ニンジャスレイヤー物理書籍購入レポート"ヒア・カムズ・ブックス"

ニンジャスレイヤー物理書籍を1日遅れでしか購入できないフラストレーションを創作意欲へと昇華したというお話
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じょう @jou110

これまでのあらすじ:ニンジャスレイヤー物理書籍の発売日、しかしネオサイタマから遠く離れた中国地方ではほぼすべての書籍の入荷が1日遅れとなる暗黒流通体制が敷かれていた。この状況を打破すべく、ニンジャスレイヤーは闇の卸売ニンジャ、ショテンインに挑む。走れ、ニンジャスレイヤー!走れ!

2016-05-31 00:06:11
じょう @jou110

ヒア・カムズ・ブックス #1

2016-05-31 00:07:02
じょう @jou110

「……つまりそのショテンインなるニンジャを殺さねば、中国地方に物理書籍が流通しないというのか」ニンジャスレイヤーはバンを運転しながら後部座席にて機材をいじるナンシー・リーに問いかけた。「その通り、中国地方の書籍販売店は軒並み彼の暗黒流通体制に虐げられているわ」 1

2016-05-31 00:10:02
じょう @jou110

バンの外に広がる中国地方の街並みは、見渡す限りの曇天のため灰色に見える。かの地にひとときの楽しみをもたらす筈のニンジャスレイヤー物理書籍、その最新刊に当たる"開戦前夜ネオサイタマ"を邪悪のニンジャから取り戻さねばならない。ニンジャスレイヤーの瞳に闘志の炎が灯った。 2

2016-05-31 00:12:42
じょう @jou110

中国地方に存在する唯一のオフィスビル街、ホンドリー・ストリート。その中心部にて高くそびえ立つビルの中にショテンインの構える流通センター、オロシウリ・コーポレーションがある。彼は元々中国地方の卸売業を牛耳るヤクザめいた社長であったが、ある日ニンジャとなりタガが外れてしまった。 4

2016-05-31 00:18:21
じょう @jou110

はじめは食品関係だけだった彼のビジネスは年々膨らみ続け、いよいよ書籍にまで手を出そうとしていた。元来ネオサイタマからの物理的隔絶により出版物の仕入れが遅くなりがちだった中国地方であるが、彼の新たなビジネスモデルの中では彼の会社にかしずく小売店のみに流通されるようになるのだ。 5

2016-05-31 00:21:43
じょう @jou110

「ククク……ボロい商売よ。哀れイナカモノの豚どもはネオサイタマなら月曜日に買える雑誌を火曜日発売だと信じて疑わぬ様になるのだ。そして……」ショテンインは邪悪な笑みを浮かべながら巨大なUNIX制御金庫を開いた。そこには天高く積み上げられたニンジャスレイヤー物理書籍最新刊の山! 6

2016-05-31 00:24:23
じょう @jou110

「見よ!私は娯楽を支配する!娯楽を管理された無知蒙昧な豚どもは、私にひれ伏す事によってつかの間の慰めを得る事になるのだ!中国地方を支配した暁には、キョート・リパブリックへの輸出産業すらも支配下に置いて見せようぞ!」暗い金庫の中に響き渡るショテンインの哄笑! 7

2016-05-31 00:27:18
じょう @jou110

そこに現れたのはクローンヤクザ秘書だ。「ドーモ、社長に来客です」「何?そんな予定などなかっただろう?」ショテンインが訝しむ。「IRC記録には先週からのアポイントメントが残されています」ショテンインはUNIX業務記録を確認した。確かに本日12時より取材のアポイントメントがある。 8

2016-05-31 00:30:41
じょう @jou110

取材内容は先進的な流通ビジネスモデルについて。「チッ!ならキチンと朝礼時に報告しておけ!ロクに秘書業も務まらんのか!」ショテンインは一ヶ月前彼の不興を買い命を落とす事になった前任の秘書を思い出した。果たしてクローンヤクザ秘書とどちらが優秀だろうか?彼は思案した。 9

2016-05-31 00:34:57
じょう @jou110

「まぁいい、さっさとすませるぞ」ショテンインは苛立ちを抑えながら金庫を後にした。金庫のロックが掛かる。ダクト内に潜むナンシーは汗を拭いLANケーブルをもてあそんだ。「ここまでは順調。あとは頼んだわよ、ニンジャスレイヤー=サン?」 10

2016-05-31 00:37:09
じょう @jou110

ヒア・カムズ・ブックス #1 おわり 果たして中国地方に物理書籍の光は差すのだろうか!?それは明日の更新を待とう!

2016-05-31 00:38:03
じょう @jou110

これまでのあらすじ:ネオサイタマから中国地方への物流経済を支配せんとするニンジャ、ショテンイン。彼の魔の手は書籍業界へも伸び、当然その中にはニンジャスレイヤー物理書籍最新刊"開戦前夜ネオサイタマ"も含まれていた!

2016-05-31 19:15:29
じょう @jou110

書籍の流通が支配されてしまえば、中国地方に住む善良なヘッズ達の元へ書籍が届かないのだ!邪悪な笑みを浮かべるショテンインの元へ彼のビジネスモデルへの取材の申し込みが入る。そこにはネオサイタマTV特派員、イチロー・モリタの名が書かれており……

2016-05-31 19:17:18
じょう @jou110

ヒア・カムズ・ブックス #2

2016-05-31 19:17:58
じょう @jou110

「ハァーッ!ハァーッ!バカな……!」ショテンインは乱れきった息をなんとか整えようと大きく肩を上下させた。額には間一髪掠る程度で済んだスリケンによる切り傷。もし咄嗟の判断が追いつかなければ、今頃自分はアノヨであろう。脂汗と額から流れる血が混じり合いショテンインの顔を伝う。 1

2016-05-31 19:21:06
じょう @jou110

取材を申し込んできたTV特派員イチロー・モリタの正体は、ニンジャスレイヤーだった。会議室に現れたショテンインを確認するや、彼は赤黒装束に姿を変え殺意の塊たるスリケンを投擲した。虚を突かれたショテンインの命を救ったのは、予め設置した栞の位置に短距離ワープするシオリ・ジツである。 2

2016-05-31 19:24:20
じょう @jou110

シオリ・ジツの発動が一瞬遅れていたならばアイサツすらかなわずブザマに死体を晒していただろう。会議室の奥の栞にワープしニンジャスレイヤーの背後を取れたものの、一瞬の躊躇を突き死神は決断的にアイサツをしたため、ショテンインも応じざるを得ずアドバンテージを放棄せざる終えなかった。 3

2016-05-31 19:28:02
じょう @jou110

ニンジャスレイヤーとわずかばかりのカラテを交わしたショテンインの結論は、決してこの男に勝てぬという事実であった。ショテンインは交戦を放棄、シオリ・ジツを発動し社長室へ逃げ込んだ。社内に待機するヤクザバウンサーやクローンヤクザ秘書達にアラートを発したが時間稼ぎにすらなるまい。 4

2016-05-31 19:31:38
じょう @jou110

(((どうする……?考えるのだ!)))階下からクローンヤクザ秘書の断末魔が聞こえてくる。死神が少しずつ近づいてきている。栞の使用は1枚につき1日1度のみだ。ショテンインはフーリンカザンの構築を怠っていた己のウカツを呪った。 5

2016-05-31 19:36:45
じょう @jou110

シオリ・ジツに頼っていてはビルからの脱出もままならぬ。さりとて常人の3倍の脚力を誇る自らの走力ではまともに死神から逃れる方法も無いだろう。シオリ・ジツで背後を取ろうとも、最初の交戦時の死神の振り向いたあのジゴクめいた速度を思えば、果たして自分のカラテで戦えるだろうか……? 6

2016-05-31 19:40:41
じょう @jou110

「ならば……」意を決しショテンインはブードゥーめいた印を結ぶ。シオリ・ジツのルーティンだ。「奴とて厚さ2メートルの鉄板は破れまい。鍵をこの俺が持っているのだ、奴が金庫に侵入する術は無い」ショテンインの策、それはニンジャスレイヤー物理書籍の保管された金庫へのワープであった。 7

2016-05-31 19:45:18
じょう @jou110

イチカバチカ、何もできず死を待つよりは行動を起こすべし。「シオリ・ジツ!イヤーッ!」ページをめくるようにショテンインの姿がめくれ上がり、わずかな光を残して姿は消え去った。遅れてニンジャスレイヤーが社長室に飛び込む。死神は室内を睨むと掴んでいたクローンヤクザの頭部を放り投げた。8

2016-05-31 19:49:27