2016年7月15日

ニンジャスレイヤー:ネヴァーダイズ 【6:アクセラレイト】 #3

ネオサイタマ電脳IRC空間 http://ninjaheads.hatenablog.jp/ 書籍版公式サイト http://ninjaslayer.jp/ ニンジャスレイヤー「はじめての皆さんへ」 http://togetter.com/li/73867
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ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

黒い通路の陰で、しばしニンジャスレイヤーは身を潜めていた。つい今しがたの正体不明の大地の鳴動は錯覚であり、何らかのテクノロジーによって作り出された地球と同様の重力は確かなものだ。錯覚だとすれば、それをもたらしたのは何だ?(((ジツを警戒せよ)))「違う」直感が違うと告げている。

2016-07-15 15:26:05
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ニンジャスレイヤーはニンジャ第六感を鋭敏化させ、注意深い移動を開始した。激しく損傷した赤黒の装束は再生しつつあった。肉体は万全ではない。だがこの月基地で殺すべきニンジャはそう多くはない。ハタモト数名を排除し、アルゴスを破壊し、ネオサイタマ蹂躙者アガメムノンを殺す。そして帰還する。

2016-07-15 15:30:03
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

所詮この場所は城塞でも迷宮でもない。このまま突き進み、ケリをつける……ブブブン。リラグゼーション音楽がつんのめり、照明がコンマ数秒揺らいだ。ニンジャスレイヤーは眉根を寄せた。脇道の通路に暖かいオレンジの光線が灯り、モールス信号めいて明滅したのだ。罠か?だが彼はそちらへ向かった。

2016-07-15 15:34:31
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

橙色の光は急かすように点滅した。ニンジャスレイヤーは走り出した。碁盤の目めいた複雑な交差通路に到達する。左。前。右。前。左。もはや光のガイドだけが頼りだ。途中、強化ガラス窓越しに、重力制御の失われた室内を漂う無残な宇宙服姿のミイラを垣間見た。やがて彼は「寿司」のノレンに到達した。

2016-07-15 15:39:15
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「スシ……!」(((スシだと?)))ニンジャスレイヤーは眉根を寄せた。「イヤーッ!」前転からのジュー・ジツ構えでダイナミックエントリーした彼は、ごく狭い人工庭園枯山水の只中に己を見出した。閉鎖空間に作られた郷愁の断片か。石灯籠のカンノン戸が圧縮空気を吐いて開いた。

2016-07-15 15:43:55
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

石灯籠の中には……ナムサン。銀色のパックが収められている。ニンジャスレイヤーは素早く開封した。中から、チップ状に干からびたバッテラが数枚、手のひらにこぼれ落ちた。(((愚かな。さような挑発にかかずらうでないぞ)))「待てナラク」ニンジャスレイヤーはチップを口に含んだ。……これは。

2016-07-15 15:47:00
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

たちまち彼の口中に芳醇なバッテラ・スシのフレーバーが溢れた。宇宙!極めて高度な技術でチップ状に圧縮フリーズドライされた、代用タンパクでもオキアミでもない、本物のバッテラ・スシであった。ニンジャスレイヤーは袋の中のチップ・スシを全て平らげ、もう一袋は懐におさめた。力の源が染み渡る。

2016-07-15 15:52:09
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

そして、おお、彼はあらためて、いかに絶望的な強行軍に身を置いてきたかを実感した。月基地までの道のりは繰り返し死んでもおかしくない荒業であった。石灯籠の下段には蛇口とユノミがあり、彼はそこからマッチャを汲んで飲んだ。赤黒の装束が再生を完了した。視聴覚から薄い膜が払われたようだった。

2016-07-15 15:57:18
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

この場所へ彼を導いたガイディング・ライトの正体やいかに?ニンジャスレイヤーは天井を、足元を、戸口を念のため警戒した。応えるように、錆び付いた小型庭師ドロイドがぎこちなく動く枯山水の石碑表面が液晶モニタを灯した。『無事に辿り着いた事、まずは喜ばしく思います』聞き覚えのある声だった。

2016-07-15 16:02:19
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

モニタにはアルビノの男が映っている。エシオ。場所は殺風景な白い部屋だ。彼の方からこちらは見えていないようだった。ビデオレターめいて、彼は手探りでカメラを確かめた。『疫病により、一時的に電子ネットワークの水が濁り、交信が可能となっています。何秒間この状態が維持できるかわかりません』

2016-07-15 16:04:56
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「スシはオヌシか」『歓待はお気に召しましたか。弊社はそもそもの成り立ちがメガトリイからの分社。いわば月基地は古巣……とはいえ残念ながら、力を貸せる事といえば、このスシがせいぜいです』「十分だ。感謝する」ニンジャスレイヤーはアグラし、スシの栄養素が引き出す回復力を最大限に高めた。

2016-07-15 16:11:28
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

映像にバチバチとノイズが走り、白い部屋は幾つかのネオサイタマの定点監視カメラ映像や航空爆撃機から送信されたとおぼしき画像記録をシャッフルした。コーバン、テンプル、ライブハウス「ヨタモノ」、カブキチョで炊き出しを行うヤクザ、トコシマ署、カスミガセキのローニン・リーグ・アジト。

2016-07-15 16:18:02
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

各地のシェルターは、雑多なバリケードや目隠しの布で思い思いに守られている。いかにもおぼつかない佇まいだった。最後にマルノウチ・スゴイタカイビルの慰霊碑が映し出された。集まる人々の姿が、灯りが、雪が。そして白い部屋の映像が戻った。『ある程度リアルタイムの情報です』エシオが言った。

2016-07-15 16:27:33
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

『示し合わせた動きではないが、ある意味でこれは自然な反応です。望まぬ改変に対する拒絶。人の営み、世界の摂理、両方の側面で今、せめぎ合いが起こっている』エシオは椅子の上で足を組み替えた。その脇には杖がある。『アマクダリによる「再定義」に関し、推論がまとまりました。伝えておきます』

2016-07-15 16:33:31
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ニンジャスレイヤーは深く呼吸した。エシオは語る。『シュメール神話をはじめとする「冥界の七つの門」の古代記憶、それに由来するUNIXのOSI7層モデルの存在からも明らかですが、再定義は7段階のプロセスを踏みます。先ほど、第2段階のプロセスが完了しました』先ほどの、地鳴りの錯覚。

2016-07-15 16:38:37
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

『オヒガンのケオスから力を引き出す摂理が本来のインターネットです。これに、人工的に構築された表層的な……いわば「擬似インターネット」を覆い被せて遮断し、不確定要素の一切を排除・管理する。それがメガトリイ主導の電子魔術的プロジェクトです。鷲の一族はこれを完遂しようとしている』

2016-07-15 16:49:33
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

エシオの後ろ、どこかから歩いてきた女が卓上のポットからマグカップ二つにチャを注ぎ、退出した。『オヒガン由来の事象が切り離されれば、当然、弊社の営みは無に帰する。承服できないプロジェクトです。残念ながらプロセスはつつがなく進行しており、予断を許さぬ状況です』「アルゴス在る限り」

2016-07-15 16:56:21
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

『然り。改変の過程としてまずオヒガンへのアクセスが行われ、黄金立方体が視認できる状態となり、磁気嵐が消滅しました。オヒガンの影響は現在、プロセス開始以前よりもむしろ深い。しかし第4段階までプロセスが進めば、そこが折り返し地点となり、今度は本格的な切断が始まることになります』

2016-07-15 17:06:25
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

『次に機能修復される第三の門……即ち、ネットワーク層、アミュレットの門、アポフィスの門、炎の泉の地……かつてヤマト・ニンジャがヤリとカラテキックで破壊し押し通った門としてもよく知られていますが……この段階がピークです。以後、非常に好ましからざる状況に向かって収束が始まるでしょう』

2016-07-15 17:09:14
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「……ニンジャはどうなる」『ニンジャソウルはオヒガン由来の存在であり、一般的なニンジャソウル憑依者は改変を通し多大な負の影響を受けます。アガメムノンらはアルゴスと接続し、論理ニンジャソウルによってソウルの損傷を十全に補います。アマクダリ・セクトの上位存在には影響は少ないでしょう』

2016-07-15 17:14:40
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ニンジャスレイヤーはアグラを解いて立ち上がった。身体が軽い。スシ栄養素がカラテと結びつき、血中を駆け巡るのがわかる。これで戦える。「奴は何故そこまでする」『世界支配は本来得て然るべき権益と考えているのでしょう。その為に力を尽くす。憶測ですが』ノイズが激しい。『本人に訊いてみては』

2016-07-15 17:28:13
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

映像がノイズに呑まれた。声が遠い。接続可能時間の限界か。ニンジャスレイヤーは一礼し、枯山水を退出した。通路をオレンジの光が一瞬だけなぞり、消えた。あとには穏やかな音楽だけが残った。ニンジャスレイヤーは走り出した。前方にフードを目深に被った存在が現れ、消える。死神は止まらず駆ける。

2016-07-15 17:34:20
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

道中に罠はない。赤黒の風は、やがて前衛的なニンジャ彫像が並ぶ回廊に差し掛かった。捻れた姿の者たちが、威圧的に、侮蔑するように、ニンジャスレイヤーを見下ろしている。「イヤーッ!」走りながら死神は竜巻めいて回転した。走り過ぎる彼の後ろで、彫像がボキボキと音立てて崩れ、砕けていった。

2016-07-15 17:37:32
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