「空耳アワー」全賞品を獲得した投稿者の『タモリ倶楽部』への思い「採用は600通送ってようやく1通」

「僕の生きがいのひとつでした」
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カルト的人気を誇るバラエティー番組『タモリ倶楽部』が、2023年4月1日の放送を最後に40年の歴史に幕を下ろすと発表された。

その発表を受けて、番組の人気コーナー「空耳アワー」にネタを投稿し続けていた猛者が、Twitterにこれまで獲得した賞品の画像を投稿し話題を呼んでいる。

「空耳アワー」とは、番組内で30年続く名物コーナーである。主に洋楽の歌詞が日本語のように聞きとれてしまう現象を「空耳(そらみみ)」と呼び、視聴者から募集。投稿作品はイメージ映像とともに放送され、これを司会者のタモリと安斎肇が審査。面白かった投稿には、審査基準に見合った賞品が贈呈される。

手ぬぐい→耳かき→Tシャツ→ジャンパー→特製ジャケットの順に獲得難易度が高い

いととと/ITOTOTO(@itototo1010)さんは「空耳アワー」への投稿を8年続け、手ぬぐい、耳かき、Tシャツ、ジャンパー、特製ジャケットのすべての賞品を獲得したツワモノだ。なかでも、

せっかくなので、ずっと誰にも見せずに楽しんでいたNIGOさん特製の空耳ジャケットの表面も載せようと思います

…とツイート文にあるように、特製ジャケットは数年に1度しか獲得者が出ないほど入手困難なことに加え、番組内では表面(おもてめん)が公開されていないという激レア品なのだ。

コーナーによく登場するNIGO氏デザインの特製ジャケット。胸元に空耳のワッペンが付いていた!

一連の投稿には、空耳ファンのTwitterユーザーから「キングオブ空耳アワラー!!!」「うおー!こんなデザインだったとは…ありがたやー」と感嘆の声が上がった。

賞品をコンプリートするという偉業をなしとげた人が『タモリ倶楽部』終了が決まった今、何を思うのか。いとととさんに話を聞いた。

ネタ探しのために興味のなかった洋楽を聴くように

「空耳アワー」への投稿を始めたきっかけを教えてください。

高校1年生の頃、親が録画していた「空耳アワード2013」(※)を見て、「こんなに面白い企画があるのか」と衝撃が走り投稿を開始しました。

実は中学生の頃にも一度「空耳アワー」を見たことがあるのですが、イマイチ企画の趣旨が分からないまま僕の中で忘れ去られていきました。 ちなみのその放送回では約4年ぶりにジャンパー獲得者が出たのですが、当時の僕はその価値を理解していなかったので、歴史的な瞬間に立ち会えた感覚もなかったです。

でも、今考えると初めて見た「空耳アワー」がジャンパー贈呈回だったというのは何か運命的なものを感じます。

※番組に投稿された空耳の年間最優秀作品を決める、年に一度の特別回。

いとととさんはリプライでのリクエストに応え、これまでに採用された空耳作品と贈呈された賞品もツイートで紹介。8年に渡り19作品が採用されるという成績を披露した。

おおよその採用率はどれくらいですか?

これは大げさかもしれませんが、体感だと600通送ってようやく1つ採用される感覚です。こう聞くと採用は狭き門だと思われそうですが、 僕はほかの常連投稿者に比べると、投稿数に対して採用率がとても少ないんです。

全然聞こえないような空耳を面白がってたくさん投稿したり、テレビでは絶対に放送できないような空耳を、スタッフが楽しんでくれたらいいと思って送ってみたり。30〜40個ほどの空耳を封書でまとめて送る、1日に100枚ほどハガキを投稿するなどもしましたが、そのほとんどが不採用でした。
そうこうするうちに、ただ単に聞こえるだけで面白味がないと思っていた投稿作「ならできないじゃない!」(※)で、同コーナーでも3年ぶりとなる特製ジャケットを獲得してしまいました。うれしい半面、今までの自分は何だったんだ? という結果でした。

※元ネタはPainkiller「Scud Attack」

ネタの探し方や採用されるコツを教えてください。

音楽にさほど興味がなかったのですが、「空耳アワー」のネタを探すために洋楽をたくさん聴くようになりました。

空耳の探し方は、とにかく日本語に聞こえる箇所を根気強く探すのが一般的ですが、僕は空耳には聞こえない箇所でも何度も聞いて無理やり日本語にして投稿していました。

たとえば、2014年に採用されたThe Beatlesの『Ticket To Ride』のサビ部分の「静かな地域つらい(×3)死んどけ」というネタ。元の歌詞が「SHIE DON'T CARE」なのでどう日本語に変換しても「しどんけ」にしか聞こえなかったんです。なので僕は「ん」の位置を入れ替え、「死んどけ」にして投稿することにしました。 これが功を奏したのか、番組でもウケてタモリさんから耳かき贈呈の評価をいただきました。これはうまくいった例で、実は採用されるコツがいまだにわかりません。

僕は採用されなくても面白がってずっと投稿したので、番組側が根負けして僕の「空耳」を定期的に採用してくれたのかもしれませんね。  

特製ジャケットの表面(おもてめん)を見た時の感想を教えてください。

この表面を知っているのはタモリさんと安斎肇さんを含めた『タモリ倶楽部』の関係者くらいしかいないんだな…と思うと、とてもうれしかったです。

「これを着て外を歩くのは勇気がいるな…」とも思いましたが、うれしかったので調子に乗って何度か着用して外を出歩きました。楽しかったです。

賞品コンプリートの可能性はいつ頃から感じましたか?

2015年に特製ジャケットを獲得した時に「もしかしたらこの調子でいけば賞品をコンプリートできるかもしれないな」と思いました。

しかしその後、残り1つのTシャツがどうしても手に入らず、呪いがかけられたような感覚でした。投稿ペースも落ちてしまい「もうこのままTシャツなしで終わるのかな」と思いました。

諦めかけていた2019年に「空耳アワー」で自作動画での投稿が解禁されました。「これはチャンスだ!」と思い、今まで採用されなかったけれど個人的に好きな空耳の映像を何個か作り、投稿しました。

そして2022年、映像化しやすかったから作っただけでさほど大した空耳だと思ってない作品が採用され、Tシャツを獲得してしまいました。 しかも、動画投稿での採用なので新たな賞品としてメガホンもセットでもらえました。 メガホンまでコンプリートした投稿者は僕が初めてなので、これはかなりうれしかったです。

「8年かけてようやくコンプリートしたのか…」と思うと、今までの空耳投稿の思い出が走馬灯のように流れていき、とても感慨深くなりました。

番組終了後も空耳は探しますか?

今も、探す気がないのに見つけてしまうことがよくあります。純粋に曲を聴きたいだけなのに…職業病ですね。 なので、僕は今後も空耳は探すと思いますし、良いものが見つかればどこかで発表していきたいです。 「空耳アワーよ永遠に……」

空耳を発見してしまうことを「職業病」と呼ぶいとととさん。この8年間に、本人にしかわからない数々の困難や歓喜の日々を過ごしてきたのであろう。

もう誰にも塗り替えることのできない偉業を達成したいとととさんに、大きな拍手を贈りたい。

※2023/3/8 回答内容の表現を一部修正しました。

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