若き名将と罠を張る女#2 戦いの行方◆1

故郷に幾度となく勝利をもたらした、若く、麗しい将軍。そして彼に献身的に仕える女官フレイメア。一方、敵の魔法使いである妖婦ギリはこの将軍を陥れようと影から策を練る……。 全50ツイート予定 最初↓ 続きを読む
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減衰世界 @decay_world

_若き名将と罠を張る女#2 戦いの行方

2016-06-15 19:51:25
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_戦車隊の砲撃が始まった。北方蛮族軍には重質量飛来物防護の魔法があり、それらは半球状の盾となって陣地を覆っている。  空中で轟音を立てて砲弾が爆発し、跳ね飛ばされて、明後日の方向へと飛んでいくのが分かる。ここまでは想定通りだ。 31

2016-06-15 19:56:34
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_ギェス軍は安全圏内に歩兵と戦車隊を展開し、歩兵は待機させている。敵には長距離攻撃手段が無く、戦車に対抗するには決死の覚悟で肉薄して魔法を炸裂させるほかない。いま北方蛮族軍が戦車隊に対抗しようと兵を出すと、この防衛隊の数では歩兵の銃撃を受けて無駄死にしてしまうだろう。 32

2016-06-15 20:02:27
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_そして重質量飛来物防護の魔法はいつまでも続けることはできない。魔法は大きく感情の力を消耗させ、肉体に疲労感を与え、空腹を感じさせる。北方蛮族軍の防護魔法隊が限られた資源であることは明白だ。  今までは迎撃できていたが、今回ばかりは陥落は免れない。そう誰もが思った。 33

2016-06-15 20:08:36
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_そのときであった。ギェス軍の後方で突如爆発が発生した。歩兵の射程外、補給線が狙われていた。もちろん護衛はいたが、それ以上の軍勢が丘の麓に突然出現したのだ! 「どこから!」  先陣で指揮をとっていたセリル将軍は珍しく取り乱した。 34

2016-06-15 20:12:40
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_後方に控えておいた物資がことごとく破壊され、敵は波が引くように退却していく。それも、敵陣とは関係ない森の方向へとだ。 「トンネルだ……」  セリル将軍は察した。トンネルはいくつも掘られていたのだ。街の中や……こういった侵攻ルートの近くにまで! 35

2016-06-15 20:18:07
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_予想通り、森を警戒すると反対側の崖から敵部隊が現れ、防御の薄い場所を攻撃する。こうなってしまっては砲撃どころではない。 「いつもの俺なら、気付けたはずだ……」  侵攻計画を知られていたとしか思えない。情報は筒抜けになっていたのだ。 36

2016-06-15 20:23:33
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_すぐさま丘の上に円陣を組み、防御陣形を取る……が、それも予想されていたのだろう、地面が陥没し、戦車と歩兵の一部が飲み込まれる。魔法か爆発物でわざとトンネルを崩落させたのだ。 「こんな戦術に後れを取るなんて……俺はただの馬鹿な人間にすぎなかったよ」 37

2016-06-15 20:27:52
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_蒼白な顔で、地面に膝をつくセリル。 「全軍撤退だ……俺は退路を守る」  地面の穴からやっとのことで戦車が這いあがる。ここで戦車を失うわけにはいかない。補給が絶たれ包囲された以上、一刻も早く生還させることが重要だった。力なく銃を取る彼に寄り添うものが一人。 38

2016-06-15 20:32:28
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_フレイメアだ。軍服を着て、手には小銃。 「わたくしも共に、最後まで戦います」  撤退していく戦車隊。そして歩兵。精神、肉体共に疲弊し無様な撤退戦を晒す知将の姿に、ついていくものは少なかった。それでも必死に戦い、魔法使いたちに包囲され……。 39

2016-06-15 20:38:45
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_被弾覚悟で突っ込んできた魔法使い。魔法の射程に入ってしまい、麻痺毒の雲が襲い掛かる。銃撃の層が厚ければ発動前に防げただろう。だが寡兵にそれを防ぐことはできなかった。  そしてセリル、フレイメア、数十人の兵士は、そのまま生け捕りになってしまった。 40

2016-06-15 20:44:19
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_若き名将と罠を張る女#2 戦いの行方 ◆1終わり ◆2(最終回)へつづく

2016-06-15 20:45:00
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【用語解説】 【雲の魔法】 いわゆる毒ガスの魔法。一定範囲内の空気の性質を変える。発動後すぐに拡散してしまうため、射程が短く使いづらいが、効果さえ発揮すればガスの性質次第で何でもできる。威力は大きいが弱点も多く、上級者は魔法陣を使うためあまり発展はしなかった

2016-06-15 20:48:41