五島美術館『春の優品展 恋歌の筆のあと』 4/30ギャラリートーク「源氏物語絵巻について」レポート

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きき @1oving_rabbit

さて、これから、本日行ってまいりました、五島美術館『春の優品展 恋歌の筆のあと』ギャラリートーク「源氏物語絵巻について」のレポートを連投しますよ。連投がうるさい方、またネタバレしたくない方(※5/3・5/6にも同じギャラリートークがあります) はミュートをお願い致します。

2016-04-30 22:43:24
きき @1oving_rabbit

ギャラリートークのテーマは「源氏物語絵巻について」。ギャラリートークと言っても展示室ではなく別館講堂にて、パワポを使って行われました。はじめはトークのみで、紫式部の略歴と源氏物語の成立について、また源氏物語絵巻の基礎情報についての解説がありました。

2016-04-30 22:50:56
きき @1oving_rabbit

まずは成立について。成立は、文献に出てくる記述からの推定、絵画表現の特質、書風や料紙の特徴などから分析され、おおよそ12世紀前半〜中頃といわれている。

2016-04-30 23:05:59
きき @1oving_rabbit

伝来については、江戸初期に尾張徳川家に伝わっていたという記録があるものの、それ以前は不明。そのうちの十五面が現在、徳川美術館に所蔵されている。また、阿波蜂須賀家に伝わっていた四面が幕末頃民間に流転、三井財閥の益田家などを転々とし、これが現在、五島美術館に所蔵されているものである。

2016-04-30 23:11:28
きき @1oving_rabbit

作品の構成は「詞書」と「絵」が交互に段落式になっているのが特徴。全54帖のうち現存しているのは詞書20帖、絵13帖(それぞれ断簡を含む)。各帖から1~3場面が抜き出しで描かれ、それに合わせた詞書を添えるという形であるが、絵巻での文章量・絵画量は物語各帖の長短には関係がないようだ。

2016-04-30 23:19:28
きき @1oving_rabbit

詞書は“現在残っている源氏物語の原文で最古”のもの。本文としての現存最古は鎌倉時代(藤原定家が諸処の本をまとめたもので、青表紙本のルーツのもの)が最古だが、源氏物語絵巻の成立は平安後期〜末期なので、こちらの方が古いといえる。ただし、場面は抜き出しなので全文ではないし、誤字が多い。

2016-04-30 23:28:13
きき @1oving_rabbit

絵の部分では、和歌の場面や挿話的な場面が選ばれていることが多いが、後世で源氏絵として決まり事的に選ばれている場面とは異なるチョイスも見受けられる。圧倒的に屋内での場面が多く、何かしらのフォーマットがあったのではないかと推測される。

2016-04-30 23:33:52
きき @1oving_rabbit

このたび加藤純子氏による復元模写の過程で、源氏物語絵巻は、下書きを転写して清書したのではなく下書きに直接色を重ねていることが分かっている。また、X線での分析をしてみると人物の位置や向きなど細々と書き直しをしていることも分かり、緻密な計画の元で作成されたことがうかがえる。

2016-04-30 23:38:58
きき @1oving_rabbit

筆者は分かっていないが、複数人で分業化されていたと言われている(筆跡や画風が異なる)。詞書は第Ⅰ〜Ⅴ類に筆跡分類されており、藤原伊房、寂蓮、飛鳥井雅経、藤原教長らの名が挙がっている。絵は藤原隆能、または子の隆親と言われており、ここから源氏物語絵巻は通称「隆能源氏」と呼ばれている。

2016-04-30 23:47:58
きき @1oving_rabbit

つぎに、五島美術館が所蔵している鈴虫、夕霧、御法の各作品について。徳川美術館蔵の横笛の最後の部分と鈴虫の最初の部分はぴったりくっつく(横皺の位置が一致する)ことが分かっており、少なくとも一時期、これらは一連一体の状態であったことが判明している。

2016-04-30 23:55:57
きき @1oving_rabbit

また、徳川美術館蔵の柏木〜御法までは全体的に見てもとてもよく残っており、研究者の間では「柏木グループ」なんて呼ばれていたりもする(かわいい)

2016-04-30 23:56:58
きき @1oving_rabbit

鈴虫(一)は、出家した女三宮が鈴虫の鳴く秋の庭を眺め歌を詠んでいるところに源氏が訪れる場面。絵の中央の女性は長らく女三宮だと思われてきたが、復元模写の過程で裳をつけていることがわかり、これは女三宮ではなく女房だということが判明した。

2016-05-01 00:05:16
きき @1oving_rabbit

絵の具の落ちた絵の下に「たゝみ(畳)」「やりみす(遣水)」など小さな文字が書かれているのが特徴で、スケッチや色塗りの指示書きではないかと言われている。また、描かれているのが女房のみなのは源氏からみた女三宮の見方(尼や女房程度と見下している気持ち)が表現されているのではないかとも。

2016-05-01 00:10:50
きき @1oving_rabbit

鈴虫(二)は冷泉院のもとへ出向いて月見の宴を行う場面。顔などの肌地に鉛や銀を使われていないのが特徴で、月明りにぼんやり浮かび上がっているさまを表現しているのではないかとも言われている。源氏は中央、左が冷泉院、右が夕霧であり、2組の親子関係が意識される。

2016-05-01 00:18:33
きき @1oving_rabbit

また、夕霧が横笛を持っているが、これは本来、ここ以前の巻(横笛巻)で源氏に取り上げられているものである。それをわざわざ描いている、ということで、外を向いている夕霧の視線の先に柏木の亡霊が描かれていたのではないかと言われることもあるという(なにそれ萌える)

2016-05-01 00:21:10
きき @1oving_rabbit

鈴虫(二)の詞書は、下の方が劣化して読めなくなっているところが多々あるが、本来、墨は顔料や染料よりもずっと強くしっかり残るものなのでここだけ文字が消えてしまっているのは不自然。濡らして拭いた、みたいな消え方をしている。

2016-05-01 00:26:49
きき @1oving_rabbit

つぎ、「夕霧」は、落葉宮の母一条御息所からの文を夕霧が読んでいて、それを雲居雁が取り上げようとしている場面。物語では右下の女房たちはいないのだが、ここに描くことによって、絵巻を見る人がこの位置からの視線に焦点化することができる。

2016-05-01 00:31:01
きき @1oving_rabbit

「御法」では、詞書の方に特徴がある。5枚の料紙を使い、いっぱいいっぱい書いているが、特に最後の1枚にはおよそ2枚分もの文章量が重ね書きで詰め込まれていて、紫上の亡くなる間際の息遣いや焦燥の気持ちが表現されているとも言われている。また他の巻にはないような料紙の装飾も見られる。

2016-05-01 00:35:47
きき @1oving_rabbit

以上4場面と徳川美術館の15場面、所蔵の2館では、5年ごとに、交互に一斉展示を行っている。したがって次の一斉展示は2020年、オリンピックの終わった後になる予定で、現在準備中とのこと。また一斉展示が見られるなんて、今から楽しみですね!

2016-05-01 00:39:29
きき @1oving_rabbit

以上で本日のレポート終了いたします。お邪魔致しましたー。

2016-05-01 00:40:24
きき @1oving_rabbit

もちろん今回の春の優品展では、源氏物語絵巻はメインではなくデザート的な立ち位置で、万葉集から始まる数々の和歌の書が第一なのですよ。とはいえそちらは恥ずかしながら「すげー!きれー!ほへー!」と眺めることしかできなかったので、有意義なレポートをあげてくださっている方々をご覧ください。

2016-05-01 00:45:45