茂木健一郎氏 @kenichiromogi 第1795回【漱石の、かわいい過激】連続ツイート

2016.5/25 茂木健一郎氏 【漱石の、かわいい過激】連続ツイート …昨日、小森陽一先生と漱石についてお話した。さすがの碩学、いろいろと教えていただくこと、気付きに至ることが多く、たいへん楽しい時間だった。その中で、へえと思ったことがある…
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茂木健一郎 @kenichiromogi

連続ツイート第1795回をお届けします。文章はその場で即興で書いています。本日は、感想です。

2016-05-25 07:37:09
茂木健一郎 @kenichiromogi

昨日、小森陽一先生と漱石についてお話した。さすがの碩学、いろいろと教えていただくこと、気付きに至ることが多く、たいへん楽しい時間だった。その中で、へえと思ったことがある。

2016-05-25 07:37:57
茂木健一郎 @kenichiromogi

漱石が、当時の文部省から博士号の授与の通知を受けて、それを辞退したことは有名な話だ。それで、小森陽一先生によると、文学研究者が長らく博士号をとらなかったのも、漱石先生でさえ博士号をとらなかったのだから、という謙譲の気持ちからだったのだという。

2016-05-25 07:39:07
茂木健一郎 @kenichiromogi

時代は流れ、文系でも博士号をとるのが当たり前になり、東京大学教授として、小森先生は、「ぼくは、博士号を持たないで、博士号をとる学生の指導をしているのですよ」と笑っていらしたが、その起源が漱石にあるとは、思い至らなかった。

2016-05-25 07:39:58
茂木健一郎 @kenichiromogi

漱石は、博士号の辞退や、当時の首相からの宴席を断ったりなど、「国家」の権威に対する距離を貫いた人だった。だからこそ、時代の限定を超えて、今日に至る普遍性を持つと言っても良いが、その一方で、大衆的な人気も保ち続けている。

2016-05-25 07:41:09
茂木健一郎 @kenichiromogi

漱石は、いわば、懐に世間の常識とやらを一刀両断にする刃をのんでいるのに、その作品が人気を保つ。そのことを、小森先生は、「誤読」に基づくものだろうと言われた。

2016-05-25 07:42:09
茂木健一郎 @kenichiromogi

『吾輩は猫である』は、里子に出された漱石の心細さ、身寄りのなさを猫に託した作品だし、『坊っちゃん』は松山にたくして当時の日本の後進性、卑劣さを描いたものだが、それが、映画化されると、見事にポップな作品になってしまう。

2016-05-25 07:43:15
茂木健一郎 @kenichiromogi

『我輩は猫である』にしても、『坊っちゃん』にしても、その鋭い文明批評、人間批評をおいても、かわいい猫の話、熱血教師坊っちゃんとマドンナの話というように、簡単に換骨奪胎されてしまう。そのことが、逆に、漱石の可能性なのかもしれない。

2016-05-25 07:44:30
茂木健一郎 @kenichiromogi

漱石自身は博士号を辞退するなど過激な人だったが、その過激さは、「かわいらしい」過激さだった。過激な思想を抱いても、それだけでは表現者として足らず、やはり「かわいい」ことが大切なのだとすると、なんだか漱石はしみじみ面白い。

2016-05-25 07:45:43
茂木健一郎 @kenichiromogi

以上、連続ツイート第1795回「漱石の、かわいい過激」をテーマに、8つのツイートをお届けしました。

2016-05-25 07:46:18