連作小話「理想の父親」

誰も言うてくれへんから自分で言うけど、なかなかの作品。ストーリーテリングの方向を目指そう。意外な結末こそ小話のキモなり。
ネタ
土曜日 @doyoubi
#twnovel 浩一を妊ったと伝えてから仕事人間の夫が大変身。会社の付き合いは一切絶って毎日定時帰宅。家事を(不器用ながら)肩代わりしてくれて妊婦の私を大事にしてくれた。出産にも当然立ち会ってくれたし年休をフル消化して育児も二人で協力。こんなに変わるなんて予想もつかなかった。
土曜日 @doyoubi
#twnovel あまりの変身ぶりに「会社はいいの?」と訊いたら「いいんだよ。会社は生活のため、生活は浩一のため」と言う。かつては「こんな時代に子供を作るなんて罪悪だ」と公言していたのに「どうしたの?」「考えが変わったんだ。こんな時代を生き抜ける人間に浩一をしなくっちゃ」と言う。
土曜日 @doyoubi
#twnovel 勉強も半端じゃなかった。妊婦の健康本に始まり胎教、出産関連、育児本、児童心理学、教育学、果ては音楽教育、体育学まで、要するに人間の始まりから最後に到るまでの本を読み尽くしてはノートをPCにとっていた。そして育児、教育及び家事の実践。エネルギッシュな夫に感嘆した。
土曜日 @doyoubi
#twnovel こうして浩一は育っていった。そして、夫の浩一に対する愛は溺愛ではなくて突き放すところは突き放し、自立を促すものだった。難しい反抗期、思春期も人生の先輩としての夫の的確な導きで無事、乗り越えた。こういうのは矢っ張り男親だねえ。ひたすら感謝の私だった。
土曜日 @doyoubi
#twnovel 浩一が東大法学部に入学した。将来は官僚を目指すという。「あいつ、世の中を引っ張る男になるよ。理も情も噛み分けてバランスのとれた仕事が出来る。俺なんかより相当上等だ」「いいえ、あなたは浩一をここまで育てるという立派な仕事をなさったわ」私たちは幸福だった。
土曜日 @doyoubi
#twnovel 幸福だった私たちに突然の不幸。夫が仕事で乗っていたタクシーが事故、そのまま帰らぬ人になってしまった。子育てに懸命だった夫、これから自分の人生を楽しもうという時だった。喪失感と悲しみで私の心も一杯だった。そこから少しずつ立ち直り、遺品を整理していたら。
土曜日 @doyoubi
#twnovel 出て来たのはパイプカット手術の同意書コピー、日付は結婚した直後。愕然、夫は自分の子供ではないと知っていたのだ。どうして手術のことを言わないんだよお、そんな手術、勝手にするんだよお、私は混乱して泣き続けた。夫婦ってなんなんだ。どうしてこんなコピー残したんだよお。
土曜日 @doyoubi
#twnovel そういえぱ一度「話したいことがある」とか言ってたなあ。有耶無耶になってしまったけどこの事だったのかしら。私にも夫のじゃない種を妊った引け目があるし(でも、あの頃は仕事人間で全然かまってくれなかったんだよ。たった一度だけだったのよ)。みんな済んだ事にしよう。
土曜日 @doyoubi
#twnovel どうして黙ってパイプカットしたのか、その記録を私の眼に触れるように残したのか詮索したいことはあるけれど、とにかく理想の父親だったことは間違いない。だからずっと私を愛し続けてくれたと思うことにする。全ては愛故の結果なのよ。私も彼を本気で愛したのだわ。 了