辺境のオアシス「工業団地メシ」を君は知っているか?
こんにちは、ハイエナズクラブの会長・zukkiniです。
突然ですが、みなさんは「工業団地」という言葉を聞いて、何を想像するでしょうか?
街外れの広い敷地に並ぶ殺風景な工場群、ひっきりなしに行きかうトラックや大きな機械の騒音。ぼんやりとイメージはできるものの、そこで働く者でなければなかなか近づけないのが工業団地です。
そんな工業団地の中に、半ば労働者専用の食堂があるのはあまり知られておりません。そのようなところで、工業団地で働く人々や出入りする業者、運送会社のドライバー向けに提供されている食事を、僕は「工業団地メシ」と呼んでいます。
これと似ているのは、免許センターや病院などの中にある食堂。このように、関係者以外の来店があまり期待できない飲食店はよくありますが、工業団地の食堂がそれらと違うのは、1つの施設内ではなく、「団地」というある種の街のようなエリアに存在しているところ。閉ざされた場所にありながら“街の定食屋”の雰囲気があり、お店自体が魅力的なケースが多いように思うわけです。
今回は辺境に咲く一輪の花、あるいはオアシスこと「工業団地メシ」というジャンルについてご紹介したいと思います!
「工業団地メシ」とは?
「工業団地メシ」を提供するのは、その敷地内あるいは近くに唯一存在する食堂のこと。しかし、その運営元は工業団地組合や地方自治体、または完全なる個人経営などさまざまです。また、すべての工業団地に食堂があるわけではありません。
たとえば、横浜市の鳥浜工業団地にある食堂は、「組合型」というべきでしょうか。ご覧のとおり「鳥浜振興会館」という団地の組合施設と一緒になった食堂です。
ひたすら工場が並ぶエリア内に突然出てくる「ラーメン」の文字。嫌でもテンションが上がります。
「たかが工業団地のラーメン屋」と思って油断してましたが、中に入ると意外と小洒落ていました。カウンターがあり、夜はお酒が飲めるそうです。
ここで働く人々が仕事終わりに一杯…なんていう素敵な役割も果たしているのかもしれないと思うと、最高じゃないですか!
「工業団地メシ」に求められるのは、ボリュームとカロリー。さらに味が濃ければみんなハッピー!
そんな魅惑のメニューをご紹介する前に、工業団地がどういうものかについて、少し説明してみたいと思います。
工業団地のメシ事情
仕事柄いろんな工業団地を巡り、「工業団地メシ」に触れてきた僕の肌感覚では、交通の便の悪い僻地になればなるほど、「工業団地メシ」への依存度は高まります。逆に、近くにコンビニや食堂があれば自然と淘汰されていく印象です。
工業団地のメシ事情ってそもそもどうなっているの?と疑問に思う人も多いと思いますが、恐らく次の4パターンに分けられるのではないでしょうか。
• 社員食堂
• 仕出し弁当
• 持参弁当
• 工業団地メシ
このなかのどれを選ぶか。これには所属する会社の規模が大きく影響しているようです。社員食堂のある大手企業の社員が、わざわざ外へ食べに行くケースは少ないでしょうね。
一方、中小企業はどうかというと、休憩所を兼ねた食堂スペースを備えている場合が多く、仕出し弁当や持参した愛妻弁当を食べることが一般的と聞きます。
そうなると、「工業団地メシ」はどちらかといえば、そこで働く人々よりもむしろ、外部からやってきた業者や運送会社のドライバーなどの受け皿となっている割合のほうが多いように思えます。
「工業団地メシ」の魅力を3つのお店でご紹介!
「工業団地メシ」の魅力といえば、何といってもそのレアさ! 日常に潜む裏ワザを見たような気持ちになります。だいたい、ネット上にほとんど情報が出てないですからね!
そもそも、用事がなければ行くこともない工業団地という場所の特殊性。「こんな所で営業しているの?」と驚くような殺風景な場所にお店がある純粋な感動と、見つけたときの喜びは格別です。
さらに、利用者の多くが工業団地関係者という特殊な状況で食べる非日常感あふれる食事も魅力。関係者以外立ち入り禁止ではないので、部外者が利用しても問題なし。ならば一度くらい、利用してみたくはないでしょうか?
そんな「工業団地メシ」のなかから、僕が行ったことのある食堂を3つご紹介しましょう!
明海工業団地(愛知県豊橋市)
「明海(あけみ)工業団地」は、愛知県の東部有数の巨大工業団地。自動車部品メーカーを中心に、大手企業の工場が立ち並び、敷地も広大なエリアです。なので、社員食堂でを利用する人が比較的多いのではないかと思います。
この広大な工業団地の中心に位置する3階建ての建物。その1階には、年季の入った広い食堂があります。
こちらの食堂の正式名称は、「東三河輸送センター食堂」。こちらも鳥浜工業団地の食堂と同じく「組合型」と思われますが、はっきりとはわかりませんでした。
無骨な工場群の片隅に掲げられた「喫茶」の文字。見つけた瞬間、妙に嬉しさが込み上げてきました。
朝早くから働くドライバーさんたちに合わせて7時30分から営業しております。さすが愛知県だけあって、モーニングサービスも提供しているんです!
お昼どきになると、あちこちから車や徒歩でこの食堂へ集まってきて…
ご覧のとおり、正午には働く男たちであっという間に席が埋まっていきます。圧倒的な男性率の高さ! 全員作業着!
店内は広く、100席近くはありそうですが、ピーク時にはほぼ満席となり、相席が当たり前。100人の働く男たちが肩をぶつけ合いながら食べる大迫力の「工業団地メシ」!
メニューは、「本日のサービスランチ」(650円)をはじめ、定食や丼モノ、麺類まで何でもあり。
この日は、オーダーする人の多さからサービスランチに次いで人気メニューと思われる「カツカレー」(750円)をオーダーしました。量が多くて大変ありがたいコチラ、お味のほうは、僕が大好きな業務用カレーの味! うまい!
残念ながらお酒は飲めませんが、広い店内で“工業団地マン”たちと一緒にテレビを見ながらかき込むメシは最高!
衣浦臨海工業地域(愛知県碧南市)
トヨタ自動車の衣浦(きぬうら)工場をはじめ、製造業や食品加工業、鉄鋼業などのさまざまな工場が立ち並ぶ臨海工業地域。もともと漁業が盛んだった碧南(へきなん)市は、この臨海工業地域とともに、工業の町としても発展してきました。
そして、そんな衣浦臨海工業地域にも、「工業団地メシ」を発見。
それがこちらの「まるも食堂」。個人経営のお店です。
お店の中身は看板に出るといわれますが、この「おふくろの味」というサブタイトル付きの看板は最高ですね。花や植え木が出迎えてくれる入口付近も、まさに工業団地のオアシスといった感じ。お昼の休憩にはもってこいのお店です。
流通センターの裏手のほう、工業団地でもあまり交通量の多くないエリアのひっそりとしたロケーションもそそられます。
工業団地のオアシスと呼ぶにふさわしい店内はこんな感じです。
各社の休憩時間がほとんど同じなので、ピークタイム以外はこの通りガラガラ。これも工業団地にある食堂が持つ特徴の1つかもしれません。
おそろいの作業着で来店するお客さんの多さは、工業団地の食堂ならでは。「まるも食堂」でも、やはりお客さんに占める男性率はほぼ100%!
うまそうに食べるみなさんの姿を見ていると、俄然食欲が湧いてきます。
「日替わりセット」(700円)は2種類あり、刺身かうどんで迷った挙句に、うどん定食を選択。
ちなみに、カレーやラーメン、焼きそば、チャーハンと、日替わりセット以外にもいろいろ揃っています。
平日の営業時間は6時~21時まで。早朝稼動の流通センターに合わせた開店時間だと思いますが、遅くまでやっているのは長距離ドライバーさん向けでしょうか? 「まるも食堂」はそんながんばる“工業団地マン”たちの味方!
岡崎市薮田の工場エリア(愛知県岡崎市)
大きな工業団地でなくても、いくつか工場が集まれば自然と「工業団地メシ」は発生します。
最後にご紹介するのは、市の中心部から離れた住宅地の一角にある、中小企業の工場が固まったエリアに構える味のある食堂です。
このエリアは、住宅地との境界も曖昧で、きちんと工業団地と名前がついているわけではありませんが、昔から工場や自動車整備工場の多い地域です。また、ここまでご紹介した食堂と同様に、周囲には食事ができる場所がありません。
そういった環境が「工業団地メシ」を求めるのか、工場と住宅地の境界付近で発見しました。画像の左下、油断しているとまったく気付かない、何でもないマンションの駐車場に置かれた看板。
それに誘われて歩いていくと…
あった、「大衆食堂なかじま」! 見た目で分かる名店のニオイ! 完全なる住宅街の中で、朝7時から営業している奇跡のお店!
実はこちら、この界隈の仕出し弁当屋さんとして活躍する傍ら、店舗は食堂として「工業団地メシ」を提供しているのです。
この日は朝7時30分だというのに、すでに仕事着のお客さんの姿がたくさん。朝からお仕事お疲れさまです!
このお店のよさは、こちらの写真1枚見てもらえれば、おわかりいただけますよね?
老夫婦がお2人で切り盛りしておられます。
ご飯と味噌汁に1皿160円や210円のおかずを合わせて、
オリジナル定食を作るもよし。
定食や丼モノ、麺類も充実しているのでそれを頼むもよし! こちらの「カツ丼」(740円)は、素朴な見た目だけどかなりうまくてびっくり。味噌汁は愛知県ならではの赤ダシです。
定食メニューが豊富で決めるのは至難の業。小皿と合わせればアレンジは無限大!
こちらはランチタイムの風景。
作業着の方は少なく、個人経営の工務店や自動車整備工場が多いためか、ほとんどの男性がラフな格好なのが特徴的。常連さんが多いようで、お店のおばあちゃんとの雑談も活発です。「大衆食堂なかじま」も、やはり働く男たちのオアシスだった!
「工業団地メシ」を食べに行ってみよう!
今回は計4つの工業団地メシ食堂を紹介してみました。その魅力が少しでも伝わりましたか?
殺風景な工業団地に突如として現れる工業団地メシ食堂。そのほとんどが一般客を想定しておらず、その情報はあまりオープンになっていません。現時点では、まさに知る人ぞ知る、グルメジャンルにおけるフロンティアの1つと言っても過言ではないと思います。
ちょっと気にかけてみると、工業団地は思ったよりもみなさんのすぐ近くにあります。普段あまり触れる機会のない工場で働く男たちのメシ事情、ぜひ一度体験してみてはいかがでしょうか!
おわり