ホースとパイプがノスタルジックな音を奏でる「卓上型パイプオルガン」日用品を楽器に変えた演奏家に話を聞いた
「ブルーシートはいい音がすることに気づいた」
「卓上型パイプオルガン」の構想から完成までどのくらいかかりましたか。
2020年の秋ごろ、様々な笛を研究していました。そこでブルーシートなどがいい音がすることに気づき、年明けからオルガン化に取り組みました。笛から数えると約半年というところです。

4月には一度「オルガン」としてTwitterに投稿。この時は緑のホースに穴を開けてリコーダーにしたものに空気を通したもののみだった。これにブルーシートをリードにしたホースを設置・増設させて「卓上型パイプオルガン」が完成した。
※リード…震わせて音源にする薄片。木管楽器のリードは木製、その他の楽器では金属やプラスチック製。
ホースでオルガンを作りました。
この「かすれ感」がなかなか訴えかけてきます....... https://t.co/WUBoMGrl27
— kajii創@手作り楽器 (@kajiisou) 2021年4月12日
「卓上型パイプオルガン」は風船を動かす、パイプをスライドさせる、ホースを指で動かすという3つの方法でビブラートがかけられるの。もちろん一般的なパイプオルガンには風船などついていないので、このようなビブラートはかけられないから大きな特徴だ。風船のビブラートについては特許も申請した。

風船でビブラートがかけられますが、こうなることを狙って作ったのでしょうか。
風船ビブラートは偶然の発見でした。空気タンク代わりに風船を複数個付けたところ、膨らむものと膨らまないものがあるのに気づき、揉むとビブラートがかかってこれは大変なことになると思いました。(共感できないと思いますが…笑)

Kajii創さんたちが作ってきた日用品楽器は100種を越えている。それでも今回の卓上型パイプオルガンについては苦労もあったという。
楽器の制作自体は比較的スムーズでしたが、実験にとにかく時間がかかって疲弊しました(リードの材質テストが大変で、笛の当たり外れも激しく…)。制作以外にも、特許の出願などがあったため今まででトップ3に入る大変さでした。
これまで作った楽器を紹介している「楽器図鑑」を見ると、釘や鉛筆、タライや紙など材料は本当にさまざまあり、kajiiの2人の手にかかるとどんなものでも楽器になってしまうようだ。
日用品を楽器にしようという発想やヒントが生まれるきっかけは。
楽器にしようと思うきっかけはいろいろとあります。偶然の発見や、知人からヒントをもらうこともあります。
今回は楽器の王様とも言える複雑な機構のパイプオルガンを、誰の目にも仕組みが分かるような形でコンパクトに作れたら愉快だな、というところからチャレンジしてみました。
打首獄門同好会やガチタンバリン奏者とコラボ演奏
「日用品楽器」の音色にひかれるミュージシャンもいる。2020年4月にはKajiiさんたちが茶碗を使って演奏した「トルコ行進曲」をTwitterに投稿。それを見たロックバンド「打首獄門同好会」のギターヴォーカル、大澤敦史さんが伴奏をつけたものをTwitterに投稿したのだ。
こちらがその当時のツイート。上部ツイートは大澤さんによるギター伴奏つき演奏、下部のツイートはkajiiさんによる「食器でトルコ行進曲」の演奏動画だ。茶碗のファンシーな音色にメタルが混ざった「トルコ行進曲」などなかなか聴けることはない。
すげぇーこんなことできるんだー!
世の中いろんな探究をしている人がいるものだ…
ってすっかり感銘を受けたので、リスペクトこめてバッキング乗せてみました。
いやなんでメタルやねん https://t.co/9IIsrnmghc https://t.co/jWg9wS1Fbr
— 打首獄門同好会 (@uchikubigokumon) 2020年4月18日
この時の感想もお聞かせ下さい。
打首獄門同好会の大澤さんにコラボしていただけたのは、本当に衝撃でした。
一番早く、一番クオリティが高くてさすがでした。。。笑 ドラムの打ち込みまで含めると相当時間がかかっていると思います。
あまりに嬉しかったので、その後打首さんの「日本の米は世界一」を米にまつわる者だけで演奏する、という動画を作りました。
最近はガチタンバリン奏者さん大石竜輔(@ryu1300ryu)さんともコラボしていましたね。
ガチタンバリンの竜さんは、名古屋で奥村さんというドラマーと打楽器デュオでライブをやられています。そこに遊びに行って知り合ったのがきっかけで、以後ちょくちょくと音合わせをさせていただく機会がありました。
コラボ動画は静岡で仕事をしていたときのもので、竜さんが静岡在住で遊びに来てくれたことで実現しました。上手すぎます。
食器とフライパンとタンバリンでの演奏とは思えない夢コラボ動画がTwitterに投稿されている。
イカれたメンバーを紹介するぜ!食器!フライパン!タンバリン!以上だ! https://t.co/laP70Mbhsp
— ガチタンバリン奏者大石竜輔 (@ryu1300ryu) 2021年5月8日
作りたいもの(楽器)がたくさんある
kajiiさんたちはこれまで学校や幼稚園・保育園など全国各地で演奏会やワークショップなどを多数開催していたが、今は以前のように頻繁に開催するのは難しい状況。しかし「作りたい楽器はたくさんある」という。
今はなかなか人前での演奏というのは難しいので、ひたすら楽器を作って力を溜めたいと思います。作りたいものはたくさんあって…「着る楽器」や「腕型楽器」「カート楽器」「キャンプ楽器」などです。一つ作ると次に作りたいものが二つ浮かんでくるので、終わらないループにはまっています…。
Kajiiさんの公式サイト、ならびにYouTubeチャンネル「kajiiの不思議な楽器たち」では手作り楽器での演奏動画をはじめ、家にあるものが材料になる手作り楽器の作り方をレクチャーしている動画が投稿されている。また、コンサートの予定についても発表されるので、日用品楽器の音を生で聞いてみたい人はぜひチェックしてみよう。