フォビドゥン・フォレスト:プロローグ~1話前半まとめ

プロローグ~前半3までのまとめです ●高校生が妖怪と戦ったりする現代ファンタジーです ●キャラ紹介・設定紹介などは1話完結後に、 続きを読む
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フォビドゥンフォレスト@カクヨム投稿中 @fbd_forest

当アカウントは、凍結中の @lastingarrow と世界観を同じくするツイッター小説「フォビドゥンフォレスト」の連載アカウントです。 @lastingarrow は当面凍結を継続しつつ、新たにフォビドゥンフォレストの連載を始めていきます。

2016-07-01 01:18:44
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当面は月に1~3話(各3~6セクション前後)を目標として投稿予定です。本日は10~20ツイートを目安に投下し、次回投下は日曜午後以降の予定です。実況タグの類は1話完了後以降に、需要を考慮してご案内予定です。

2016-07-01 01:21:13
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「かあさま、どうしてもりにはいってはいけないの?」 「いいかい。風科(かざしな)様の森の奥にはね、根の国への入り口があるの」 「ねのくに?」 「死んだ人が行く国のこと。お祖父様もお婆様も、もっと前のご先祖様もそこにいるのよ」 「じゃあ、あいにいってみたい」

2016-07-01 01:27:05
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「いいえ。とんでもない。根の国は恐ろしいところよ。冷たくて寂しくてなんにもないのよ。森の中にはそんな根の国から来た妖がたくさんいるの。この間はお前も鳥姫様の戦人樣に助けてもらわなかったら、食べられてしまうところだったんだよ」 「…こわいよかあさま」

2016-07-01 01:36:29
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「大丈夫よ。森の奥にさえ入らなければ風科の神様たちがお守りくださるわ…さあ分かったらもう寝なさい」 「まだあかるいよ」 「今は仕方がないでしょう。大神様が頑張っていらっしゃるのだから。ほらお姉ちゃんも来なさい」 「…大きなお星さま」

2016-07-01 01:40:52
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「何言ってるのこの子は。今は星なんか見えるわけがないでしょう。」 「…でもほら」 「もう、この子は…え……星…?…なに…?」 「…きれい…とっても…」 見上げる白い空には、夕日の如き赤い光が徐々に広がっていった。

2016-07-01 01:44:24
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夜明け前の深い闇。寒さがコート越しに少年の肌を刺す。鳥居の前で軽く一礼する。明るければ「鳥姫神社」と掘られた石碑が隣に見えただろう。鳥居をくぐり抜け石階段を登る。足元からぱきぱきと、薄い霜が割れる感触が届く。

2016-07-01 01:54:08
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うっすらと木と水気の匂いが漂う参道の両側には白樺の林。天まで届くようなその樹高が作る影が闇をより濃くする。足元を照らすのは、木々の隙間から漏れる月と星の光のみ、足場の奥行きは三十cm程度しかなく危険極まりないが、照明一つ持たず殆ど足元すら見ずに慣れた足取りでやや足早に登る。

2016-07-01 02:01:50
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ニ百段ほどの階段を登り終える。うっすらと見える石の路を歩き、手水舎に着くと、手袋を脱ぎ柄杓を取る。水面の薄氷を割って水を汲み、左手に流す。一瞬だけ打ち震えた後は、流れるような動作で右手を洗い、口を漱ぎ、柄杓を洗う。そして急いで手を拭き手袋を着け両手を擦り体を抱き再び打ち震える。

2016-07-01 02:08:40
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カイロを擦り寒さを落ち着けると、社殿へ上がる。賽銭箱に五円玉をそっと滑り込ませ、静かに素早く参拝を済ませる。社殿を横から降りて社務所前を横切り、来た道と逆側、神社の奥の階段を下りる。先程の半分ほどの長さを、音の立たない程度に素早く掛け下りる。

2016-07-01 02:12:34
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更に1分ほど歩くと、常夜灯の明かりに浮かび上がる民家…宮司の家が見えてくる。裏口から中へと入って行く。物音を立てずに和室の廊下を抜け、1階の洋風の寝室をゆっくりと開ける。橙色の薄明かりの下、ベッドの上には一人の少女。暖房が少し暑かったのか、掛け布団と毛布は胸の下までずれている。

2016-07-01 02:16:51
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濡羽色の髪が白い掛け布団の上に流れる。華奢ながらも肉付きの良いボディラインは厚い冬用のパジャマ越しでも隠しきれない。 少年は布団を腹の辺りまでさらに下げてから、少女の肩を片手でそっと掴んだ。 「おい、瑠梨もう4時半だぞ。起きろ」 掴んだ肩を軽く揺すると、黒髪が波打った。

2016-07-01 02:28:33
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「う~ん。はる君おはよう…おやすみなさい…」 瑠梨と呼ばれた少女が眠たげに目を擦りながら身を起こし…再び横になった。 「いや起きろって」 「…もう真っ暗だよ…?」 「そのボケもう5回は聞いたぞ」 「やだなぁはる君。これで7回目だよ」 「また数えてたのかよお前は…」

2016-07-03 21:55:31
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「いい加減にしないと今度から乳揉んで起こすぞ?」 布団と背中の間に手を差し入れて瑠梨を起こしながら、挑発的に言う。 「いいよ?」 「マジかよ」 思わず息唾を飲み込む。いや冗談だとは分かっている。分かっていてもつい視線はそこに、華奢な体の割に大きい膨らみに向いてしまう。

2016-07-03 22:05:41
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下着の性能か上着の錯視効果なのか、男である彼には今一つ理屈は分からないが、瑠梨の胸は大きさの割にはあまり目立たない。いわゆる着痩せという奴だ。今も暗さとぶかぶかとしたパジャマでよく分からないが、彼女が稀に見せる「全力」を知っている少年としては、どうしても意識せざるを得ない。

2016-07-03 22:11:45
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「ただし、はる君を信頼して私の所に通してるお父さんたちを裏切れるんならね」 「ちぃっ!くっそぉぉ…瑠梨ぃぃっ…卑怯なぁ!」 少年が静かに唸りながら頭を抱えオーバーに振り乱す横で、瑠梨はあっさり起き上がり、天井近くの神棚に向けて礼をする。 「おはようございます」

2016-07-03 22:22:17
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「…ってお前、あっさり起きやがって」 数秒前までのぼんやりはどこへやら、瑠梨は寝起きとは思えぬほど美しい所作で礼拝を済ませていた。先に清めなり禊なりをすべきという意見もあろうが、彼女の場合は後で神社で朝礼を行うので、まずは起床の挨拶から行うのだ。

2016-07-03 22:36:33
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「うん。大丈夫だよ。起きようと思えば一人でも起きれるんだから」 瑠梨は胸を張ってみせる。 「ほんとかよ…こないだ俺が来れなかった時は寝坊しかけてって聞いたぞ」 「もう…お母さんでしょ…。大丈夫だよ。あの時はたまたま色々重なって疲れてただけだから」

2016-07-03 22:53:54
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「だからはる君も、無理に来てくれなくても良いんだよ」 「いいんだよ。どうせついでだしな」 それは嘘ではない。早朝からの別の用事もあるのだ。ただし彼の家から見て、この瑠梨の家とは逆方向での用事だが。

2016-07-03 23:09:01
フォビドゥンフォレスト@カクヨム投稿中 @fbd_forest

そういう訳もあるので、いつまでもここに留まっている訳にも行かない。そもそも瑠梨も着替えて朝礼の支度をしなければならない。 「んじゃ、また後でな」 部屋を後にする。 「え?お茶くらい飲んでいきなよ?」 瑠梨がドアから体を出し…寒さに震え、頭以外を戻す。 「水筒もあるからいいんだよ」

2016-07-03 23:18:15
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「昨夜、忙しくてアイツに付き合ってやらなかったからな…急がねぇと襲ってきかねねぇんだよ」 「寒いのに元気だよねぇ、はる君のとこの子たち」 瑠梨は両腕で体をかき抱き、ややオーバーに震えてみせる。 「元気どころじゃねぇだろ…外に出しても冬眠するフリもみせねぇんだぞアイツら」

2016-07-04 02:47:07
フォビドゥンフォレスト@カクヨム投稿中 @fbd_forest

二人が話題にしているのは、彼が面倒を見ている虫の話である。夏に活動する虫でも、屋内で暖気すれば冬眠しないのは他所でも有り得ることだが、彼の虫の中には氷点下の屋外でさえも元気に動き回るものまでいる。最早本当に昆虫なのかも疑わしい。学者ならもっと詳しく話を聞きたくなるところだろう。

2016-07-04 02:53:22
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しかし二人にとっては日常会話の範疇である。もう2・3言だけ交わすと、少年は家の外に出て、元来た方向とは逆の森の奥へと進んでいった。瑠梨はコートを羽織りながら、途中まで見送ると自室に戻り、巫女服へと着替えた。

2016-07-04 02:53:42
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