3142コンテ式を機能させるためには 守備編
先日の名古屋vs柏。前半18分にいつもの442に変更するまで攻撃時3142、守備時532(→442変化せず)を採用した柏。「何故442変化せずに532のままで守っていたか」「何故3142が上手く機能しなかったか」を3142の本家、コンテ率いるイタリア代表と比較しながら解説します
2016-07-01 21:14:463142、所謂コンテ式の守備のセオリーは、両サイドベタ引き、中盤3センターがピッチの横幅を埋めるために必死に走る532ではなく、ボールがアウトサイドに出された際にWBが1列上がって3センターの横に位置し、442を形成して守る事にある twitter.com/TheAnalysisVid…
2016-07-01 21:14:48そもそも532というのは、442攻略のセオリーを逆手に取って人が配置されている。442では横幅の関係上専有しやすい2トップ脇から、DHSH間、DHDH間のスペースを攻略する事が442攻略のセオリーの1つだが、3センターを前述のスペースに配する事で「最初から人を置いて埋めてしまう」
2016-07-01 21:14:57そもそもそういう目的で生まれたのが3センターなので、スペースを埋めるはずの3センターが中盤4枚の時と同じ動きをしていたら意味が無い。それでは結局インサイドアンカー間をDHSH間と同様に使われてしまうだけである。人数も1人少ない分、運動量の負担も大きい
2016-07-01 21:15:04よって、3センターは2トップ脇からDHSH間のスペース(インサイドレーン、ハーフスペース、トレーラーゾーンなど呼び方はご自由に)に縦パスを通されるのを防ぐためにも、最初からの極端なスライドは自重すべき。大まかに言うと、これが3142で守備時にWBが1列上がらなければならない理由
2016-07-01 21:15:10では何故名古屋vs柏で下平監督が敢えて両サイドベタ引きの532を選択したか。有り体に言うと「シモビッチ対策」という事になる。現在の柏は縦横圧縮したソリッドな442ゾーンで守備をしており、サイドにボールを出された際には全体がしっかりボールサイドに寄り、大外は捨てる
2016-07-01 21:15:17これ自体はゾーンディフェンスで守るチームの当たり前の光景だが、全体がボールサイドに寄るという事は、サイドからクロスを入れられた際、競るのがファーサイドのSBという現象が頻発する。この試合では中山がU-19代表で不在だったため、左SBには171cmの輪湖が入っていた
2016-07-01 21:15:23輪湖はお世辞にも空中戦が強いとは言えない。そしてマッチアップするシモビッチは199cm。勝ち目がない。よって「CBを1枚増やし、輪湖がシモビッチとクロスを競り合う機会を減少させるために」下平監督は敢えて532を選択したものと思われる
2016-07-01 21:15:29森下政権2年目の磐田が4バックを捨て、3142→532を採用した理由と似ている。あの時も「チビっ子両SBじゃ4バックでなんて守れねーよ!」が理由で5バック導入に踏み切った経緯がある。低身長のSBは空中戦の際に身長差によるミスマッチを狙われやすく、リスクとなってしまう
2016-07-01 21:15:41この通り、イレギュラーを承知で532を選択した下平監督だったが、仮にWBを1列上げて442での守備を用意していたとしても機能しなかった可能性が高い。理由は名古屋の両SHのポジショニングにある
2016-07-01 21:15:48我々でさえもこの試合で3142を採用するとは全く思っていなかったので、小倉監督も「柏は442で守る」と考えて準備をしたはずだが、その準備が上手いこと532にクリティカルヒットしてしまった。「両SHをサイド高い位置に張らせる」。これが小倉監督が事前に準備した策だったと思われる
2016-07-01 21:16:020分。名古屋が左→右へとボールを動かした際、SH古林が右サイド高い位置に張ってWB輪湖をピン留め。3センターはスライドが間に合わないのでSB矢野は時間とスペースを得ることができた。矢野の縦パスから古林が突破、クロスから決定機まで pic.twitter.com/cQmuQp3Zd2
2016-07-01 21:17:372分。名古屋がバックラインで右→左とボールを動かした際、SH永井がやはりサイド高い位置に張り、WB湯澤をピン留め。再びサイドを変え、SH古林が同様にサイドに張っているのでSB矢野はフリー。3センターはスライドが間に合っていない pic.twitter.com/vpvSAEwzWD
2016-07-01 21:18:193分。左サイドで張ったSH永井を利用して中を崩そうとするが上手く行かず。しかし右サイドへ振ると、やはり3センターのスライドが間に合わず、SB矢野はフリー。時間とスペースを得た矢野はシモビッチへのロングボールを選択 pic.twitter.com/j17PIAbxsL
2016-07-01 21:19:489分。左→右とボールを動かし、フリーのSB矢野は再びシモビッチへのロングボールを選択。シモビッチの落としを田口がバイタルでフリーで受け、シュートまで pic.twitter.com/IyVOH2chXY
2016-07-01 21:19:46名古屋の両SHがサイドの高い位置に張り、柏のWBをピン留めしている。これにより、名古屋の両SBは時間とスペースを得る事に成功。仮に下平監督が532→442変化を予め仕込み、セオリー通りに守ろうとしていたとしても、WBが1つ前に上がる事ができず、機能不全を起こしていた可能性は高い
2016-07-01 21:20:00これと同じ現象が、ユーロ2016のイタリアvsスウェーデンで頻発していた。442で攻めるスウェーデンは、SHをサイドの高い位置に張らせる事でイタリアのWBをピン留めし、532→442変化を行えなくさせたのである
2016-07-01 21:20:051分。右サイドにスウェーデンのSHとSBが張る。イタリアのインサイドがSBに釣られ、中にコースが空いたのを見逃さずにDHが落ちてきたイブラヒモビッチへ縦パス。ワンタッチで落とし、逆サイドへ。SBのクロスのセカンドを広い、再びクロス pic.twitter.com/OyL2gWEFLY
2016-07-01 21:21:5120分。SHをサイドに張らせてWBをピン留めし、532となったイタリアの3センターに強制的にスライドを促すために、左右にボールを動かすスウェーデン。右サイドに出し、イタリアのWBとインサイドが釣られた所を中を使って突破を図る pic.twitter.com/tApmOvk1bZ
2016-07-01 21:23:07この通り、サイドに選手を2人配置し、SHを高い位置に張らせる事によってWBをピン留め、3センターのスライドが間に合わない事を利用してSBを活かすのが対3142コンテ式の回答の1つである事は広く知られている。それが今回の名古屋vs柏でも起きた、というのが柏の守備が機能しなかった理由
2016-07-01 21:23:15ただし、前述の通りシモビッチ対策として532で守る事はこの試合では織り込み済みであった。よって通常の442に戻さざるを得ず、後半に左クロスから輪湖vsシモビッチのミスマッチを作られ、失点したのはある意味想定通りだった。なお、機能しなかった場合442に戻す事も事前に考慮されていた
2016-07-01 21:23:18下平監督 「(スタートは5バックでしたが、4バックに変えるというプランを持って今日のメンバーをチョイスしたのでしょうか?)うまく機能しなければ4バックに戻すというプランは準備していました」 (KFJより抜粋)
2016-07-01 21:23:23下平監督「(湯澤選手をSBではなく、中盤の右に置いたのもプラン通り?)湯澤にするか輪湖にするかはそのときの状態で考えていましたけど、どちらかが降りてどちらかが前で4−4−2のブロックを作るという形は考えていました」 (KFJより抜粋)
2016-07-01 21:23:29要は、442に戻す際に湯澤と輪湖どちらをSHに上げるかで、増嶋vsシモビッチ&湯澤vs永井か、輪湖vsシモビッチ&鎌田vs永井のどちらかの選択だった。鎌田はSBとしてこれまでにカイオや柏好文らを抑えてきたので、下平監督が「永井を押さえてクロスを上げさせない」選択をしたのも解る
2016-07-01 21:23:34