《7》大倉、みみずと戦う

hikari∞短めのお話 @love_suzume

1. 「へぇ、大倉ってこーゆーの好きなんだ」 いきなり後ろっから話しかけられて、びっくりした瞬間に尻もちついて、積んであったブルーレイがガラガラ崩れ落ちた。 俺のバイト先の、深夜のレンタルビデオ屋。 の、アダルトコーナーで。

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2. チェーン店でもないし、イマドキわざわざDVDレンタルしにくるやつなんておらんし。 そんなこんなで今日が最後の営業日。 ついさっき店の前に張り紙したのに。 「...お前どっから入ってきたん？」 「え、フツーに開いてたけど」

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3. はいこれ返却、ってうちの店の袋に入ったDVD渡された。 大学で同じテニスサークルのこいつは、見た目も性格も男みたいで、一部のどMには変な人気あるらしいけど、全く女を感じない。

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4. 家飲みでみんなで雑魚寝してて、朝目ぇ開けたら目の前にこいつの顔あったときやって、うわー寝顔ブッサイクやなーとしか思わんかったし。 今やって古着っぽいTシャツにスエットやし。 「...へー、騎乗位クイーンねぇ...」 俺の手元を覗き込んでニヤついてる。

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5. 「...知らんの？伝説やでこのひと」 忘れもしない、俺が生まれて初めて見たAV。 中学んとき遊びに行った友達の家の、兄ちゃんの部屋にあってん。 あまりの衝撃に頭がグラグラして、その後頭の中で何回こすったか分からん。 「...知ってるわけないでしょ」

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6. 「３作目がな、これまた名作やねんけどなぁ...見つからんのよ。あ、お前もなんか欲しいのあったら持ってってええで」 どうせ全部廃棄だから、好きなの持って帰りなってオーナーが言ってくれて、店閉めてからAV物色してたというわけ。 「えー、どれにしよっかなぁ」

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7. あっちこっちAV手にとって、うわっとか、へーとか、なるほどねーとか、ブツブツ言いながら歩き回ってる。 こいつほんま女なん？ 18禁ののれん見ただけで顔を赤らめんのが女子ちゃうんか。 呆れてまた騎乗位クイーンの３作目探し始めたとき。

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8. 「え！ちょっと大倉！来て！」 んやねん、ど深夜に大声で...。 近づくと、一本のAVを見せてきた。 『美人女子大生限定ナンパ！即ハメ激イキ5連発！』 「うっわー、センスないわお前ー。まあシロートもんにはシロートもんのよさがあるけどな、まずはプロの技を...」

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9. 喋ってる途中から腕をバンバン叩かれて。 「この子！」 パッケージの右上、リクルートスーツでおっぱい丸出しにされて、立ったまま後ろっから突かれてる女の子...。 え........。 ええぇ！？ 「......や...ちゃうやろ、似てるだけ...ちゃうの？」

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10. おんなじサークルで会計係やってる...確か英文科の...？ 「...だ...だよねぇ！まさかね、あの子がこんな...」 あいつはもう一度パッケージをマジマジと見る。 他人の空似...にしちゃ似過ぎてる...ような...。 自然と目が合う。

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11. 「...お、大倉、ちょっと、確かめてよ」 「え、なんで俺？自分でやれや、ほら、持って帰り？」 「やだ、本物だったらどーすんの、明日からどんな顔して話せばいいかわかんないじゃん！」 そんなん俺やって一緒やんけ。 「見なかったことに...ね、しよう。うん、そうだ」

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12. そう言って、DVDを棚に戻した。 .................。 「な、でも...」 「...なに」 「気にならへん？」 エロい気持ち...っていうより、野次馬根性。

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13. やってあの子、ぶっちゃけ顔は中の中の下っていうか顔面偏差値53って感じやし、バイトは家庭教師って言うてたし、そんな子がなぜにAV出てんのかって。 や、まだ本物と決まったわけやない...けど。 「...気になる」 あいつはこくりと頷いた。

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14. 「...いくで」 店にあったチェック用のポータルDVDプレーヤーの再生ボタンを恐る恐る押す。 こうなったら痛み分けや。 ふたりで確認しようってことになって、アダルトコーナーの床にふたりで座って。 あいつがゴクリと唾を飲み込む音が聞こえた。

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15. 目当ての子が出てくるまでスキップして...。 リクルートスーツの女の子が、ホテルのソファに座ってんのが見えて、再生した。 ー彼氏は？ ー...います ー最近いつエッチした？ ーえ...彼氏とですか？ ーえ、彼氏じゃないの？ ーあ...えーっと...あはは

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16. ーいやいや、あははじゃなくて。セフレ？ ーえっと...まあ、あの、バイト先の... ーバイト？何してんの？ ー家庭教師、です ーえ、もしかして生徒？ 「...ちょっと！待って、止めて...」 冒頭のやりとりであいつは悲痛な声を上げた。

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17. 「はぁー、もう、あー、どうしよう、受け止めきれない...」 目を閉じて眉間をぎゅうっとつまんだ。 一時停止した画面の中。 少し恥ずかしそうに口元を押さえてるのは、紛れもなくうちのサークルの会計係だった。 でもまあ...。 完全に言われて見れば、やけど。

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18. 体つきエロいねんな、この子。 このピチピチのリクルートスーツのせいもあるとは思うけど。 太ってるわけちゃうけど、ムチッとしてて抱き心地が良さそうな？ んで、ちょいブスなのが逆にエロいっていうか...。 「え、ちょっと待ってよ」 また再生しようとしたら、止められた。

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19. 「み、見るの？」 見るやろ、ここまで来たら。 「...ここでやめれんのお前」 あいつは躊躇しながらゆっくり首を振って...。 ーやぁ...っんあっ... ーもうっ...だめ...きもちい... ーあっ...ぁっ...あっ...イっちゃう...

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20. 俺らのよく知ってるはずの会計係は、画面の中であられもない姿で喘いでる。 初めはスーツ着たままバックで、脱がされた後はもう、あらゆる体位で...。 何回目かにイッた後、お腹に出されて、はあはあ言いながら白いの指で確かめて、恥ずかしそうに笑ってるとこで動画は終わった。

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21. ちらっと隣伺うと、あいつは両手で口を押さえて、目を丸くしたまま固まってる。 「...どう...？」 どうって言われてもな...。 「まぁ...意外と乳首きれい...いたっ！」 「ばか！そういうんじゃなくって！どうする？ってこと！」

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22. バシバシ叩かれて二の腕じんじんしてきた。 「ぜっっっったい言っちゃだめだからね！！」 「...わかってるわ」 なんか脱力して、立ち上がる気にもなれへん。 あんな...どこにでもいるフツーの子が、カメラの前であんなんするって...。

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23. 意外にエロい子やったんや。 ほんまかどうかわからんけど、家庭教師先の生徒に手ぇ出してるとか...。 あー...。 あかん。 ムラムラする。 .........。 あいつがふーって息を吐いた。 少し赤い頬を手で押さえてる。 ...なんとなく、目が合った。

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24. .................。 え......。 つまり...？ こいつもちょっとそんな感じなんちゃうの。 「あの...さ」 「...うん」 「お前、このまま帰れんの？」 なんか...。 なにこの...。 なんていうんですか緊張感！？

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25. 「...どういう...意味...？」 「や...だから...」 少し強引に、キスした。 「こういう...こ」 言い終わらんうちに、あいつが舌ねじ込んできて、息できんくなって。 勢いあまって押し倒して、散らばってたDVDがガタガタいって足が絡む。