手作りドレスは50着超!日本でロココ時代の舞踏会を再現する歴史衣装研究家の想いとは

どんな容姿の人にも必ず似合う時代のドレスがある
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「#多分私しかやっていない 」のハッシュタグを通じて、Twitterユーザーによるユニークな試みの数々が投稿された。その中でも、ひときわ目を引く画像とともに投稿されたツイートを目にした。

ドレス・ウィッグは全て投稿者である汐音凛さんの手作りだというので驚きである
まさかここが現代日本であるとは誰も思うまい

欧州の宮殿を思わせる豪華な空間に、貴族のようなきらびやかなドレスをまとった人たち。こちら現代に撮影されたものであり、舞台は日本というのだから驚きだ。さらに、ドレスは全部手作りとのこと!

投稿した汐音 凛 ヒストリカルコスチューム研究家(@shione_kageki)さんに話を聞いた。

スケジュールに「舞踏会」の3文字があるだけで元気になれる

汐音凛さんは、『歴史扮装を文化として楽しむ。』をテーマに17〜20世紀初頭の衣服をデザイン・制作している。またアトリエSHIONEという団体を設立し、制作した衣服を『着ること』を通して、歴史・美術・音楽を体験できるイベントを国内外で開催している。

Twitterに投稿された画像は、18世紀フランス宮廷文化を日本で再現する舞踏会イベントで撮影されたもの。衣装だけでなく、音楽・舞踏も専門家が監修しているという。

手作りのドレスのロココ舞踏会を思いついたわけは?

今まで20年くらい、私は自分のためにたくさんのドレスを制作して世界中で扮装を楽しんできました。


しかしある程度の年齢に差しかかった頃、ディズニープリンセスや漫画の中のドレスを自分が着用することに年齢的な限界を感じました。

そんな時、ヒストリカルコスチュームの世界を知り衣装を作り始めたのがきっかけです。

ヒストリカルコスチュームとはどういったものでしょうか?

歴史の中で着用されていた衣服のことです。


史実に沿って当時のパターンや作り方を研究し、現代の素材や縫製方法でできるかぎり忠実に再現します。

ヨーロッパの歴史の中では、ドレスはあらゆる年齢の人が当たり前かつ日常的に着用していたもので、「ドレスを着るなら若くて美しいお姫様でなくてはならない」という凝りかたまった私の中の概念をヒストリカルコスチュームとの出逢いが変えてくれました

ヒストリカルコスチュームの世界と出逢った汐音凛さんは、ヴェルサイユ宮殿で一般の人も参加できる舞踏会イベントが開催されていることを知る。そこに参加したい一心から独学で18世紀のドレスを制作し、見事夢を叶えたそう。

宮殿内の一コマ。本場舞踏会への参加や撮影も行っている

ヴェルサイユ宮殿での舞踏会に参加された経験について教えてください。

さまざまな年齢層の方々が楽しんでいて、メイン層は60代くらい。体型もさまざまで、今まで自分が日本で、大柄な体型や容姿・年齢を理由にドレスを着ることを諦めていたことがいかに馬鹿馬鹿しいかを思い知りました。 私はバストが大きいことが悩みでしたが、ロココのドレスにおいては強みになります。


自分が欠点だと思うことが時代によっては魅力的であること、そしてロココのドレスで当時の舞踏を踊ったり、音楽を聞いたり、世界中の方々とヴェルサイユ宮殿という世界遺産の中で18世紀を再現するということはとても刺激的な体験でした

日本で、手作りロココ舞踏会を開催しようと思ったわけを教えてください。

歴史の中のドレスを着るということは、当時の人たちが感じたことを一番身近に感じられる手段です。 また、そのドレスを着て当時の舞踏を踊ることにより、そのドレスがなぜその形なのかを知ることもできます。


日本にはロココの時代をお好きな方がたくさんいらっしゃいますが、そんな方々に「歴史をまとうことで知る体験」をしてほしい! そんな思いから開催を思いつきました。

ヴェルサイユの舞踏会に参加した経験のある友人たちをスタッフとして迎え、より現地に近いイベント作りを心がけています。

ダンサーも本場舞踏会経験者。初参加でも18世紀宮廷舞踏の解説とともにダンスを教えてもらえる

制作したドレスを着てもらう活動を通して伝えたいことは?

どんな容姿の人にも必ず似合う時代のドレスがあるので、自信をなくしている方の自信を持つきっかけとなれば、と考えています。

実際イベントに参加される方は、乳がんの手術の前に自分の美しいバストを写真で残したいとロココドレスをお召しになった方、多忙な毎日の中で一瞬のきらめきを求めに来てくださる方などきっかけはさまざまです。 しかし、どんな事情の方でも、スケジュールの中に「舞踏会」の文字があるだけで元気になるんじゃないか? と思うのです

確かに、スケジュールの中に一生に一度は「舞踏会」と書き込んでみたい。そして自分に似合う時代の衣装探しを通して自信を取り戻す、という観点は非常に興味深い。

日本での舞踏会は年に2回、東京・大阪で開催しいるそう。次回開催は2022年11月20日、東京。詳細は汐音凛さんのnoteで公開されている。

 本格的な歴史衣装で、まるで18世紀にタイムスリップしたかのような体験をしたい方はぜひアトリエSHIONEのホームページをチェックしてみては。

 

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書いた人
中野ようす

野生のフリーライター。本とお笑いを摂取し日陰で眠り、たまには濡れた犬の匂いが嗅ぎたい。Twitter:@nakano_books