「ついにその日がやってきた!」スコールの中フタバガキの実が舞い散る様子に植物研究者も大興奮

人間が襲撃されるような迫力に圧倒される…!
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激しいスコールの中でフタバガキの実が舞い落ちるという、珍しい瞬間を捉えた動画がTwitterで話題だ。

雨にも負けず数千の実が舞う

「ついにその日がやってきた!!」と興奮気味に動画を投稿したのは、2010年からタイに住み、植物や生物の観察を続けている山東智紀(@TomokiSANDO)さん。

これまでの観察経験から、実が舞い落ちるタイミングを見計らって現地に撮影に出向いたそうだ。

東南アジアを中心に分布する高木・フタバガキの実は、プロペラのようなガクを持ち、竹とんぼのようにくるくると回転しながら落ちるのが特徴だという。

上の動画は種の飛散する様子が分かりやすいようスロー加工されているが、本来の落下速度をおさめた別バージョンの動画を見ると、激しく打ち付ける雨の音とともに、撮影者を襲撃するかのような迫力で飛ぶ実が観察できる。

実の羽となる部分は撥水するため、雨の中でも飛べるそう

一連の投稿にTwitterユーザーからは、「素晴らしい躍動!壮観です!」「すごい!本当に降ってくるんですね!」と感動する声が集まった。

動画を撮影したときの状況やフタバガキの実について、山東さんに詳しい話を聞いた。

興奮で大声をあげたい衝動を抑えながら撮影した

動画はどのように撮影されたものですか?

2023年3月下旬に、タイ東北部で撮影したものです。

タイ東北部はサバナ気候で雨季と乾季があり、11月から4月末頃までが乾季です。フタバガキは乾季の初めに開花・結実し、時間をかけて成熟したあと乾季後半から雨季初めのスコール前の大風で舞い散ります。

撮影した日は午前中は晴れていましたが、正午頃から雲行きが怪しくなりはじめました。大粒の雨が落ち始めたので「これは舞い散る」と思い、現場に急行しました。

今年は1か月間まったく雨が降っていなかったので、多くの実が木の上についたまま種として残っており、タイミングよくすごい量の飛散に遭遇することができました。

実が飛ぶ光景を見た感想を教えてください。

樹高40m近い木々の上から、スコールの大風にあおられて一斉に舞い散る様子は、ただただ圧巻でした。 風雨でびしょ濡れになりましたが、興奮で大声をあげたい衝動を抑え全身に鳥肌を立てながら撮影しました。

「当たると痛いのでは」「傘に穴が開くのでは」というコメントもありましたが。

タイではスコールの風雨の中、人々は出歩かないので通常ぶつかることはありません。仮に晴れた日に落ちてくる実にぶつかったとしても、羽根はしなりますし、大きさも3cmほどしかないので痛くはないです。曇りの風の強い日だとバイクの人は当たると痛いかもしれませんね。

実は落下点に根付くのでしょうか。また、どのくらいの距離を飛びましたか?

森の中だと飛散した実は雨季の雨水と蓄えた栄養分を使い、1週間程度で速やかに発芽して根付きます。今回、実の飛散した方向には水田が広がっており、多くが水没して死んでしまいます。運良くあぜ道などに落ちたものは無事に成長できるものもあります。

水田に落下してしまったフタバガキの実

土に落下しても踏まれたり日射で乾燥したり、生き残るのは難しいという

飛散した多くの種子は、親木から300mぐらいの範囲に落ちていました。しかし、中には上向きの風にあおられて高く舞い上がったものもあったようで、1km先に落ちたものも少なからずあったようです。

貴重な動画をシェアしてくれた山東智紀さんは、植物や生物学に広く興味を持ち、日々の観察で見つけた木の実などから約300種を厳選した「世界のふしぎな木の実図鑑」を2020年に刊行している。

変わった木の実に興味を持った方は、ぜひこの図鑑をチェックしてみては。

 

 

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