連作小話「追憶」

渋谷ハチ公交差点でばったり出会った団塊二人の男。久しぶりと語らいつつ酒を飲んでいる。話はやがて神=運命+沈黙+愛に…。参考ブログ:神とは何か http://doyoubi.cocolog-nifty.com/blog/2011/01/post-240a.html
土曜日 @doyoubi
#twnovel マラ3、ブラボー拍手を終えて小雪の下、渋谷駅へ。ハチ公近くまで来たら俺の名前を呼ぶ奴がいる。振り返ると懐かしい男がそこにいた。「おーい、何十年ぶりだあ、元気そうだなあ。ちっとも変わらないなあ、お前。俺はだいぶ太ってしまったよ」と言いながら焼き鳥屋へ行った。
土曜日 @doyoubi
#twnovel 俺はお前と違って勇気がなかったので運動もせず。女手ひとつで大学に行かせてくれた母親に楽をさせたかった。母の勧める縁談にも乗って結婚したけどこれが嫁姑の争いよ。苦労といえばその程度。息子が就職できないままだけどこれは俺んちに限ったことではない。若者に辛い時代だ。
土曜日 @doyoubi
#twnovel 今思うと、俺の人生、共産党員だった父に対する反発だったのかもな。指導部の指示に従順に従って地道に活動しつつも家では家父長独裁、このスターリニストめと反発したのもあって反帝反スタ、白ヘルにゲバ棒よ。革命なんて信じていなかったけど造反有理世相に煽られたのもあったな。
土曜日 @doyoubi
#twnovel 自己否定の論理なんていうのも流行ったなあ。若者を囃し立てる年寄り連中が多かった。60年安保の夢よもう一度だったのかもしれんな。俺は運動に背を向けて市役所で福祉の仕事に取り組みながら弁証法的唯物論を趣味にしてた。結局、壮大な虚構の論理だとようやく気づいたけどな。
土曜日 @doyoubi
#twnovel はは、お前、理論派だもんね。俺は理論より行動、後先考えずに高校理事長を吊るし上げようとして懲戒免職、それが祟ってまともな仕事に就けず肉体労働、口先仕事、怠惰な日々。今は商品先物のセールスやってる。銭亡者を唆して博打に勧誘するのだから罪悪感は微塵も感じてないぞ。
土曜日 @doyoubi
#twnovel 苦労したな、お前。あの正義漢が先物セールスだなんて。俺がお前にどうこうは言えないが長続きする仕事ではないよ、分かっているだろうけど。その点、俺は幸せだったよ。生活保護を求めてくる人たちにもヤクザとかいたけど、法を公正に執行する立場だった。悩みは色々あったけど。
土曜日 @doyoubi
#twnovel 最近思うんだけど幸せって、日々をとにかくも納得して暮らせることみたいな気がするんだ。お前みたいに年金がある訳じゃないから先のことを考えたら不安だよ。でもキリストも言ったろ、明日を思い煩うなって。くよくよしだしたらキリがない。こんなこと言うのも実は女が出来たんだ。
土曜日 @doyoubi
#twnovel ほっほ、それは祝着、まだ現役やってるのはちと妬ましいけど。俺なんかはもうとんとご無沙汰、「愛してるあなたの貰う年金を」だしね。だから、今日も一人でチョンミョンフン聴いて幸せ、人間ひとりが一番よと辛口で祝福してやるよ。捨てられないように精一杯大事にしてやるんだな。
土曜日 @doyoubi
#twnovel そんなこともあって最近、神を信じてもいいような気になってる。この時代にこの国であんな親の子供に生まれたのは運命。人生に運命なるものがあるのは否定し難い。そして運命は決してその理由を語らない、つまり沈黙。そんな神=運命+沈黙を愛してもいいなあ。そんな気がしたんだ。
土曜日 @doyoubi
#twnovel 神=運命+沈黙+愛。我らに運命を与え給うた神は永遠に沈黙するがそんな神をそれでも愛する。そうでないと惨めじゃないか人生は。愛は肯定、神すなわち俺(の運命)を愛すれば神も俺を肯定してくれる。他に何にも愛するものがなくても人生淋しくない。神を愛すればいいんだから。
土曜日 @doyoubi
#twnovel 酔いが回ったのか彼は延々と喋り出した。父母、子供時代、思春期、闘争、内ゲバ、組合活動、権威主義俗物、支援者達の偽善、棄てた女、自堕落な生活、西村賢太、女との出会い、ベッドその他遂にはおいおい泣き出してしまった。なんとかとりなして勘定、外へ連れ出しJR改札へ。
土曜日 @doyoubi
#twnovel あいつを電車に乗せた後、俺は井の頭線へ。電車の中で彼との会話を思い出す。神=運命+沈黙+愛か。あいつは自分を納得させる理由が欲しかったのかも。白ヘルでにこやかに笑っていた男が何十年も後に神を信じようとする。いのち得て歳月に降るさくらかな。そうだ、小説を書こう。了