不知火に落ち度はない　48（長門）

不知火に落ち度はない @otinui_yamoto

さてさて、久々に休みがあるし 更新かけるかしらね。 #落ちぬい

不知火に落ち度はない @otinui_yamoto

「たまの休みっつーのに、お前と二人かよ」 「おや。美女とのデートに何か不満があるか？」 「お前のデートつーのは、8割物騒1割が綱渡りで残り一割が──」 「ホテルだよな」 「まーな」 非番の日。 久々の休みがこれである。 #不知火に落ち度はない

不知火に落ち度はない @otinui_yamoto

「新しいラーメン屋開拓に出かけるつもりだったんだぞ俺ぁよ」 「それぐらい付き合ってやるぞ❤」 「つまり、交換条件だろ？」 「そういう察しの良いところは嫌いじゃない」 そうして俺は、休みのラーメンを置き去りに高速道路をドライブ中。 #不知火に落ち度はない

不知火に落ち度はない @otinui_yamoto

長門の服装は、いつもの若奥様ファッション。 おきまりのサマーニットにジーンズ姿だ。 ぴっちりしたジーンズが良くお似合いですこと。 「んで、今回のデートはどこ行きます？」 「湾岸地帯に良いところがあってな。デートに最適だろ」 鉄さびの臭いがぷんぷんだ。 #不知火に落ち度はない

不知火に落ち度はない @otinui_yamoto

「ところで、最近不知火とはどうしてるんだ？」 「ほとんど話す機会ねーよ。真面目に練習に取り組んでる」 「なんだ。何かしら仕掛けると思ったが」 「お前、入れ知恵したか？」 「ふっふーん❤」 おい答えろゴリラ。 その楽しげな笑いはよせ。 ろくでもねえ。 #不知火に落ち度はない

不知火に落ち度はない @otinui_yamoto

「それより、私の買ったアロハはどうしたんだ？」 「貴重品は大事にしまってる」 「捨てたとばかり思ったがな」 「うっせ。捨てたら捨てたでなんか言うだろ」 「言わない❤言わない❤」 今ので嘘確定だ。おっかねー。 実際気に入った柄なんだけどな。 #不知火に落ち度はない

不知火に落ち度はない @otinui_yamoto

「私とのデートの時ぐらい、着てくれてもいいのにな」 「そのサマーセーター、いつからのだよ」 「さあて、いつのだったか忘れたな」 はい、やめやめ。 早速ラジオのボリュームを上げる。 流れる音楽はLOVEマシーン。 懐かしのヒット曲が郷愁を誘った。 #不知火に落ち度はない

不知火に落ち度はない @otinui_yamoto

そうして長門の案内のもと、たどり着いたのは湾岸地帯の一角。 古い工場や倉庫らしき物が立ち並び、潮風に混じって廃油等の臭いがする、昭和を感じる場所である。 駐車場に車を止めてぶらりと歩くと、そこいらに良い感じに古い飲み屋の看板があったりする。 #不知火に落ち度はない

不知火に落ち度はない @otinui_yamoto

「さっきの店、美味そうだったな」 「帰りに寄るか？」 「ばかいえ、俺が飲めないだろ」 「私が運転すれば飲めるだろうに」 ちらっと見えた電飾看板に興味をそそられるが、それはあと。 今は長門の用件を済ませる方が先だ。 #不知火に落ち度はない

不知火に落ち度はない @otinui_yamoto

「こうしてると本当にデートみたいだな」 「休日に倉庫街を歩くデートってのは、デートに数えて良いのか？」 「二人が一緒ならいつでも幸せ」 「17歳かお前」 「青春時代が夢なんて、あとからほのぼの思う物」 「胸にトゲどころか鉄拳ぶち込む青春だろお前の」 #不知火に落ち度はない

不知火に落ち度はない @otinui_yamoto

「腕でも組んで歩くか？」 「こうか？」 しっかり胸の前で腕を組んで見せてやる。 「コサックダンスの練習かそれは」 「悪くないだろ。宴会の出し物に二人でやるか？」 「ふむ──そうだな。本場に教わるのも悪くないか」 ん？ 今気になる一言があったな。 #不知火に落ち度はない

不知火に落ち度はない @otinui_yamoto

「さて、着いたぞ兵頭。ここからは私と立場を入れ替える」 「俺が艦娘でお前が司令か。ぞっとしない話だな」 冗談を飛ばしながら、アロハの胸の前をあける。 「お前が下で、私が上になるのさ」 「ベッドで言えよ、そゆことは」 俺の冗句に長門は楽しげに笑う。 #不知火に落ち度はない

不知火に落ち度はない @otinui_yamoto

「上手く行ったらサービスするぞ❤」 「たまにはマラソンも悪くねえな」 どうやら休日の半分の過ごし方は決まったか。 お子様の相手よりは有意義だ。 「んじゃ行くか」 腕まくりをして、俺は建物を見上げる。 端っこの監視カメラが俺達を見下ろしていた。。 #不知火に落ち度はない

不知火に落ち度はない @otinui_yamoto

俺達の入った建物は板金屋──という体をしてる、いわゆる裏家業のある店のようだった。 パートらしき事務員が俺達を見て一瞬ぎょっとしたが、社長の名前を出すとすぐ奥に通された。 そして防音の効いた事務所に入ると、おーおー、早速はりきってくれてんね。 #不知火に落ち度はない

不知火に落ち度はない @otinui_yamoto

工場の若い衆、という体で良い感じに作業着の下からでもわかる筋肉の奴が数名。 金髪に赤髪に白い肌、そして高い背。こいつら、どう見ても北方の連中じゃねえか。 そしてくだんの社長の椅子には堀川と書いてる。 社長だけが一見、日本人に見えるが──。 #不知火に落ち度はない

不知火に落ち度はない @otinui_yamoto

「社長の堀川です。どうぞおかけください」 「まどろっこしい話はなしにしようか。元KGBのボリスさん」 早速長門が先手を打つ。 長門の後援会情報だと、こいつの名前はボリス・ミハイロコフ。 冷戦時代から未だに生き延びてる、敏腕のスパイ兼情報屋様である。 #不知火に落ち度はない

不知火に落ち度はない @otinui_yamoto

ボリス・ミハイロコフ。 日系人であり、アジア人にしか見えない身体的特徴と、複数の戸籍を持っている。 堀川って名前は実際、戸籍謄本に登録されてるんだわ、これが。 だから、こいつが堀川を主張すれば、堀川だと日本は認めるというあれそれ。 #不知火に落ち度はない

不知火に落ち度はない @otinui_yamoto

そして、並ぶこの方々は亡命してきた元軍人とかその辺。 表向きは板金屋として25年の歴史ある、立派な工業会社である。 長門が一体どっからこんな連中を引っ張り出してきたのか。 相変わらず後援会関係は根が深い奴だな。長門。 #不知火に落ち度はない

不知火に落ち度はない @otinui_yamoto

「……。気が短くていかんですな、艦娘の方は」 「お互い詮索をしないルールを破るスパイ相手なら、当然だろう」 落ち着き払った様子で長門はソファに腰掛け、足を組む。 だが、ぶっちゃけ俺はけっこー困ってる。 艦娘ってバレたってことは、俺もバレてるってこと。 #不知火に落ち度はない

不知火に落ち度はない @otinui_yamoto

指示を伺おうとは思うが、ここで下手な行動は禁物。 慎重な動きを要求されると、場の空気が語っていた。 一番問題なのは、この連中って『社会的に白寄りのグレー』ってことなんだわ。 戸籍あるし、武器持ってねえし。 パートの事務員さっきいたし。 #不知火に落ち度はない

不知火に落ち度はない @otinui_yamoto

「長居をするつもりはない。既に支払い済みの金を戻すか、情報を出すかだ」 「ああ。その話もしなきゃならないですな」 冷戦時代からのスパイが、頬の皺を深くさせる。 なるほど。金は支払ったが情報を渋ってる、ってことか。 と言うか。長門、金払ったの？ #不知火に落ち度はない

不知火に落ち度はない @otinui_yamoto

「情報を得るには得たのですがね。必要経費が予想以上にかかって──」 「それは、そちらの都合の話だろう。予算として出した分で承諾があったはずだが？」 「情報は水物。値段が変わるのは良くあることでして」 ぴしゃりと言い放つも、粘りを見せるか。 #不知火に落ち度はない

不知火に落ち度はない @otinui_yamoto

こうして雲行きが怪しくなると、ほら、マッチョメン達が動き出してる。 社長をガードする方向で、だ。 さすがは白寄りのグレー。 俺達が悪者になるシステムがしっかり組まれてるご様子。 長門の出した金は、資金洗浄を既に行ってるみたいだなこりゃ。 #不知火に落ち度はない