世界一臭い食材「シュールストレミング」を何が何でも美味しく食べるぞチャレンジ
7月にスウェーデン大使館にお邪魔し、スウェーデンの商品ばかり売られている自販機で「シュールストレミング」を手に入れた。世界一臭い食材として日本でもおなじみ（？）の、ニシンの塩漬けである。
買ったからには、食べなければいけない。でも正直、あまり食べたくない。
とりあえずトゥギャッター社オフィスの冷蔵庫に放り込んで問題を先送りにしてみたものの、冷蔵庫の妖精さんが勝手に食べてくれるはずもなく。目をそむけたところで、社内で不気味に発酵が進行する一方である※。
※シュールストレミングは缶の中で発酵し続ける食品。
北欧料理のプロにシュールストレミングについて聞く
日本ではよくテレビやYouTubeなどでネタ食材的に扱われがちなシュールストレミングだが、お値段は1缶5000円くらいとなかなかに高級食材である。
せっかく買ったんだし、どうせならちゃんと、美味しく食べたい。
そんなことを考えていた折、7月16日から18日にかけて、東京は立川にある商業施設「GREEN SPRINGS」で開催されたイベント・『TACHIKAWA LOPPIS』にて、シュールストレミングを使った料理を振る舞う催しが行われた。
出店したのは北欧料理専門店の「リラ・ダーラナ」。休日で賑わう商業施設内でシュールストレミングを振る舞うとは、かなり攻めた企画だと思ったが、プロのシェフならきっとシュールストレミングを美味しく食べる方法を知っているに違いない。
リラ・ダーラナの遠藤芳男シェフに、シュールストレミングについて詳しく話を聞いてみた。
シュールストレミングは、どんな食べ方をすることが多いのでしょうか
シュールストレミングは、生産者が作ってから消費者に食べられるまでの工程が特殊な食品です。そのため、基本的には過熱したり加工したりすることなく、そのままの味わいを楽しむことが多いですね。
はじめてシュールストレミングを食べた時の感想を教えてください
シンプルに美味しい食材だと思いました。缶の中で熟成されることで、ほかの魚の酢漬けや塩漬けといった食品とは明らかに違う魚の旨味、滋味があふれる味わいです。
「臭くてとても食べられるものじゃないのでは」という先入観があったのですが、実際に食べてみると「食べられる食材」を通り越して「美味しい食べ物」という認識になりましたね。
シュールストレミングと日本人の相性はいかがでしょう…？
日本では、シュールストレミングがとても臭い食べ物であり、どちらかというと笑いのネタになるような食材であるという認識を持つ人が多いかもしれません。
しかし、日本人もスウェーデンと近い魚食の文化を持っているので、シュールストレミングは思いのほか多くの人に受け入れられる味なのではないかと考えています。
スウェーデンのシュールストレミング事情
イベントでは、シュールストレミングの開缶デモンストレーションを兼ねたトークセッションも行われた。遠藤シェフへの取材の後こちらも拝聴し、シュールストレミングについてさらに以下の新情報を得た。
・シュールストレミングは決して「失敗から偶然できた食品」ではなく、美味しさを追求した結果生まれた食材である
・スウェーデンにはシュールストレミングを製造している会社が300社以上もあり、毎年味のテストをした結果が新聞に載る
・シュールストレミングの食べ方・食べる時期※は決まっていて、それ以外の調理法・時期に食べることはまずない
※発酵の進み具合の関係から、販売解禁は毎年8月第3週の木曜日と定められている。ワインみたい。
イベントの取材のほかにも、スウェーデンの民族楽器「ニッケルハルパ」奏者の小柏奈々（@nana_musik）さんにも、現地でシュールストレミングを食べた時のことを伺ってみたところ
・現地の愛好家は皿にシュールストレミングを乗せて、直接食べる。1回で12匹くらい食べる人もいる
・服に臭いがつく可能性があるので、おしゃれ着で食べるのは推奨しない
一度にたくさん食べるほど好きな人もいる（写真提供：小柏奈々さん）
との情報もいただいた。
遠藤シェフや、すでにシュールストレミングに親しんでいる方々からの詳細な情報を得て、シュールストレミングという食材への解像度がだいぶ高まった。「とにかく臭い」ことしか知らなかった状態から、「然るべき調理をすれば、ちゃんと美味しい食品である」という認識に変わったのだ。
こうなると「何が何でもおいしく食べてやるぞ」というやる気が満ちてくる。
筆者はイベントでシュールストレミングの正しい食べ方を教わり、また一足先にシュールストレミングを使ったメニューを味わったのだが、詳細は後のお楽しみ。さぁ、いざ開缶パートに突入だ！
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