健気な妹、聡明な姉

当初構オチは「健気な妹」だったが、書いてるうちに「聡明な姉」でエンディングにすることにした。「聡明で健気な女性」は俺の永遠のマドンナである。
ネタ
土曜日 @doyoubi
#twnovel 「いい青年じゃないか」彼が帰った後、父が切り出した。「深くていい声してるわねえ、さすがだわ」と母。「でも収入が不安定なのよ。この先、ブレークする見込みもないみたいだし」姉が心細そうに言う。「お姉ちゃんの気持ちがまず一番よ。いったいどうなの?」私が姉に迫った。
土曜日 @doyoubi
#twnovel 「浩一さんが好きなのは間違いないわよ。でも、愛だけで生活していける訳じゃない。定職を持っている人ならすぐにでも結婚するけど、ママさんコーラスの指導や素人相手のレッスンが収入源じゃねえ」「じゃあ、なんで家に連れて来たのよ」「それはねえ…」姉が語り始めた。
土曜日 @doyoubi
#twnovel 姉の話は、大手広告代理店幹部である父の人脈で彼の道を切り開いて欲しいということだった。音楽業界は実力もさることながらコネや人脈がものを言う。きっかけを父が作ってくれれば、彼にはあのルックスや声があるのだからブレークする。そしたら結婚を考えるんだって。
土曜日 @doyoubi
#twnovel 「何事も慎重な幸子らしいなあ。力を貸すけど、結婚を決めてくれるともっと力が入るんだがなあ」「幸子も33なんだから、お母さんは早く孫の顔を見たいわ」「うかうかしているとあのイケメンを悦子に盗られてしまうぞ。こいつ、子供の頃から姉さんのものは何でも欲しがるんだから」
土曜日 @doyoubi
#twnovel 「あの後、家族会議を開いたんですのよ」渋谷の喫茶店で浩一さんと二人きり。姉の了解を得て私は向かい合っていた。「ほう、そうですか。皆さん、どんな感じでしたか」「両親はもうその気になっています。母なんかは早く孫の顔を見せろとまで言ってました」「それは嬉しいなあ」
土曜日 @doyoubi
#twnovel 「それでお尋ねしたいのですが、浩一さん、いったいどういうつもりでいらっしゃるんでしょうか。姉にプロポーズをされないのですか」「いきなり手厳しいですねえ。僕、考えてはいるんです。でも、幸子さんが受けてくれるかどうか自信が持てなくて」彼は眼を伏せながら答えた。
土曜日 @doyoubi
#twnovel 「私、姉に啖呵を切って来たんです。お二人を見てるとどうもすっきりしない。付き合い始めてもう二年でしょ。こういうのは男がアクションするべきです。浩一さんのお尻を叩いて決然とプロポーズさせるわと姉に宣言して来たんです」「そう言われても、僕、困ったなあ」
土曜日 @doyoubi
#twnovel 「プロポーズしても幸子さんが…幸子さん、何か言ってませんでしたか」「浩一さんの仕事が安定していないのが心配だとは言ってましたが、その点は父が尽力します。そもそも二人はどこまでの関係が進んでいるのですか」「関係って…、手を握った程度です」「ええーっ!ウソオー」
土曜日 @doyoubi
#twnovel てめえ、男だろ。男なら押し倒せばいいじゃんかあ。女はそれを待っているのだからなどと内心罵倒しながら、この端正な顔立ち、優しい眼、厚い胸板、そして深い声にうっとりしていた。「どうかしましたか」「いえ別に。いや、呆れていたのです。浩一さん、ひょっとして未経験なの?」
土曜日 @doyoubi
#twnovel 「率直な質問だなあ。無いことはないです。幸子さんは大事にしたいので抑えているんです」ほう、他の女は大事じゃなかったんだな「さて、これから飲みに行きませんか。飲むともっと楽しくお喋りできますよ」あ、誘われてしまった。でもここは今日はぐっと我慢しよう、姉のために。
土曜日 @doyoubi
#twnovel 「お姉ちゃん、あいつはダメよ。プロポーズする勇気なんかこれっぽっちもないわ。それに、あたしを飲みに誘うのよ、いったいどういうつもりなんだろ」姉は黙って聞いてるだけ。いったい、どうしたのかしら。プロポーズされないことが分かって不機嫌なのかなあ。しっかりしてよ。
土曜日 @doyoubi
#twnovel 数日後、姉は無断外泊した。帰宅して私と顔を合わせたらバツの悪そうな微笑、私はピーンと来た。そうか、私が刺激になったのだ。うーん、残念。でも、いいや。私は健気な妹だもん。姉のために彼のことはきっぱり忘れよう。でも、一度ぐらいはあの厚い胸に抱かれたかったなあ。
土曜日 @doyoubi
#twnovel 結婚に踏み切れなかったのは不安定な彼の収入のせいではないの。彼、ママさんコーラスの指導なんかしてるでしょ。誘惑も多いだろうし、彼自身、誘惑されて我慢できるような男ではない。彼の浮気に私は耐えられない。こないだ妹を行かせた時だって不安と妄想でどうしようもなかった。
土曜日 @doyoubi
#twnovel でも、あの時気づいたの。これが愛なんだ、耐えることが愛なんだと。私も歳だし両親が孫を期待してるのもあるし決断したの。彼は喜んで受け入れてくれた。イケメンで誘惑に耐えられないようなダメ男、その妻になれるのは私しかいない。自分で決めた道だから私は揺らぎはしない。 了