【魔法少女まどか☆マギカ】美樹さやかと「未来」についての一考【#madoka_magica】

美樹さやかが物語中(テレビシリーズ1〜12話および『[新編] 叛逆の物語』)で担うテーマ(作成者がさやかに魅せられた理由)についてのざっくりとした語り。さやかちゃんかわいい。 ほぼ同一内容で一読性を重視した版→http://privatter.net/p/1863656
21
あるにゃん(2024冬まで生きる) @Arnicat_38

私の美樹さやか像の根幹は「青空の擬人化」だ。 #madoka_magica

2016-09-07 00:52:30
あるにゃん(2024冬まで生きる) @Arnicat_38

未来は可変的・多岐的、そして開放的である。少なくとも、そのように仮定できるからこそ、人は困難な現状に対し、「こうなれば良いのに」と、あり得る別の未来を夢想する。それが、人が「希望」と呼ぶものにつながる。暁美ほむらは絶望の未来を回避し、鹿目まどかが人として生存する未来を模索する。

2016-08-14 10:15:49
あるにゃん(2024冬まで生きる) @Arnicat_38

『魔法少女まどか☆マギカ』作中での魔法少女たちの「絶望」の根源は、未来の可変生・多岐性が消失し、「未来」について一切の楽観が許されなくなった状況である。その最たる例が、美樹さやかであろう。拙稿は、さやかが担う多彩な人間性の一角である「未来」の喪失と再生を概観せんとするものである。

2016-08-14 10:18:06
あるにゃん(2024冬まで生きる) @Arnicat_38

さやかは中学二年生で、進路選択を控える。つまり「魔法少女として何を願うか?」という問いが、「どんな未来を選ぶか?」という問いと関連する。そして、人間ー魔法少女と大別した際に、未来の分岐性は「今日はピアノ?日本舞踊?」「お茶のお稽古ですの」(1話, さやか、仁美)に示唆される。

2016-08-14 10:21:18
あるにゃん(2024冬まで生きる) @Arnicat_38

そして、他の魔法少女ーーマミ、ほむら、杏子、まどか(最終回のみ)ーーと異なり、さやかは唯一、第1話開始後に魔法少女契約を行なう描写が存在する。そして、人間ー魔法少女ー魔女ー死(「円環の理」による救済)の全過程、つまり魔法少女としての一生が明示されるのも、さやかについてのみである。

2016-08-14 10:24:20
あるにゃん(2024冬まで生きる) @Arnicat_38

そして、巴マミや佐倉杏子のように、魔法少女とならなければ死を迎えていたであろう「完結していた」キャラクターや、暁美ほむらのように本編中での魔法少女契約以前では、病弱な(身体性が保持されていない)キャラクターとは異なり、さやかは至って「平凡」な少女として描写される。

2016-08-14 10:27:22
あるにゃん(2024冬まで生きる) @Arnicat_38

すなわち、さやかの出発点は、標準的な「人間」に設定されており、序盤の時点では未来の可変性・多岐性を秘めたキャラクターだ。この「出発点」は、本編序盤での和やかな日常風景によって、視聴者に丹念に印象付けられる。魔法少女の一生を描く土台が用意されているのは、さやかについてのみなのだ。

2016-08-14 10:28:43
あるにゃん(2024冬まで生きる) @Arnicat_38

魔法少女契約の締結に際し、さやかは「他の未来の放棄」を要求される。「あの契約(注: 魔法少女契約)は、たった一つの希望と引き換えに、すべてを諦めるってことだから」(5話,ほむら) の言葉通り。この「魔法少女契約の代償」の意味を以下で探ってみる。

2016-08-14 10:30:50
あるにゃん(2024冬まで生きる) @Arnicat_38

魔法少女とはいわば「家畜化」された人間だ。来るべき魔女化、エネルギー源としての被搾取を前提に、魔法少女として戦いに明け暮れる生を強制される。それはすなわち、人間が享受し得たはずの多様な未来を放棄し、自らの未来をただ一通りにーー過程から終着点まで全てーー限定させられることだ。

2016-08-14 10:32:13
あるにゃん(2024冬まで生きる) @Arnicat_38

無論、魔法少女契約の破棄は不可能。この不可逆的な「未来の剪定」は、魔女退治に赴くさやかが「車の進行方向とは反対に、複数の道のうち一本だけを歩く」場面(テレビシリーズ第5話)で表現される。

2016-08-14 10:33:17
あるにゃん(2024冬まで生きる) @Arnicat_38

この「家畜化」の酷さは、さやかが平凡な、すなわち、視聴者に近しい人間として描かれることで、架空の舞台設定の域を越え、三次元的な重みを帯びる。

2016-09-04 20:01:08
あるにゃん(2024冬まで生きる) @Arnicat_38

ところで、さやかはいわば「昼の世界」、青空のごとく開かれた、未来ある世界を象徴するキャラクターだ。前述の通り、日常の世界に配置されたキャラクター。その世界の空と同じ、青い髪や瞳をした少女。魔法少女としては唯一、飛び道具を有さない、すなわち自らが「前進」することを必然とされている。

2016-08-14 10:35:45
あるにゃん(2024冬まで生きる) @Arnicat_38

さやかは魔法少女として、白ーー雲の色のマントを纏い、脚=身体性を存分に行使し、前へ前へと駆け、空を縦横無尽に跳躍し、絶望の権化たる魔女へと突撃し、打ち破る。剣を振るい、未来を文字通り「斬り開く」キャラクターとして描写される。

2016-08-14 10:38:26
あるにゃん(2024冬まで生きる) @Arnicat_38

この「未来」性は、彼女が初めて倒した魔女が、「ハコの魔女」という点でも比喩される。「箱」ーー恭介(脚を負傷し身体性を喪失したキャラクター)の病室や集団自殺を試みた人々のいた倉庫ーーを否認し、「前進」せんとする人間像が示される。ところがテレビシリーズでは、これが一旦否定される。

2016-08-14 10:41:06
あるにゃん(2024冬まで生きる) @Arnicat_38

「昼」の対極が「夜」、万物が黒一色へと収斂する時間である。夜の闇の中、目的地に到着するまで降車不可能な電車(これも一種の「箱」だ)に揺られるさやかの描写は、彼女が「昼の世界」の色を失うさまを示唆する。ソウルジェムがスカイブルーから黒く濁る様子でも「昼から夜への変化」が描かれる。

2016-08-14 10:43:38
あるにゃん(2024冬まで生きる) @Arnicat_38

魔法少女の真実ーーゾンビ=死亡済みの「完結していた」存在だと知り、恭介と結ばれる未来も叶わなくなり、親友との平凡な日常をも捨て、己の在り様を「魔女を倒すための石ころ」と規定し、ただがむしゃらに剣を振るうさやかの悲痛さが、魔法少女ーー未来を「剪定」された存在の悲痛さを伝える。

2016-08-14 20:27:11
あるにゃん(2024冬まで生きる) @Arnicat_38

そして、Oktavia von Seckendorff (魔女化さやか) の説明文「回る運命は思い出だけを乗せてもう未来へは転がらない」や「人魚」の魔女ーー前に進むための脚を持たざる者ーーと成り果てた点は、彼女が前進性や可変性ある未来を剥奪された事実を補強する。

2016-08-14 10:48:36
あるにゃん(2024冬まで生きる) @Arnicat_38

このように、人間・美樹さやかが、悲惨な一本道を転げ落ちていき、そのまま生を終えるさまは、「家畜化」された人間の残酷性をまざまざと見せつける。かくして、テレビシリーズは美樹さやかを装置として「家畜化」された人間の末路を強調し、逆接的に「未来」を人間性(人間らしさ)として称揚する。

2016-08-14 10:54:37
あるにゃん(2024冬まで生きる) @Arnicat_38

では翻って、『[新編] 叛逆の物語』において美樹さやかが象徴するものは何か?テレビシリーズが彼女の破滅による逆接的な「未来」の称揚であるならば、新編は順接的な称揚とみることができる。すなわち、「環」から解放され、再び開けた未来に向け歩み出すのが新編でのさやかである。

2016-08-14 10:57:01
あるにゃん(2024冬まで生きる) @Arnicat_38

彼女は「円環の理」の使者としてインキュベーター打倒とほむらの救済を目指す。ほむらは魔女化さやかと同じく「環」にまつわる力(時間遡行とループ)を行使してきた。そして、ほむらが作り上げた偽の見滝原市も「環」の世界である。

2016-08-14 10:58:02
あるにゃん(2024冬まで生きる) @Arnicat_38

「また自分だけの時間に逃げ込むつもり?あんたの悪いクセよね」とほむらの時計ーー「環」の象徴ーーを剣で突き刺すさやか。

2016-08-14 10:59:59
あるにゃん(2024冬まで生きる) @Arnicat_38

さやかが選択するのは、「環」の外にある、自由が広がり、愛する者に再び相見える世界だ。ほむらをインキュベーターから解放し、本物のまどかとの再会を果たさせんとする。この行為は、かつて偽物の楽園ーー恭介の幻影が指揮者のコンサートホールーーに閉じ籠っていたさやか自身との決別でもある。

2016-08-23 22:23:59
あるにゃん(2024冬まで生きる) @Arnicat_38

Homulilly(魔女化ほむら)は、いわば、かつてのさやか自身だ。まどかとの再会を望みつつ、自死を選ぶ。恭介と結ばれる未来を想いつつ、魔女を倒すしか存在意義がないと絶望する。これを新編でのさやかは真っ向から否定してみせる。自身が叶えられなかった別の未来ーー希望の根源を提示する。

2016-08-18 14:21:47
あるにゃん(2024冬まで生きる) @Arnicat_38

さやかの担う前進性、未来の多岐性の復活も、新編中で表現される。楽譜状の道を複数展開し、その上を、脚ーー人魚が持たざるものーーを動かし渡り歩く。インキュベーター=自らの未来を「剪定」した張本人を斬り、進路上に待ち受ける魔女の使い魔に真っ向から斬りかかり、前へと駆けていくさやか。

2016-08-14 11:04:02
あるにゃん(2024冬まで生きる) @Arnicat_38

Homulilly戦は、さやかの魔法少女としての初戦の反復だ。「夜」の世界で絶望し、閉鎖空間の中で自死を選ぶ者。そして、それを解放せんとするさやか。当時と同様に、青い髪と白いマントをはためかせながら、空を縦横無尽に跳躍し、前へ前へと駆け、魔女の使い魔を斬りながら進んでいく。

2016-09-05 09:07:32