一本一本職人の手で丁寧に描かれる金のラインが美しい…伝統技術『金彩』は工程や歴史まで輝かしいものだった

思わず見惚れてしまう
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画像だけでは伝わりきらない、伝統技術の繊細さを写した動画がTwitter上で話題となっている。

1本1本が驚くほど真っ直ぐに描かれている。ぜひツイートの動画で作業の様子を見て欲しい

投稿したのは京都で金彩工房を営む、田中金彩工芸(@kinsai_hideto)さん。

動画では、専用の道具を用いて一本一本細やかな線を描き入れながら着物に金彩を施す様子が伺える。

金彩とは、京友禅の華やかさを表現するのに行われる装飾工程の一つ。田中金彩工芸さんでは、四代にわたる伝統技術にて手作業で行っているとのこと。

伝統技術である金彩作業について、その過程や受け継がれる技のことを詳しく伺ってみた。

材料や道具の調子が、仕上がりに繋がる

どんなことに気を配りながら作業されているのでしょうか。

京友禅という着物を作る仕事は、基本的に分業して制作されています。私たち金彩職人はその中の最終加工に近い仕事を担っており、生地の色や柄の色が染め上がってからの、最後の化粧をする立場になります。

染め上がった商品の風合い、着用されるであろう場所などを想定して加工するよう気を配っています。

技術的な部分では、材料や道具の調子に最も気を配ります。

使う道具や材料は経年で変化していくので、昨日調子が良かったものが次の日には悪くなっていることも。道具や材料の調子が悪ければ技術の良し悪しに関係なく仕上がりに悪影響を与えてしまうので、それにいち早く気付き、まず道具や材料を整えることが大事だと考えています。

動画の「金線描き」という作業ができるようになるまで、どういった訓練をされるのでしょうか。

金線描きは筒の中に入れた糊を絞り出しながら線を描く技法で、凄く大雑把に言えば「ケーキのホイップクリーム」や「アイシングクッキー」などの技術とやっていることは同じです。書く際には鉛筆やボールペンなどの生活上で使う物とは違い、特殊な握り方、描き方をします。

訓練の仕方は各職人によってさまざまだとは思いますが、田中金彩工芸では以下のように訓練をしていきます。

手順1、紙の上にただ単純な線を描く練習をしながら筒を握る感覚をつかむ

手順2、紙の上に均一な糊の量と線の太さを描く練習

手順3、紙の上で安定した線を描けるようになったら、できるだけフラットな生地を用意して線の練習

手順4、徐々に生地の表面に地紋があるものや凹凸の激しいもので練習を重ねる

手順5、ある程度の安定感を得たら適当な柄物の生地で柄に沿って線を描く練習をする

ここまでの訓練を重ね、初めて商品に加工を施せるようになります。それからは仕事をこなしていく中で練度を上げ、表現の幅を広げていくことになります。

四代続いているそうですが、何歳くらいから修行を始められるのでしょうか

今回動画の作品を加工している四代目は、大学卒業後から本格的な修行に入っております。

しかし、気付けば家の手伝いやバイトのような感覚で子供の頃から触れていたので、明確ではありません。

華やかな伝統文化を維持する裏側には、職人さんの厳しい修行と、それによって培われる繊細な技術がある。受け継がれる伝統工芸の不変的な美しさに触れたい人は、ぜひ田中金彩工芸さんのTwitterを鑑賞してみては。

記事中の画像付きツイートは許諾を得て使用しています。