『俺は2度死ぬ』生命と漫画家人生の危機のなか描いた実録漫画がバズって書籍化へ!作者インタビュー

九死に一生を得てからSNSでバズを生むまで…その過程もまるで漫画のよう
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漫画家のサシダユキヒロ(@y_sashida)先生が今年の2月からTwitter上で連載している漫画「俺は2度死ぬ」。タイトル通り作者の臨死体験を描いた実録漫画だが、じわじわと広まっていき、遂にはあることがきっかけで突然バズり、書籍化の話が持ち上がるほどの大ヒットとなった。

「俺死ぬ」は作者がスーパー銭湯で意識を失い死にかけるところから始まる。のちに、脳腫瘍(がん)が原因だったことが判明する。

「俺は2度死ぬ」の冒頭シーン。銭湯で意識を失ったところを友人に救出され、後に脳腫瘍が判明。

2度目は銭湯の事故から数年後。真冬の夜道でひき逃げに逢い、後遺症により「普通の生活」ができなくなるほどの重度のけがを負う。

ひき逃げで障害が残るほどの大事故に…

がん治療の貴重かつ壮絶な経験や、ひき逃げ事故に遭った後の過酷なリハビリ生活、加害者との裁判の様子など内容はかなりの重量を伴うが、全体を通して漫画ならではのカジュアルなコメディタッチで描かれており、あっという間に読めてしまう。
また、福本伸行先生や東村アキコ先生など、作中に登場するサシダさんの周辺人物たちもそうそうたる面々だ。

サシダさんがアシスタントを勤めている福本伸行先生。事故後のサシダさんに福本先生がかけた言葉は必見です。

「俺は2度死ぬ」はいかにしてバズったのか。今回、サシダ先生にお話を伺ってみた。

ツイッターの些細なつながりから読者の輪が広がった

ーー今年の2月からTwitterで作品を発表し続けていますが、反響が出てきたなと思ったのはいつ頃でしょうか

始めたばかりの時はやはり全然読んでもらう事が出来ず、どうしたら読んでもらえるか?ばかり考えていました。ですが、僕が描いているのは創作ではなくノンフィクションでしたので、とにかく丁寧に描き続けてることしかできないと思いました。そんななか、5月も終わろうとしている時にある方のツイートに僕が反応したことがあったんです。本当に何気なく。それは成田美名子先生の『CIPHER サイファ』という作品についてのツイートでした

僕はこのサイファという漫画が大好きだったので、ただ同じ作品が好きな人に出会った事が嬉しくて、僕も大好きでした!ってコメントしたんです。そしたらサイファのことをつぶやいていた方が、俺死ぬを読んでくださり、その感想などをつぶやいてくださいました。そのツイートが物凄い拡散したとかではないのですが、確かにその後から読んでくださる方、フォローしてくださる方が少しずつ増えて行きました。なので反響が出てきたなと感じ始めたのはこの時くらいからです。

「俺死ぬ」をTwitterで発表し始めて7ヶ月で700フォロワーまで増えて、何者でもない自分が月平均にしたら100フォロワーさん増えているのは順調だよな。と思っていました。この時点では年内で1000フォロワーさんというのが目標でした。

「俺死ぬ」大ヒットのきっかけにもなった東村アキコ先生。
この直後、サシダさんはひき逃げ事故に…

 

流れが大きく変わったのはやはり東村アキコ先生がつぶやいて下さった時からです。その後、割とすぐTogetterでまとめていただき、事態は急変しました。通知が止まらなくなり、すぐにフォロワーさんが倍以上に増えました。

 

↓東村先生が当時の様子と漫画の感想をツイート

 

突然のバズ、「夢でも見ているのか?」という感覚に

ーーその後、Togetterでもかなりの反響がありましたが、いかがでしたか?

Togetterでの反響の方が大きかったと思います。みるみるPV数が増えて行き、10万PVを超えたあたりから、もう嬉しいとかそういう感覚ではなくなり、頭がついていかなくなりポカーンとただ数字を見ていました。PV数を右から1、10、100、千、万…10万…と何度も数え直していました。その度に10…万?なんだこの数字は?となっていました。

↓まとめがヒットし、どんどん閲覧数が増えていく様子を見たサシダ先生


そして、え?ん?これって世に言う「バズる」ってやつなのか??とよくわからなくなり、そんな事をツイートしていたと思います。フォロワーさんにバズったんですよってコメントもらったりしたのですが、何か現実味がない、夢でも見てるのか?という感覚でした。

↓書籍化決定後のサシダ先生とまとめ作成者さんのやりとり

 

これからもTwitterに上げていきます

ーー「俺は2度死ぬ」は今後どうなっていくのでしょうか?

ありがたい事に書籍化のお話が動き始めています。まだ本当に動き始めたばかりですので、何も決まっていないのですが、編集さんも僕も良いものを作りたいと強く思っています。これについても今まで通り丁寧な仕事を心がけて作っていきたいと思います。

「俺死ぬ」本編自体はまだ終わっていないので、これからも地味に描いてはTwitterに上げるということを続けていきます。
有料にすることや、何かの雑誌のみに掲載ということにはなりません。これからもTwitterに上げていきます。これが変わることはありません。今まで通り一番最初にTwitterにアップします。ただ、書籍化にあたってどの程度になるかはまだわかりませんが、描き下ろしは入ると思います。それはTwitterでは読めませんが、そこはどうかご容赦ください。

↓数々のパロディが見られるのはネット上だけかも?

今後は全くの未定

ーーサシダ先生の今後のご予定は?

現在、仕事の予定は何もありません。もともと今年は「俺死ぬ」に力を入れていこうと思って、そっちばかりに力を入れてやってきました。その結果、事故前からずっと見てもらっていた某誌の担当さんに切られてしまいました。なので今は全く商業での予定も繋がりもありません。来年以降頑張りたいと思います。

でもたぶん「俺死ぬ」が終わらないと他のことに時間がちゃんと取れないかなと思っているので、まずは「俺死ぬ」を描き切る事が目標ですね。
その後、商業でのオリジナル漫画が描けるように頑張ります。「俺死ぬ」きっかけで担当やりますよーって方が現れてくれると最高なんですけどね(笑)

ーーーありがとうございました。

 

「俺死ぬ」は現在もサシダ先生のTwitterアカウントで更新が続いている。病気の話題はもちろん、任意保険の話や、復職までの生活保護の話など、誰しもが知っておく必要がある要素がたくさん詰まった「俺死ぬ」。今後のサシダ先生の活躍と合わせてチェックしていきたい。

※この記事のツイートは、サシダユキヒロ(@y_sashida)さん、キャボナッシュ(@cabonash)さん、東村アキコ(@higashimura_a)さんの許可を得て掲載しています。
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