年越しそばに憧れる蕎麦アレルギー持ちが「蕎麦に限りなく近い麺」を作ってみた

今年こそ年越しを味わうんじゃ…!
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そば打ちの手順を学ぶ

そば打ちに着手する前に、座学を行う。YouTubeで「蕎麦打ち 初心者」で検索をかけて出てくる動画を片っ端から見漁り、まずは蕎麦打ちの手順を知ろう。

蕎麦打ちは職人芸のイメージが強いので、非常に複雑な工程が求められることを覚悟していたが、実際の作り方は思ったよりシンプルだった。主な工程は以下の通りだ。

厳しい師匠について修行するイメージ

1、そば粉とつなぎ粉を混ぜる

2、粉に水回しをしながら、少しずつ生地をまとめる

3、生地を丸めて玉にする

4、玉にした生地を伸ばす

5、生地を切って麺の形にする

あとは切った麺を茹でれば完成という流れだ。もちろん、この5つの各工程に極めるべき技術が多分に含まれているのだと思うが、まずはともあれやってみようではないか。

いざ代替え蕎麦づくりに挑戦

まずはクルミ粉5割で作ってみる

蕎麦は、そば粉と小麦粉などのつなぎの割合によって味が大きく変わるらしい。代表的なのが「二八蕎麦」。つなぎ2、蕎麦8の割合で作ったものだ。つなぎを使わない十割蕎麦なんてのもある。いずれにせよ、つなぎよりも蕎麦粉の割合のが高いのが一般的なようだ。 

代替え蕎麦も、蕎麦の割合に準じて作りたいところだが、今回用意したナッツ系粉末は蕎麦粉と違ってそもそも麺にすることを想定していない粉のはずなので、蕎麦のようにはいかないだろう。

クルミ粉。粒が荒く、ザラザラとしている

最初は様子見で、クルミ粉5:つなぎ5の5割クルミ麺を作ってみることにした。

つなぎに使うのは小麦粉。中でも「中力粉」、いわゆるうどん粉が良いとされている。が、中力粉はスーパーで見当たらなかった。中力粉の代わりに、薄力粉と強力粉を混ぜたものをつなぎにする。

いきなり多めの量を作って失敗したら目もあてられないので、まずはクルミ75g+つなぎ75gの少量でトライすることに。

「水回し」ってなんだ

蕎麦を打つ水の量はだいたい粉の40%くらいの量。今回の場合は60mlだ。60mlをカップに入れると、「水こんなに少なくていいの?」と不安になる量だ。

蕎麦は、粉に少しずつ水を加えながら全体に水分をいきわたらせる「水回し」という工程がある。パンなんかだと粉に水を一気に入れてからこねていくが、蕎麦の場合は一度に全部の水を入れるのはあまり良くないらしい。

蕎麦の水回しの様子。フリー素材サイトには蕎麦打ちの各工程が網羅されていて助かる

水を少し注ぎ入れ、指を熊手みたいに開いた状態で粉を混ぜていると、粉末がすこしずつ玉になっていく。粉が大きめのそぼろ状になるまでこれを繰り返していくわけだ。

クルミ粉でも同じことができるのか…?とかなり不安だったが、やっていると意外にちゃんと粉がまとまって玉になっていく。座学の動画で見た工程がちゃんと再現できるとテンションが上がるものだ。

細かい粉が無くなれば完了

生地の時点で嫌な予感がする

水を全て加え終えて、「もうこれ以上玉が大きくなることは無さそうだ」というところまでまとまったら、いよいよ生地をこねるフェーズに入る…が。

クルミ粉50パーセントの生地は想像以上に硬く、この時点で既に「綿棒で伸ばせる気がしない」という嫌な予感がよぎる。

まとまった生地はこんな感じ。岩石みたいだ。これをポリ袋に入れて20分ほど休ませる。

「ひび割れた大地」を錬成

20分後、いよいよ綿棒で生地を伸ばそうと試みるが…

全然ダメだった。

水分・粘度ともに圧倒的に足りず、伸ばした端から生地がボロボロと崩れてしまう。その姿はさながら、干ばつでひび割れた大地。やはり蕎麦のようにはいかなんだか。

この地に草は生えない

もう一度比率を変えて作り直すとして、ここまで作った生地はもったいないのでなんとかリカバリーできないか試してみる。

水とつなぎ粉を足しながら練り直すと、少なくとも綿棒で伸ばせる柔らかさにはなった。

とにかく1口食ってみねぇ!

少し力を加えただけで切れてしまいそうな硬い生地になったが、これを折りたたんで、麺切り包丁で切ってみる。

麺を細く均一に切るの、動画で見ると簡単そうだったのに実際やると超難しい

クルミ麺試作品一号完成。

見た目はなんとなく蕎麦っぽいが、実際の生麺と比べてみると全然違った。

本物の蕎麦の生麺。クルミ麺と比べるとビジュアルはやはり全然違う

たっぷりの湯で1分ほど茹でてみた結果がこちら。

もはや麺の面影はない

案の定、茹でている間にブツブツに切れてしまった。細長く切ったこんにゃくみたいな残念な姿だ。

正直かなり食べるのが怖いが、まぁクルミ麺の味がどんなもんかはわかるだろう。味は…

あれ、思ったより悪くないぞ。

クルミの風味が口に広がり、コクのある味わい。もうちょっと麺としての体裁を整えれば、十分に美味しい味になりそうな予感はする。ただ当然ながら、これが蕎麦に近い味なのかどうかは全く分からない。

蕎麦経験者として、撮影係で助っ人に来てくれた編集部員に犠牲になってもらい、味の感想を聞いてみた。

「あー、蕎麦に近いかも?」

なんと!蕎麦を食べたことがある人からしても、味が近いというではないか。麺つゆにつけても食べてもらったところ、「麺つゆが入るとさらに蕎麦感が増す」とのこと。

さすが、蕎麦屋さんが「クルミに近いかも」と言うだけのことはある。クルミは初手にして、蕎麦に近い味を叩き出す有望な食材だと分かった。

その後アーモンド粉末、麻の実粉末も試してみたのだが、こちらは試作の段階で「明らかに蕎麦とは違う」という結論が出た。しかしこちらもまた興味深い味わいだったので、詳細は後述する。

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書いた人
ふ凡社

Togetterオリジナル記事編集部員。平凡から非凡へ向かう道を探す男。

Twitter:@Hubonsya