2022年9月7日

「論文の発表に100万円以上の費用がかかる」システムの全貌を描いた漫画から研究者の苦悩があらわに

大金を投じた研究の発表に大金が必要!?
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新聞やテレビ、Twitterでも見かける「○○についての論文が発表されました」というニュースを見かけたことがあるだろう。しかしこのとき、研究者側が多額の掲載料を払っているという事実をご存じだろうか。

研究にも発表にもお金がかかるという、多くの研究者にとって悩ましい状況を描いた漫画がTwitterに投稿された。初めてこの事実を知った人たちからは「研究にもお金がかかるのに、論文を発表するのにもお金がかかるの!?」と驚く声が集まっている。

漫画を投稿したのは、医師で漫画家の永田礼路 (@nagatarj)さん。現在は臨床業務のみで論文を発表する研究業務には携わっていないとのことだが、今回なぜ研究者の苦悩を描いたのか詳しく話を聞いた。

論文に関わる費用についての漫画を投稿したのはなぜですか?

9月4日に開催のコミティア(自主制作漫画誌展示即売会)で何か新刊を出したいと思っていたのが先にありました。

その中で最近、がんゲノム医療の専門書(『がんゲノムデータ解析』)の表紙を描くお仕事をいただいたのもあって、5年前に同じような論文の費用についての漫画を描いていたことを思い出しました。

気になって現在の論文発表にかかる費用について調べ直したら、5年前よりさらに値上がりしており、さらに費用が大きな負担になっている問題に根本的な解決の糸口がいまだなさそうでした。そこでこの問題を周知したく、コミティア販売用の冊子を制作するとともに、Twitterにも投稿しました

漫画内では、無料で論文が閲覧できる「オープンアクセスジャーナル」(以下OA)という仕組みにも触れられている。論文の著者が掲載料を払うことになるが、登場した20年前においては画期的な仕組みだったようだ。

OAが登場したときの感想は?

OAが出現したのは20年ほど前で、その当時の私はまだ論文の発表形態についての知識はほとんどなかったので、コメントできることは特にありませんが…ただ、1990年代から学術出版社へ反対する動きが強くなってきたので、その成果として待ちに待ったシステムの出現だったのだろうなと思います。

その後「掲載料の高額化」という新しい問題が出現するわけですが…。

OAが掲載するインチキ雑誌やインチキ論文を見分ける方法はありますか?

難しいと思います。

ただ、「インパクトファクター(※Journal Citation Reportsが毎年提供する自然科学・社会科学分野の学術雑誌の影響度を表す指標の一つ)」のスコアが高いものはきちんとした雑誌だという目安になるかと。
ただこの「インパクトファクター」を調べるのも有料だったりするのですが…。

雑誌のWebサイトの作りや英語がいい加減だったり、編集委員会がきちんと書かれておらず連絡先がよくわからないものなどは疑った方がいいと思います。

あとは雑誌のランク付けをしたサイトや、OA誌の背景を記載したサイトが参考になるかもしれません。

高額が必要な論文システムのほかにも研究者の苦労はありますか?

 国立大学への運営費交付金(大学自体へ配られる研究費)は年々減らされて、科学研究費などの「競争的研究費」という、研究内容を審査して認めた研究に対してのみ配分される研究費が大きくなっています

一見合理的なように思えるのですが、競争的研究費を獲得する労力は大きく、成果が出るのに時間がかかる研究では獲得しにくいという難点があり、研究者が落ち着いて研究を行える状況からは遠ざかっているように思えます。

また交付金の減額などにより、人員ポストが減り雑用が増えることと相まって、研究者が研究そのものをできる時間が確保されにくくなっていると聞きます。

やはり安定した研究費を配分されるよう改善してもらいたいな、と近くで見てる者としては感じます。

研究をするのも、発表するのも、莫大なお金がかかる。研究費を獲得するのも、研究に専念するのも労力がかかる…。こんな四面楚歌の状態で、世の中のために日々新たな技術を探求して下さっている研究者の方々の苦労が報われる日が来ますように…。

永田さんは雑誌『ヤングキングBULL』にて連載していた「お前の寝言がわからない」の単行本が発売予定。またコミティアへの参加予定もあるようなので、気になった方は永田さんのTwitterをチェックしてみて欲しい。

次ページ:「論文にかかるカネの話」全話を読む

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書いた人
中野ようす

野生のフリーライター。本とお笑いを摂取し日陰で眠り、たまには濡れた犬の匂いが嗅ぎたい。Twitter:@nakano_books

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