ダンジョン儲かってますか?#1 少女のお店◆1
_苔むした遺跡に一人の少女がいた。先駆者がかけてくれた魔法……照明の魔法が辺りをぼんやりと照らしてくれている。それを糧に成長する苔。魔力を食らう不気味な生き物。そんな光景に似合わない、あか抜けない少女だった。 「げへへ、カワイイ剣ですね~」 落ちている剣を拾う。 1
2016-06-17 19:52:55_ここはいわゆるダンジョンだ。危険な生物が生息し、荒くれものどもが殴り込む戦場。少女……名をレェラと言う。レェラは戦いのイメージからは遠い。それもそうだ、彼女は戦士ではなく商人なのだから。背中には拾い集めた雑多な道具類、武器類。 見渡す石造りの空間に落し物は無いようだ。 2
2016-06-17 19:59:54_緊急用、そして移動用にテレポートの呪文を多用する。そのためにインプラントもした。商品を確保したレェラはテレポートで自分の店に戻る。 遺跡の中の日当たりの良い場所。結界が張られた一人だけの店に、レェラは帰還した。周囲に客の姿はない。店先に統一性のない拾い物を並べる。 3
2016-06-17 20:05:28「はぁ、今日は売れるのかなぁ」 客がいないことをいいことに愚痴を一つ。天井の穴から覗く青空は能天気。ダンジョン商人といえば華々しい職業だ。死線をかいくぐり商品を拾い集め、高値で売る。冒険者も大量の物資を持ちこまずにダンジョンの内部で補給ができる。客足は途絶えないはずだった。 4
2016-06-17 20:10:47_ところがこのレェラ、最近店を始めたものの思うように商品が売れていない。仕事道具のテレポートの魔法は消耗品でお金がかかる。このままでは破産だ。 「私だけ変な物拾ってるわけでもないのに……ん!」 愚痴をやめる。前方に伸びる通路の奥から誰かがやってきた。 5
2016-06-17 20:16:53_背の高いスーツの女性。鎧兜や魔法服の冒険者ではない、街の人間だ。 「レェラ様、お変わりありませんか?」 「あっ、ディーマさん、グヘヘ、相談したいことが!」 ようやく笑顔が戻ったレェラ。よく笑顔が汚いと言われる。ディーマには世話になっており、今回も彼女に頼ろうと思う。 6
2016-06-17 20:24:08「せっかくお店を開くお手伝いをしてもらったのに、全然商品が売れなくて……」 「なるほど、それは大変でございます。わたくしどもとしましても、プロデュースしたショップが閉店となったら名に傷がつきます。全力でサポートいたしましょう」 落ち着いて微笑むディーマにレェラは安心する。 7
2016-06-17 20:30:24_レェラは商店を始めるにあたって、ある業者のサポートを受けた。レェラの担当がディーマであり、何度も助けられている。開業のために魔法使えるようにインプラントしたり、当面の魔法費用を借りたりしている。 ディーマはレェラの店を見て、困った顔をした。 8
2016-06-17 20:36:36_露天商スタイルの店だ。遺跡の石畳の上に絨毯を敷き、その上に様々な商品が並べられている。綺麗にカットした紙片や陶片で値札を作り、少女の感性が光る可愛らしい装飾があちこちに工夫されている。そこまでは普通の店に見えた。 だがディーマは満足しないようだ。 9
2016-06-17 20:41:25「なるほど、わかりました。確かにいいお店ですが……レェラ様のお店には……少し問題があるようです。一緒に改善していきましょう」 レェラはそれを聞いて、商売の厳しさを感じ覚悟を決めたのだった。 10
2016-06-17 20:47:03【用語解説】 【ダンジョン生成物】 ダンジョンには様々なものが落ちており、これは自然にできたものである。神が世界を創造した際、魔力が結晶することで神の記憶にある物が形となって現れる仕組みを作った。それが高濃度の魔力の集積地であるダンジョンでも効果を発揮するのである
2016-06-17 20:52:36