名前入りの人形、犬型の土製品…奈良市で出土された「用途不明品」を集めた展示会が興味深い

歴史の謎を紐解く鍵か!?
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発掘調査にて出土される、数々の品物。その中には、姿形を見ても「何に使われたのかわからない」品もあるという。

2022年10月1日より、奈良市埋蔵文化財調査センターにて開催される「また!ナニこれ?-奈良市出土の用途不明品」は、「用途不明品」が集められているという一風変わった展示会だ。

貴重な品々が見られる展示会はなんと入場無料

この展示会は2020年(令和2年)に開催した「ナニこれ!?-平城京出土の用途不明品-」が好評だったことから再び開催となったもの。今回は、奈良市内の縄文時代から江戸時代までの遺跡から出土した用途不明品等が展示されているという。

用途不明品にフォーカスした展示会について、奈良市 埋蔵文化財調査センター(@naracity_maibun)の方に詳しく聞いてみた。

展示担当スタッフは「用途不明品」が好き

前回、好評だったとのことですが、今回また開催が決まった経緯を教えてください。

率直に申し上げると、展示担当者が用途不明品が好きだからです。

前回は該当する資料の量が多かったため奈良時代のみに絞った展示となりましたが、前回扱えなかった縄文時代から江戸時代までの広い時代の用途不明品をご紹介したく、開催いたしました。 

前回の展示の際に反響が大きかった出土品はどのようなものですか? 

人気のあった出土品は何点かありますが、中でも反響をいただいたのが「獣脚付円盤状土製品」とよばれる、獣の足のついた粘土板の上に粘土紐を迷路のように巡らせたものです。

溝にお香の粉末を入れて火をつけて時間を計る香時計の一種と考えられていますが、来場者からは「球を迷路に入れて転がして遊ぶおもちゃだったのではないか」などのご意見をいただきました。

また、特別展のあとに他の博物館から「自身の企画展で展示したい」と借用依頼をいただくようになりました。

「獣脚付円盤状土製品」。見た目は蚊取り線香のようにも

今回の展示の中で、特におすすめの出土品はありますか。

いくつかありますが、中でもおすすめしたいのが平安時代の井戸から出土した、緑釉陶器に封入された人形です。

合計で37枚が瓶の中に封入されており、胴部には3人の女性の名前が書かれています。

謎が謎を呼ぶ、まさに用途不明品だ

さらに、こちらは同じ平安時代の井戸から出土したもの。こちらには男性の名前が書かれているという。

何のために名前を書いていたのか、妄想がふくらむ

緑釉陶器の中に封入されていた3人の女性とどのような関係の人物だったのか、どのような願いが込められているのかが気になる資料です。

発掘されたものの中で、このような「用途不明品」である割合はどれくらいあるのでしょうか。

「用途不明品」の定義によってその割合が大きく左右されますので、簡潔にお答えするのは難しいです。

「このように使われた可能性がある」というものが大半です。 

この他にも、埋蔵文化財調査センターのTwitterアカウントでは『ナニこれ展通信』と称して、さまざまな「用途不明品」が紹介されている。

『弥生時代の刺突文がある土器』

大きさは高さ3cm、残存幅4cmほど

『室町時代の犬型土製品』

室町時代のもの。奈良市の南東部、元興寺旧境内の周辺に位置する奈良町遺跡の井戸枠の中から発掘されたそう

実際はどのような用途で使用されていたのか、考古学の知識はなくても展示品を見ていると想像は膨らむばかり。興味のある人はぜひ展示会場へ行ってみては。

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書いた人
重松雄太

宣伝会議47期生。インタビューライター。TSUMUGU COFFE▷フリーランスだけでなく、多様な方々が集まって「つながり」ができる場所を提供したいと思い、カフェを開業しました。