140ssログ4月

Twitterで書いてた雑多ssのログです。刀です。男同士です。
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やまたに @mw_snc

そぉざー、と千鳥足の短刀がやってくる。こうしてひとの気配を求めるのは怖い夢でも見たのだろう。はいはい、行光。ここにいますよ。しってる、そうざはいなくならない。そうべそをかいた子供の怖い夢、には覚えがあって。今日もまた誰かの手によって、修正されては戻され焼かれる本能寺。(織田)

2016-04-02 07:15:38
やまたに @mw_snc

痛い、熱い、苦しい。助けて。いっそ折ってくれ。夢の中で何度も叫ぶ。汗で冷えた体で目覚めると、そこには甘酒とその持ち主。薬研は、追い出しちまった。その言葉に掠れた声で礼を言う。あの子には、聞かれたくなかったので。生きたことも、死にたかったことも、彼には叶わないことだから。(織田)

2016-04-02 18:19:18
やまたに @mw_snc

兄様。幼い声が呼ぶと、宗三はおやと視線を移す。いとも簡単に。兄様、いないの。返事をしようとする唇を塞いで壁に押し付ける。ねぇ、兄様。かたり、部屋の障子が開いた音がした。歩く足音。呼吸すら飲み込むように舌を絡めて。ここじゃないのかな。諦めた声に笑う。せまい押入の中。(薬宗)

2016-04-03 18:17:42
やまたに @mw_snc

兄者。呼ばれて振り返る。あのこが呼んでる。そう言い残して席を離れる。どうしたの。顔を見せると彼は笑んで、くだらない用事をさも大事そうに告げてきて。そうやって関心を集める行為が嫌いではない。だって、僕にしかしないでしょう。僕に見て欲しいでしょう。だから、僕はいつも顔を出す。(髭膝)

2016-04-03 18:26:34
やまたに @mw_snc

すやすやと短刀の膝で男が眠る。よく寝てるなぁ、と行光が話しかけると、可愛いだろうと子供らしくない顔で彼は笑った。それに曖昧に頷いたのは、否定も肯定も気を損ねる惚れっぷりを知っているからだ。そして、眠る彼の手が必死に洋服の裾を握りしめて離さないから。こんな光景可愛いもんか。(薬宗)

2016-04-03 18:37:20
やまたに @mw_snc

ねぇ、今日は今剣に遊んでとねだられていたね。兄がそう詰め寄った。楽しかったの。くすくすと笑う声は冷たい。お前のかつての主の昔話でもしたのかな。怯えた視線を向ける弟はすまない、と謝るけれど。怒っていないよ。君が彼から逃げたこと。源氏の刀に見捨てられた源氏がいるってこと。(源氏)

2016-04-04 07:32:19
やまたに @mw_snc

彼が嫌いだったわけではない。ただ、彼と共にあることに危険を感じた。このままでいれば、やがてどこかに彼の体と共に打ち捨てられるのでは。敵の刀として扱われるのでは。だから。勝利祈願をしないか。それは、膝丸が生きるための術だった。生きて、あの兄に会うための密かな耳打ち。(源氏)

2016-04-04 17:49:20
やまたに @mw_snc

お前も難儀だなぁ、けらけらと行光は笑う。そうですね、と否定するでもなく宗三は肯定した。一番あの方に似てる男だろぉ、あれは。彼が名付けた刀より、彼が唄った刀より、彼にその面影はある。確かに。それでも芽生えた想いは仕方ないのだ。僕は、きっとああいう男に奪われる運命なんですよ。(薬宗)

2016-04-06 19:07:43
やまたに @mw_snc

やあ、雨の君。薬研が今日の近侍の部屋に行くと、歌仙からそう呼ばれた。どういう呼び名だ。聞き返すと、指差すは今日の庭。春の庭に冷たい雨、地面に広がる薄桃色。こうやって花を散らすのは雨だからね。さて、君は誰の休みの申請に来たのかな。(薬宗)

2016-04-07 18:04:28
やまたに @mw_snc

春は駄目だと春の名も持つ弟が床で唸る。暑いと思えば寒くなる、と。じゃあ秋も駄目じゃない。うむ。夏は暑くて、冬は寒くて駄目でしょう。くすりと笑っての問いかけにやっぱり弟は頷いて。一年中駄目な弟は、兄が労ってあげようか。とたんに嬉しそうにばっと起き上がる君の、遠回しな甘え方。(髭膝)

2016-04-08 07:28:54
やまたに @mw_snc

洗濯しますよ、とその白衣と仮眠布団を剥ぎ取った。久々の洗濯日和だ、と急かす宗三に薬研は畳で転がったまま。あんた文句言いつつ家事は好きだなぁ。誰かがだらしないんですよ。洗濯物をまとめる手に、手を伸ばした。うちの嫁さんが世話してくれるから甘えちまう。なんて、戯れ。(薬宗)

2016-04-08 11:35:52
やまたに @mw_snc

宝石みたいな瞳がゆっくりと細められた。赤い唇が名を呼んだ。やげん。果たして昔、彼の視線はこうだったか。彼の仕草はこうだったか。いつからひとを惑わせるようになりやがった。残念ですね、僕の変わりようを知らなくて。それはまるで、あなたのせいだと暗に責めているような声だった。(薬宗)

2016-04-08 14:07:56
やまたに @mw_snc

あ、と口を開けた。弟はきょとんとして、それから渋い顔をする。行儀が悪いぞ、兄者。そう言いながらも箸が動いて、おかずを挟んで。一度だけだからな。そう言い訳して放り込むのは兄の口。おいしいねぇ。咀嚼してからそう告げると照れた顔でもう一度。一度だけのはずなのに、とは言わないよ。(髭膝)

2016-04-09 20:26:46
やまたに @mw_snc

布団にふたりで頭まで入って、手を絡めて。足を絡めて。ねぇ、明日はなにをしようか。眠れない夜にはそんなことを話す。兄者、俺は万屋に行きたい。じゃあ僕は向かいの茶店で待ってるよ。団子が美味いな。頼んでおく。忘れるだろう。拗ねた顔が可愛い。店に着いたら思い出させて。そんな約束。(髭膝)

2016-04-10 01:34:22
やまたに @mw_snc

そろそろ布団を暖めてくださいませんか。医務室に訪れた恋人に、薬研は時計を確認する。夜中はとうに過ぎていた。キリが悪くてなぁ。弁解に、不機嫌に寄る眉。反撃は誰かと寝る気か、それとも飲みに向かうのか。そう覚悟した耳に、予想外の言葉が入る。一期、このひと、まだ寝ないんですって。(薬宗)

2016-04-10 01:44:24
やまたに @mw_snc

宗三兄様はひどいんだ。小夜の訴えに歌仙は繕い物の手を止めた。どうしたんだい。ずっと僕が嫌だやめてと言っても布団を共にしてきたのに、最近は呼んでくれない。僕を捨てるんだ。形ばかり悲痛な言葉に苦笑して。まだ寒いから湯たんぽでいて欲しいと言えばいいんだよ。それだけのこと。(左文字)

2016-04-12 08:00:24
やまたに @mw_snc

信濃がねぇ、来るんですって。言われて厚は黙りこんだ。この打刀が薬研以外の藤四郎を話すときにはろくなことがない。そっくりで驚いたんです。ふふ、と笑う瞳の奥に今はなりを潜めた狂気が見える。似すぎて、あの子の代わりにも出来なかったなぁ。俺はしたのに。反論に、やっぱり彼は笑った。(薬宗)

2016-04-12 09:32:40
やまたに @mw_snc

するり、と細い指が顔の横に伸びる。なんだと薬研が思うまもなく、眼鏡が引き抜かれて、代わりに顔が近づいて。眼鏡越しはお嫌いかい。からかうと、拗ねた唇。だって、このあとから必要ないでしょう、こんなもの。口付けでは終わらない。(薬宗)

2016-04-22 21:37:29
やまたに @mw_snc

恋なんて必要ない。青江は自嘲した。恋だなんて、刀である自分には無関係の感情だ。そう、と石切丸は笑う。呆れるように、慈しむように、嘲るように。じゃあ、私と君の間にはなにがあるんだろう、石切丸は問いかける。こうやって抱き締め合う、君との間にある情の名前を。(石かり)

2016-04-23 07:21:31
やまたに @mw_snc

心臓の音がする。ぺたんこの胸に当てた手のひらから、どくん、どくんと。痕をつけた首から、どくん、と。抱き合う度、音がする。薬研、薬研。呼ぶ声もまるで鼓動のようだと薬研は思う。その音が聞きたくて、どこもかしこも触れたくなった。だって、宗三は、生きている。(薬宗)

2016-04-24 23:47:07
やまたに @mw_snc

夢中で掴んだ背中は熱い。まるで燃えているよう、とは流石に言えなくて、宗三はただその名を呼ぶ。熱い、熱い。融けてしまいそう。体の内も外もなにもかも。三度目は体験したくもない炎に似た温度は、けれど嫌いではないのだ。この体温は、薬研がここにいる証明なのだから。(薬宗)

2016-04-24 23:56:05
やまたに @mw_snc

境内の猫、参拝の子供、愛らしいものには触れたくなる。中でも、君がいちばん。そう言うと青江は唇を尖らせて。短刀を撫でるのと僕を抱くのは一緒かい、と。いちばん、と言っているじゃないか。奥の奥まで触れて、鳴く君はより可愛い。可愛くて、余計に触れての繰返し。(石かり)

2016-04-25 07:18:01
やまたに @mw_snc

会話で煙に巻いて、猫のようにするりと抜け出して。そうやっていくつもりだったんだよ、青江の言葉にその上に覆い被さる男はくすりと笑う。触れて、掴んで、捕まえて。どれほどでも君は許すじゃないか。それは、君だからだよ、そんなことは言えなくて、快楽に飲まれたふりをした。(石かり)

2016-04-25 07:22:48
やまたに @mw_snc

白い上着が畳に落ちた。体温の高い兄の手が、体中を這い回る。肉を噛み切るその牙が、首に噛み跡を残した。お前の手は冷たいねぇ、笑う髭切の薄金の髪がふわりと揺れる。正反対の温度が、手と手の間で混じり合うのが好きだと思う。その瞬間だけ、同じになる、そのことが。(髭膝)

2016-04-25 18:38:17
やまたに @mw_snc

乱れる姿、すえた匂い、声、体温、口付け。五感すべてがどちらのともわからないほど、ぐちゃぐちゃのどろどろで、それがひどく心臓を抉るのだときっと弟は知らない。こんなに溶けて、繋がっても、僕らはひとつにはなれない。それが悲しくて辛くって、それでも万が一にも溶けるかも、と今日も。(髭膝)

2016-04-25 19:07:21