東野 凪

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あさと/渡瀬幸 @Asato_3029

@TRPG_TL 放課後の図書室。授業でのグループ発表のために、普段は利用しないこの場所に資料を探しに来た。 此処は静か過ぎて少し息が詰まる。さっさと用を済ませてしまおうと、本棚を眺めていると、 「あっ」 不意にバサバサと、本が落ちる音がした。

2016-05-23 10:08:57
あさと/渡瀬幸 @Asato_3029

@TRPG_TL 慌てて本を拾うのは、端正な顔立ちをした華奢な男。彼は、東野凪だ。学年は違えど、峰岸は彼を知っていた。女子たちが「すごくかっこいい先輩がいる」と騒いでいたのを耳にしていたからだ。 「大丈夫ですか」 峰岸は散らばる本を拾い始めた。

2016-05-23 10:35:36
あさと/渡瀬幸 @Asato_3029

@TRPG_TL 「ああ、ありがとうございます。1冊取ろうとしたら、ドミノ倒しみたいになってしまって…」 苦笑を浮かべる彼の手元には、有名大学の赤本が置いてあった。 「2年のはじめなのにもう赤本…?」 「えっ」 「あ…」 しまった。無意識に口に出してしまった。

2016-05-23 17:53:45
あさと/渡瀬幸 @Asato_3029

@TRPG_TL 慌てた様子の峰岸を見て彼は少し微笑むと、再び本を拾い始める。 「対策をするなら早いほうがいいかと思って」 その横顔を眺めながら、"天は二物を与えず"と言うけれど、この人に無いものなんてないんじゃないかな、などとぼんやり考える。

2016-05-23 18:11:24
あさと/渡瀬幸 @Asato_3029

@TRPG_TL 「な、なるほど。…でも、すごいですね、ちゃんとやりたいことが定まってるって」 理系文系がようやく分かれた、というくらいで、その時期に明確な進路が定まっている人はそう多くはないだろう。 すると、彼はきょとんとした顔で 「やりたいこと…?」 そう、言った。

2016-05-23 18:22:56
あさと/渡瀬幸 @Asato_3029

@TRPG_TL 峰岸はその様子に違和感を感じた。 「ええと、やりたいことがあるから受けるんじゃないんですか?」 「うーん…もう"決まっていること"だから……そうか、やりたいこととか、考えたことなかった」

2016-05-23 18:32:03
あさと/渡瀬幸 @Asato_3029

@TRPG_TL 微笑みを浮かべる彼に峰岸は、およそ感情というものを感じられなかった。違和感の原因、それは、この人にはーー 「さて、これで全部かな?ごめんね、手伝ってもらっちゃって」 気付くと、散らばっていた本は全て拾い終わったようだ。

2016-05-23 18:37:09
あさと/渡瀬幸 @Asato_3029

@TRPG_TL ありがとうと礼を言って去って行ったその背中を眺める。 まるでお手本のように整った姿勢、所作。そこにはおそらく"彼"という存在はない。 天が与えることのなかったものは、"東野凪"自身だったのかもしれない。 そうして、峰岸と彼は、出会った。

2016-05-23 18:47:43
あさと/渡瀬幸 @Asato_3029

まさのん(@msntrpg )タグ反応ありがとうございました!!!ソォイ pic.twitter.com/B8sSgP1uWL

2016-05-30 01:40:06
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あさと/渡瀬幸 @Asato_3029

@TRPG_TL 彼らの”幸せな日常”にはもうきっと高崎さんも入っているんだろうなぁとは思うよ 高崎さんはきっと気づいてない、か、そんなはずはないと思っているかもしれないけども…

2016-05-30 01:42:17
あさと/渡瀬幸 @Asato_3029

@TRPG_TL 「幸せな時間」だなぁと自覚しているのはきっと東野さんだけ。彼は基本的に拒否を知らないから。そんなはずはないって拒否することはない、と思う。

2016-05-30 01:44:40
あさと/渡瀬幸 @Asato_3029

@TRPG_TL 喪うのが恐いと思っているのは東野さんだけ。恐いのは死じゃなくて、「あの場所に帰れない」こと。

2016-05-30 01:48:17
あさと/渡瀬幸 @Asato_3029

@TRPG_TL きっと「あの場所に帰れない」なら東野さんのとっての生は無意味なものになる。きっと。

2016-05-30 01:49:08
あさと/渡瀬幸 @Asato_3029

@TRPG_TL ここでいうのもあれなんだろうが、そういう意味で誰かが死んだら(ロストしたら)東野さんは……

2016-05-30 01:50:06
あさと/渡瀬幸 @Asato_3029

@TRPG_TL そんな帰る場所は、最初は峰岸だけだったけど、片桐さんが増え、高崎さんが増えて、賑やかになったね   たぶん最初は峰岸だけいればいいやって思ってたんだろうけどね

2016-05-30 01:52:04
あさと/渡瀬幸 @Asato_3029

@TRPG_TL 峰岸に会う前は生きる理由も、死ぬ理由もなかった。”自分”なんてものはそもそも存在していなかったから。

2016-05-30 01:53:34
あさと/渡瀬幸 @Asato_3029

@TRPG_TL 峰岸はこの時間が「当たり前」のものであって、そもそも喪うという考えがないので怖がったりはしてない。

2016-05-30 01:58:10
あさと/渡瀬幸 @Asato_3029

@TRPG_TL  峰岸はずっと幸せな、恵まれた環境にいたから、喪う怖さを知らないよ

2016-05-30 01:59:51
あさと/渡瀬幸 @Asato_3029

@TRPG_TL 東野さんはふと峰岸(今は他のみんなも含め)が離れていってしまう、という可能性を考えることがあるけど、峰岸は傍にいることが「当たり前」だから離れるなんて考えたこともない。

2016-05-30 02:01:50
あさと/渡瀬幸 @Asato_3029

@TRPG_TL 峰岸は東野さんが、そんな恐れを抱いていることに気付いてもいないんだよ… そんなこと、本当は考える必要もないのにね

2016-05-30 02:03:16
あさと/渡瀬幸 @Asato_3029

@TRPG_TL 「あ、おはようございます、凪さん」 「……?おはよう、ございます…?」 「え、どうしたんですか、不思議そうな顔して」 「ええと………あ、ああ、春か、おはよう」 「……??」

2016-06-26 11:05:23
あさと/渡瀬幸 @Asato_3029

@TRPG_TL あれから、こうして、春のことを思い出せなくなる。少し話していれば、だんだんわかるようになるが、会って話していないと、また忘れてしまう。 朝、挨拶されて思い出し、帰路ではもう忘れている状態だ。

2016-06-26 11:08:16
あさと/渡瀬幸 @Asato_3029

@TRPG_TL 忘れた後は、何か、抜け落ちたような、よくわからない喪失感だけが残る。自分は何故、"幸せだ"と感じていたのか、何故、あの場所に帰りたいと思うのか、 そして、何故、生きているのか。 拭い去れない不安が渦巻く。

2016-06-26 11:28:07