衣装からメイク、楽器、お菓子まで奈良時代の華やかな宴を完全再現!参加者に話を聞いた

天平人としてのスキルが高すぎる
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「これは私たちの壮大な趣味ですw」との言葉と共にTwitterに投稿された、荘厳でありながらあでやかな宴の画像。投稿者の中田文花(@nakatabuncho)さんは、"趣味"として仲間たちと「梅花の宴」を再現する催しを行ったそう。

奈良時代の衣装で龍笛を演奏する中田文花さん。笙を演奏している方も

「梅花の宴」とは、奈良時代の天平2年(730年)に大宰府の長官であった大伴旅人が中国文人に影響を受け開催した、梅の花を題材に短歌を詠み比べた宴会のこと。このとき詠まれた短歌は万葉集にも収録されている。

※奈良時代の最盛期にあり、唐の影響を受けた仏教美術の黄金時代で、この時代の文化を天平文化と呼ぶ。

ももしきの大宮人は暇あれや梅をかざしてここに集へる

出典:万葉集 第10巻 1883番歌・作者不詳

訳:宮廷に仕える大宮人は暇を持て余しているのだろうか、梅を頭にかざしてここに集まってきている(諸解釈あり)

 

国の特別史跡・特別名勝の平城京左京三条二坊宮跡庭園を借りて開催

中田さんは日本画家や歌人であるほか、天平文化を愛する天平人としての活動も行っている。今回開催した「梅花の宴」について詳しい話を聞いた。

「天平人のたしなみとして個人的に雅楽を学んでいます」

参加者はどのように集まった方々なのでしょうか?

宴を主催された銀とき子(@tokikogin2)さんがお世話されている奈良女子 大学古代衣裳同好会(@nwukodaiishou)に所属する学生さん10名程と、天平衣裳愛好家の友人達が中心メンバーになってます。

自分で髪を結わえたり衣裳を作ったり、さらに雅楽もできたりと天平人スキルの高いメンバーです。

宴ではどのようなことを行いましたか?

万葉集の朗唱や、舞を楽しみました。 また古代菓子の説明もありました。

ただのコスプレではなく、奈良時代を体感することを目的としています。奈良の地には写真のような素晴らしい復元建築があるので撮影も楽しめます。

衣装やメイクはどのように準備しましたか?

衣裳は全て私物なんですよ。基本的に着物をリサイクルして自分達で制作しますが、最近の中国で時代衣装(漢服)ブームが起きているので通販で購入することもできます。しかし奈良時代らしい布地に出会うのがなかなか難しいです。そもそも奈良時代の装束の知識が必要で、毎年「正倉院展」を見て勉強しています。

メイクの特徴としては額に花鈿(かでん)という文様を描きます。当時のメイクでは唇は小さく、頬紅は濃く、白粉も塗っていたのですが、今回は現代風のナチュラメイクです。
※中国の漢民族が起源の民族服。日本の飛鳥時代・奈良時代の和服は漢服から模倣されたと言われている。

龍笛はどのように習得しましたか?

私は天平人のたしなみとして個人的に雅楽を学んでいます。奈良時代に伝わった音楽ですので、こういう宴に最もふさわしいものです。 参加者に神職さんもおられて、もちろん雅楽を演奏できます。

雅楽の楽器は、各雅楽団体やカルチャーセンターでも習えるんですよ。

今回の宴では雅楽の演奏や舞だけでなく、奈良時代に食されていた古代菓子のお膳も振舞われたそう。

形も色もさまざまな古代菓子。古代食の専門家が監修のもと制作したそう

古代菓子のお味はいかがでしたか?

古代菓子をご研究されている奈良女子大学の前川佳代先生に作っていただきました。牛乳を煮詰めた「蘇」が有名ですね。味はほんのり甘いチーズのようです。 揚げ菓子もさまざまな形があります。 奈良時代の人々と同じものが食べられるなんて、こんなに楽しいことはありません。 

趣味と呼ぶにはあまりにも本格的な宴開催の裏には、楽器の練習や衣装の研究・制作など、日々の積み重ねがあるようだ。

天平文化に興味がわいた方は、古代スイーツや天平メイクが気軽に楽しめるイベント「平城のほよとき」(@naranotoyohoki)が2023年3月25日・26日、平城宮跡「いざない館」で開催されるので、参加してみては。

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