f^-1と∪, ∩の交換と圏論について

http://alg-d.com/math/kan_extension/ のPDF「Kan拡張」に載っている例の話です
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V-alg-d(ZZ) @alg_d

今日も圏論の話するか

2016-04-24 02:35:56
V-alg-d(ZZ) @alg_d

圏の例として、順序集合というのがある

2016-04-24 02:39:38
V-alg-d(ZZ) @alg_d

(X, ≦) を順序集合としたとき、 ・元x∈Xを対象とする ・x≦yのとき、xからyへの射がただ一つ存在する ・x≦yでないとき、xからyへの射は存在しない とすると、圏が得られる。この意味で、順序集合Xを圏とみなす

2016-04-24 02:41:34
V-alg-d(ZZ) @alg_d

ここで圏における極限というのを考えてみる。

2016-04-24 02:42:35
V-alg-d(ZZ) @alg_d

「極限」の具体例として、直積という概念がある。集合の直積や群の直積、位相空間の直積などを一般化した概念である

2016-04-24 02:43:44
V-alg-d(ZZ) @alg_d

順序集合(X, ≦)を圏とみなして、圏Xにおける直積を考えてみる。

2016-04-24 02:44:35
V-alg-d(ZZ) @alg_d

x, y∈Xを取り、直積x×yが存在したとしてみる。定義から、こいつは次の条件を満たす。 ・x×y≦x かつ x×y≦yである ・z∈Xが「z≦x かつ z≦y」を満たせば、z≦x×yである

2016-04-24 02:46:17
V-alg-d(ZZ) @alg_d

つまり、x×yとは「xとyの下にある奴のうち、最大のもの」、すなわち{x, y}の下限(=最大下界)である: x×y = inf{x, y}

2016-04-24 02:47:29
V-alg-d(ZZ) @alg_d

例えば、有理数全体 Q を通常の順序で順序集合、すなわち圏とみなしたとき、有理数x, yに対して直積 x×y は常に存在し、min{x, y} のことである

2016-04-24 02:49:19
V-alg-d(ZZ) @alg_d

例えば、集合Aのべき集合P(A)を、包含関係で順序集合、すなわち圏とみなしたとき、S, T∈P(A) に対して直積 S×T は常に存在し、 S×T = S∩T である。

2016-04-24 02:50:33
V-alg-d(ZZ) @alg_d

圏論では双対というのがあって、射の向きを逆にして得られる概念を双対概念という。直積の双対を余直積と呼ぶ。

2016-04-24 02:51:38
V-alg-d(ZZ) @alg_d

順序集合の場合、直積は下限だったけど、その双対である余直積は上限である。つまり下限と上限は双対の関係にある。

2016-04-24 02:52:19
V-alg-d(ZZ) @alg_d

特にP(A)を考えれば∩と∪は双対である。

2016-04-24 02:52:39
V-alg-d(ZZ) @alg_d

さて、 f: A→B を写像とすると、「像」を与える写像 f: P(A)→P(B) と、「逆像」を与える写像 f^-1: P(B)→P(A) があった。

2016-04-24 02:53:47
V-alg-d(ZZ) @alg_d

皆さんよくご存じのとおり、 f^-1 は∩や∪と交換する: f^-1(S∩T) = f^-1(S)∩f^-1(T), f^-1(S∪T) = f^-1(S)∪f^-1(T)

2016-04-24 02:54:56
V-alg-d(ZZ) @alg_d

一方 f: P(A)→P(B) は∪とは交換する( f(S∪T) = f(S)∪f(T) )けど∩とは交換しない: f(S∩T) ≠ f(S)∩f(T)となる例がある

2016-04-24 02:56:36
V-alg-d(ZZ) @alg_d

これはいったいどうしてなのか?

2016-04-24 02:56:51
V-alg-d(ZZ) @alg_d

ここで、今の話はいったん置いといて随伴というものを考える。

2016-04-24 02:57:31
V-alg-d(ZZ) @alg_d

C, Dを圏、F: C→D, G: D→C を関手としたとき、組(F, G)が随伴とは、c∈C, d∈D について自然な同型 Hom_D(Fc, d)=Hom_C(c, Gd) が成り立つことをいう。(Homは集合だから、ここで同型と言っているのは全単射のことである)

2016-04-24 02:59:06
V-alg-d(ZZ) @alg_d

例えばXを集合として、右から直積する関手 -×X: Set→Setと、Homを取る関手 Hom(X, -): Set→Set を考えると、A, B∈Setに対して全単射 φ: Hom(A×X, B)=Hom(A, Hom(X, B))が存在するから、

2016-04-24 03:01:29
V-alg-d(ZZ) @alg_d

-×XとHom(X, -)は随伴である。(φは、写像 f(a, x): A×X→B に対して、φ(f): A→Hom(X, B) を φ(f)(a) = f(a, -) で与える写像である)

2016-04-24 03:02:59
V-alg-d(ZZ) @alg_d

随伴 Hom_D(Fc, d)=Hom_C(c, Gd) となっているとき、Fを左随伴、Gを右随伴という。

2016-04-24 03:04:27
V-alg-d(ZZ) @alg_d

ここで重要な定理がある: 左随伴は余極限と交換する。右随伴は極限と交換する。

2016-04-24 03:06:47
V-alg-d(ZZ) @alg_d

特に、左随伴は余直積と交換し、右随伴は直積と交換することが分かる。

2016-04-24 03:07:10