年越しそばに憧れる蕎麦アレルギー持ちが「蕎麦に限りなく近い麺」を作ってみた
トゥギャッチ編集部のふ凡社鈴木です。
年末大晦日といえば「年越しそば」。
しかし私は蕎麦アレルギーなので、年を越すことができない。
私はこれまで美味しそうな蕎麦の話を聞くたびにその味を夢想してきた。蕎麦っていったいどんな味がするんだろう。年末には年越しそばを食べる人たちを横目に『どん兵衛 かき揚げうどん』を寂し気に食べながら年を重ねてきたのだ。
蕎麦に憧れて二十数年が過ぎた今年の師走、ふと「蕎麦に近い麺を自分で作れないか」と思い至った。この記事は、蕎麦アレルギーの人間が、なんちゃって代替え蕎麦を作って年越しするお話である。
あらかじめ断りを入れておくと、大変長い記事になった。本当に苦労したので、ぜひ最後までお付き合いいただきたい。
「蕎麦の味」を人に聞いてみて分かった衝撃の事実
幼少期にアレルギーが発覚して以来、私は蕎麦を食べたことが無い。そもそもアレルギー発覚のきっかけになった食べ物も、蕎麦ではなく蕎麦粉が含まれる関連商品だったもんで、生まれてこの方「蕎麦そのものの味」を知らずに育ったといっても良い。
蕎麦についてほとんど情報を持たない状態なので、まずは「蕎麦の味」についてのリサーチから始めることにした。
私が今まで想像していた蕎麦のイメージは以下の通りである。
・蕎麦は他の麺と違って、麺そのものにしっかり味がある
・他の麺に比べて歯ごたえがしっかりしている
・ラーメンほどつるつるすすれるものではない(麺がザラザラしている)
蕎麦とは麺自体の個性が売りで、がっつりとした風味と食感を楽しむもの。職人気質の江戸っ子が好む、パンチの効いた食材でぃ。私の中のイマジナリー蕎麦通はそう言っている。
真相を確かめるべく、さっそく社内のチャットや友人たちに「蕎麦ってどんな味がするんですか」と呼び掛けてみた。すると、大方以下のような回答が返ってきた。
・うーん、言われてみると蕎麦の味説明するの難しいな
・蕎麦はツユや付け合わせの味がメインだから、蕎麦そのものの味をあんま意識したことないかも?
・麺自体に個性がある感じではない
そう、「なんでぇ!話がちげぇじゃねぇか旦那!」ってな具合だったのである。
さらに、「よほどの蕎麦通でもない限り、麺そのものの味をメインに楽しむ人はいないのでは」という意見まで出る始末。
しかし、味以外の部分については注目すべき情報がいくつか得られた。
・蕎麦は鼻に抜ける風味を楽しむもの
・蕎麦自体は他の麺に比べて水分が少ない
・強いて別の麺で例えると 全粒粉麺に近いかも
・風味は麦茶とか草系の感じ
トゥギャッチのTwitterアカウントでも呼び掛けてみたところ、ある方から「青海苔の風味を薄めたような感じ」というコメントもいただいた。
@togech_jp 蕎麦は食べられるけどそれほど好きではない者です。
異論はあることを承知で言いますが、「青海苔の風味をすごーく薄めたような味」かな、と思いました🤔
— ジャスティス (@justice425403) 2021年12月9日
なるほど、おぼろげながら、蕎麦の輪郭が浮かび上がってきたような気もする。しかし、これだけではまだ何が何やら分からない。
えぇい!!!こうなりゃ蕎麦に詳しい人の話を聞くしかねぇや!!!
ということで、友人のつてで紹介してもらった、蕎麦屋の娘さんに話を聞いてみることにした。
蕎麦屋が語る蕎麦のポイント
今回話を聞いたのは、山梨県は富士吉田市にある『而今庵(にこんあん)』というお蕎麦屋さんの娘さん・Kさん。もともと居酒屋だったが、Kさんのお父さんであるご主人が趣味の延長で蕎麦の提供も始め、その流れで蕎麦屋さんになったそうだ。

さっそく、蕎麦について基本的な話を聞いてみよう。
ズバリ、蕎麦ってどんな味ですか?
蕎麦の味って聞かれると「蕎麦は蕎麦だよね」という感じなので、けっこう難しいですよね。事前に私の家族LINEでも聞いてみたところ、同じような反応が返ってきました。
麺そのものの味わいは淡泊ですね。父からは「敢えて言うとしたらナッツ系の香りや風味が近いんじゃないか」という話がでました。クルミやアーモンドなどです。
ナッツ系の味わいの麺…これまた食べたことが無い人間には想像もつかない
日常から蕎麦に触れている人にとっても、蕎麦の味を説明するハードルは高いみたいだ。しかしながら、蕎麦屋の御主人が「ナッツ系が近いのでは」と言ってくださったのは、非常に重大なヒントになりそうだ。
食感など、味以外のポイントについても教えてください
麺には蕎麦の実の黒い粒が入っていて、見た目はごつごつしていますが、舌触りはつるっとしています。噛んだ時にぷつっと切れるようなしっかりした食感があります。
蕎麦は、香りが重要な気がします。味と言うよりは、食べたときに鼻に抜けていく香りが蕎麦の特徴なのかなと。
Kさんからもまた、麺そのものの味よりも香りに重きを置いているという意見が出た。
Kさんのお父さんより、初心者が蕎麦打ちする時のポイントも教えていただいた。
一番のポイントは麺の仕上がり。断面が四角で、断面の幅がだいたい1.3mmくらいが目安です。
蕎麦は切り幅が大事みたい うまく打つためには、やはりそれなりの数をこなす必要があります。可能であれば、経験ある人に教わりながらやるのが良いと思います。
あとは、作る時に美味しい水を使うのもポイントです。
有識者からの確かな情報を得たことで、代替え蕎麦打ちの解像度がぐんとアップした。大変ありがたい。
試食会に向けて、さっそく麺を打ってみよう!
材料と蕎麦打ち道具を揃える
ヒアリングした話を元に、候補となる材料を用意する。ナッツ系の味わいが近いのではないか、ということで、ネットでクルミ、アーモンド、麻の実の粉末を手配。これらは一袋1000円程度で買えた。

蕎麦づくりの道具はどうするか。ネットで調べると、蕎麦打ちには特徴的な道具がたくさん登場する。
・長い綿棒
・麺を伸ばすため、十分な大きさのあるのし板
・蕎麦切り包丁
・駒板
などである。

これらが一式まとまった「蕎麦打ち入門セット」なるものも売られているが、それらは最低でも1万円前後からとなかなかお高い。素人がいきなりここに手を出して良いものだろうか。
不安にかられさらに調べたら、「素人のそば打ち道具入門」なるサイトを発見した。こちら、右も左も分からぬ蕎麦打ち初心者が、最初に張り切って分不相応のアイテムをそろえてしまう悲劇を回避するための情報が集まった、非常に有益なサイトだった。
こちらを参考に、
長い綿棒、駒板、クッキングマット+マットの下に敷くコルクの板(のし板の代わり)、麺切り包丁、巨大なアルミボウル(100均の200円商品)、ザル
を購入した。これで準備は整った。