「愛国戦隊大日本」と「チーム★アメリカ」に感じる「構造的パロディ」の危険性

小林信彦による「構造的パロディの危険性」という問いかけから連想した、「愛国戦隊大日本」や「チーム★アメリカ/ワールドポリス」についての呟きです。
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エンタメ放浪者 ウディ本舗 @woody_honpo

「野球につれてって」 小林信彦による実験的なジョーク小説集「発語訓練」に収録された短編で、戦後の米国による占領が終わらなかった、もう一つの日本を描く。米国ではなくソ連に占領された日本を描く「サモワール・メモワール」と対になった作品。 pic.twitter.com/EbQidm6Ldi

2016-05-17 18:23:33
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エンタメ放浪者 ウディ本舗 @woody_honpo

「野球につれてって」には、日本文化に詳しくてジョークの好きな情報将校が登場して「米国の占領政策プロパガンダのパロディ」番組を放送するのだが、パロディを理解されず、そのまま受け止められてしまうというエピソードが出て来る明るい「サモワール・メモワール」に比べ、どこか重い作品だった。

2016-05-17 18:27:10
ウディすすむ @woody_susumu

小林信彦に、戦後の米国による占領が終わらなかった、もう一つの世界を描いた「野球につれてって」という短編がある。その中で主人公が呟く「醜悪なプロパガンダのパロディが、醜悪なプロパガンダそのものになってしまうことがあるのではないだろうか?」という言葉が印象的で、ずっと頭に残っている。

2016-05-11 19:58:57
ウディすすむ @woody_susumu

私が「醜悪なプロパガンダのパロディが、醜悪なプロパガンダそのものになってしまう」というフレーズで最初に連想したのは、庵野秀明がアマチュア時代に撮った「愛国戦隊大日本」だった当時SFファンダムで大受けした作品だが、私は後の日本のネトウト的右傾化を予見したような作品だと思っている。

2016-05-11 20:46:57
エンタメ放浪者 ウディ本舗 @woody_honpo

「愛国戦隊大日本」 1982年に、アマチュアだった赤井孝美監督、庵野秀明特撮で制作された、後のガイナックスの出発点ともなった実写作品冷戦時代のソ連脅威論を背景にした戦隊ヒーローもののパロディで、愛国戦隊大日本が悪の社会主義と戦うpic.twitter.com/ciXasjXOzq

2016-05-17 18:10:32
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エンタメ放浪者 ウディ本舗 @woody_honpo

「愛国戦隊大日本」は、庵野秀明によるアマチュアの域を超えた本格的な特撮で、当時のSFファンダムで大人気となったが、「愛国ヒーローが悪の社会主義組織を倒す」ストーリーに「反社会主義的」ではないかとの批判もあり、論争が起きた。どちらかと言えば保守的なスタンスの筒井康隆も批判的だった。

2016-05-17 18:14:48
ウディすすむ @woody_susumu

岡田斗司夫は「愛国戦隊大日本」や「トップをねらえ!」を例に挙げて「構造的パロディは理解されない」と受け手を批判していた。しかし、パロディとは本来、対象への批評だと思うが「構造的パロディ」には、パロディがいつの間にか批評していた筈の対象そのものに転換してしまう危険性があると思う。

2016-05-11 20:53:18
ウディすすむ @woody_susumu

近年ではトレイ・パーカーとマット・ストーンが作った「チーム★アメリカ/ワールドポリス」がアメリカ版「愛国戦隊大日本」みたいな作品だった私にはここに描かれている「リベラルへの憎悪」はジョークというより本気に思え、それまで「サウスパーク」に感じていた違和感の理由が判明した気がした。

2016-05-11 21:06:00
エンタメ放浪者 ウディ本舗 @woody_honpo

「チーム★アメリカ/ワールドポリス」 サウスパーク」のクリエイターとして有名なトレイ・パーカーとマット・ストーンによる「サンダーバード風人形劇」の政治風刺映画アメリカの正義を過剰に追求する「チーム★アメリカ」が悪の北朝鮮と戦う。 pic.twitter.com/JCSvPZplyH

2016-05-17 18:18:11
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エンタメ放浪者 ウディ本舗 @woody_honpo

「チーム★アメリカ/ワールドポリス」は「サウスパーク」と同様に「可愛いキャラクターが過激でブラックなギャグを放つ」作品で、市民を巻き添えにしながらアメリカの正義を信じて戦うチーム★アメリカは、ブッシュ政権を批判しているとも言われたが、共和党支持者はこの作品を無邪気に楽しんでいた。

2016-05-17 18:20:33
ウディすすむ @woody_susumu

右翼のパロディみたいな芸風の鳥肌実が登場し、サブカルチャー界で持て囃された時も、すぐに「醜悪なプロパガンダのパロディが、醜悪なプロパガンダそのものになってしまう」という言葉を連想し、危うさを感じていただから、その後の鳥肌実については「やはり、そうなったのか」という感想しかない。

2016-05-11 21:15:55
ウディすすむ @woody_susumu

「構造的パロディ」とは、例えば軍国主義をパロディにする時「過剰に軍国主義(パロディ対象)に同化しカリカチュアする事で、軍国主義のバカバカしさを暴きだす」という手法なのだが何故かミイラ取りがミイラになるように、いつの間にかパロディ対象に取り込まれ、そのものになってしまう事が多い。

2016-05-11 21:37:34
ウディすすむ @woody_susumu

新著が大評判で、一躍「時の人」みたいになっている人物が「やっぱり庵野の代表作は『愛国戦隊大日本』だと思う」と呟いていたので、以前から気になっていたことを書き留めてみた私は「愛国戦隊大日本」を観て笑っていたSFファンの多くは、あそこから「批評」を読み取ってはいなかったと思うのだ。

2016-05-11 22:05:07
ウディすすむ @woody_susumu

「発語訓練(素晴らしき日本野球)」ってマニアックな短編集だった。この作品集をちゃんと噛み砕いて笑っている読者は少ないのではないだろうか?私は、自信がない。当時の批評も表面的なモノばかりだった。小林信彦本人に、全作品を解題して欲しい。そういうヤボなことは、してくれないだろうけれど。

2016-02-20 08:23:55
ウディすすむ @woody_susumu

小林信彦が、第二世界大戦後に日本がソ連に占領された世界を描いた「サモワール・メモワール」と、アメリカの占領が終わらなかった日本を描いた「野球につれてって」は、セットで読んでこそ価値があるこの連作はSF的な設定だけれどSF小説ではなく、現代日本のカリカチュアであるのがユニークだ。

2016-02-20 07:26:42
ウディすすむ @woody_susumu

「小林信彦の作品の多くが入手困難な状態にあるなんて、この国は本当に滅びるぞ」と、思うのであった。

2016-02-20 07:30:29