれながらに自由ではない』とサー・ロバート・フィルマーSir Robert Filmerが述べた。その人というよりその時代が「王権神授説」、王権は神から与えられた揺るぎないもの。ロックは王権神授説を「理解できるんだけどもね」と長々説明する。
2016-04-21 03:22:29フィルマーの「パトリアーカ」という格好いいタイトルの本から逐一抜き出して反論する。「だけれども」という書き方。アダムとイヴ以前に「自然法」がある。自然の摂理に則る、従う必要があるのではないか。それなのになんで王権神授説なの?そもそも神様っているの?って話を、そういう時代に説いた。
2016-04-21 03:23:36わけのわからない神様から戴いている王権よりも自然法があるのでは、というのが社会契約説。ひどい要約をしたが統治二論はそういう内容、統治論が書いていない。「個人の権利を認めましょうよ」ということが書いてある。ストレートに言うと処刑される。
2016-04-21 03:24:05で、『ものごとは広く考えなければならない。第三者が人を説得する方法はない』と書いてあるのがこの本。もうちょっと巧妙に物事を考える、統治、政治のやり方を書いた本はないか。読んだけど困っちゃった。アイーダさんを成長させられる要素、言葉がない!ということでもう一冊読んだ。
2016-04-21 03:24:53これも50年本棚にカッコいいだろうと飾っていた岩波の「方法(論)序説」、フランスのルネ・デカルトRené Descartesが著した。昔の本は序が叙と書いてあるのもある。ものごとの考え方が書いてあると思いきや…読んだ人いる?今の新訳は読み易い。翻訳によって本の正体は変わる。
2016-04-21 03:25:16当時はラテン語で論文を書かないといけないがフランス語、広く読んでもらいたいから。書いてあるのは屈折光学(スペクトル)や幾何学、解剖学といった当時の先進的知識の紹介。6章から成り、その6章・天文学について宇宙の運行を「神がこうしている」と書いてみせている。
2016-04-21 03:25:52「これ以上のことを書きたいんだけどね!」って。原文でも惑星や恒星っていう言葉まで使っている。既に違いが分かっている。ガリレオ・ガリレイが「異端審問」にかけられて終身刑の判決がでたので、デカルトは「私は死刑になりたくない!これ以上書くのをやめる!」と書いている。
2016-04-21 03:26:20何よこれ・・・(笑)方法や考え方、書いてない。「死刑になりたくないから」って。こんな言い方ちゃんと勉強した哲学者はしない。僕だから(笑)我思う、ゆえに我在りってちゃんと書いてある本です。本全体の印象から評価しなくちゃいけない。Gレコやアイーダと関係あるの?ほとんどありません。
2016-04-21 03:26:53ものの考え方として、旧来の「ガンダム的なこと」はロックやデカルトにとっての既存宗教的考え方と同じような力を持ったものと捉えると、脱ガンダムの考え方をしないと既成事実、我々の思い込んだ考え方は突破できないのでは。
2016-04-21 03:27:27アイーダにどういうことをさせると、女王になり得るための言葉遣い考えていかないといけない。けれどそう考えさせてくれるというのがとても素敵なことなのではないか。視聴対象が大人だったら読まなかった本である。今の流行り言葉や大人の理屈で喋ってはダメなのでは。「確実な知見」が必要。
2016-04-21 03:28:06100年以上堪え抜いた知見の方が確実なのでは。表面的内容ではなく300年評価され生き抜いた意味を考える。考えていかなくてはいけないのは「我」、我思うゆえに我在り。突きつけられている。こういう演題でこういう話になるのが、トミノがトミノである所以かもしれない。
2016-04-21 03:28:25皆さんに読んでいる暇がないのは理解している。年上の任務とはこういうことをやることではないかとも思う。子供たちを相手にしようとすれば現役でいられるかもという、錯覚できる。個性かもしれないがただのクセかもしれない。エゴかも。自分を中心にして考えるのは絶対やめないといけないのではないか
2016-04-21 03:29:00デカルトがある偉いお坊さんに天体の話をしたら、そのお坊さんは他所で全然違うことを人に言っていたらしい。デカルトは「もう他人に絶対しゃべらない」と決めた。外界との関係身につまされているのがロック、デカルト。
2016-04-21 03:29:22日本では「哲学書」になっている。アニメ屋の読むものでないとされていたが、くだらないものか?いやそうではない。論調や存在としての意味があるとわかった。作らなきゃいけない作品は自分の好きだけでやってはいけない。甘くない。これが僕の「個性」これでやるしかないと…一応演題に辿り着けた。
2016-04-21 03:29:56<質疑応答> 司会者:質問は時間の関係で1件だけ 質問者:社会人になったばかりの女性 質問:時間をつくって、ものごとに集中力と気力をもって取り組むコツを教えてください。 以下富野氏回答 繰り返しやって飽きないこと。他にない。自分のスキルは便利に上がらない。
2016-04-22 09:37:34それに応えられるひとが特例として語られ得るようになる。例えばフィギュアスケートの羽生さん、大変なケガがあっても頑張っている、反吐の出るくらいの練習しているはず。卓球の福原さんであったり、ナマジではない。
2016-04-22 09:38:05