令和の『うる星やつら』をベータマックスで録画した猛者に聞くマニアの意地「狂ってる人が生存してて安心した」

『うる星』という作品の影響力もすごすぎる
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2022年10月13日、36年ぶりに新作アニメが放送された『うる星やつら』。第1話の放送をなんといにしえのビデオ機器で録画準備している人たちが複数人いるらしいとの情報が出回り、Twitter上がザワついていた。

その中のひとり、映像の企画演出の仕事をしているTwitterユーザーの大西さん(@2012apocalypsis)は所有していたSONY製のビデオデッキ「EDV-9000」を整備し、見事第1話の録画に成功。ブラウン管テレビに録画内容が映し出されている様子を投稿している。

大西さんのビデオデッキは「SONY EDV-9000」。1987年発売時は295,000円だった

録画できたテープをソニー製のブラウン管テレビで再生する。楽しみ方まで粋だ

この「EDV-9000」は1987年にソニーから発売されたビデオ機器で、2002年に販売を終了している。30年以上前の古い機器が現在も動く状態と環境にあることに驚かされるが、さらにSONY製のベータマックスで録画しているというのも特筆すべきポイントだ。

「ベータマックス」とはSONYが販売していたビデオデッキおよび録画用のビデオテープの規格で、高画質であることが評価されていた。もうひとつのビデオ規格「VHS」と激しいシェア争いのすえに破れたのはベータマックスだった。

そもそもビデオデッキ本体、録画用のテープが高価だったこともあり、ベータマックスの機器を持っているのは一部の家庭(とマニア)。つまり、あえてベータマックスのビデオデッキとビデオテープで録画するという、いにしえのマニアがやっていた行為そのものを再現しているのだ。

今回、録画を成功させた大西さんに、ベータマックスへの思い入れと、30年以上前の放送時の思い出を語っていただいた。

ベータデッキとはどんな存在(モノ)か

いままで購入したベータデッキ(ビデオデッキ)について教えてください。

初めてベータデッキを買ったのは1984年で、製品は東芝さんの「TOSHIBA VIEWSTAR V-D5」です。

以降はSONYさんからで、1988年に「SONY EDV-7000」を、1990年くらいに「SONY EDV-9000」を購入したと思います。

ソニーの「ベータマックス」の価値をどう考えていますか。

ベータマックスの価値をわかりやすくお伝えすると、まずは圧倒的な画質の良さでしょう。

「SONY EDV-9000」には長時間録画モードが搭載されているのですが、標準規格である「βI」を3倍相当にした(長時間録画モードである)「βIIIモード」を使用したとしても、VHS(のビデオデッキに搭載されている)3倍モードと比較し、映像が断然きれいだと感じました。

特にベータマックス史上、最後に登場した規格「EDBeta」の画質(水平解像度)は圧倒的だったと思います。

他にも早送り・巻き戻し等といった、再生動作の切り替えが早く、ビデオデッキの使用にストレスがありませんでした。

「SONY EDV-9000」を購入した頃は、すでにVHSが世間を席巻していましたが、ベータマニアの意地でひたすらベータマックスを使い続けていた感じがありますね(笑)。

※()内は編集部補足

36年前はどんな方法で『うる星やつら』を録画していましたか。

36年前はさすがに高価なビデオデッキは買えなかったので、ラジカセを使ってカセットテープに音声を記録していました(笑)。

高校時代にアルバイトでお金を貯めて、1984年の春にベータデッキを買い、映像として録画できるようになりました。

他にもベータマックスで録画する人がいることについて、どのように思われましたか 

世の中にまだ多数の「狂っている」方が生存しているとわかり、非常に安心しました!

余談ですが、1984年の新聞広告で、SONYさんは「ベータマックスはなくなるの?」と掲載していました。

その文章の答えは「いいえ。2022年でも、ベータマックスでうる星やつらを録画しています」になるのではないでしょうか。

ただ、最終回までデッキが壊れなければよいのですが…(笑)

SONYではベータマックスに関するメーカー修理対応は終了している。第2話も順調に録画できているようだが、最終回までビデオデッキが生き延びることを祈りたい。

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