1日1小梅さんまとめ（2016年7月31日②）

はおこっこ @haoblackj

#1日1小梅さん 西住体制から逸見体制に移行して数日。引継は無事に終了したらしく、新しい車長らも慣熟訓練に明け暮れている。逸見体制の女房役として参謀次長（参謀本部長の任は隊長経験者がつき、その後参謀次長が繰り上がる）を預かることになった私も、参謀本部の組織の掌握に勤しんでいた

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@haoblackj 隊長経験者とはいえ、参謀本部長はすでに引退した先輩の収まるポストだ。参謀次長が実質部隊長の首席幕僚として働くことになるのであれば、逸見＝赤星体制と呼ばれることも甘受しなければならない

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@haoblackj 黒森峰が蓄積してきた各校の戦略マニュアルの写し。幹部隊員にしか閲覧が許されていない西住流門外不出のテキスト。得るものが多くあるとはいえ、それ以上に背負い込むものが多すぎる。「なんで私なんですか」という私の不平の言葉は、当然任命者のエリカさんに向いたものだった

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@haoblackj 「あなたしかいないでしょ、この黒森峰の戦術を立て直せるのは」 「それはそうですけど」 私以外にできてたまるかという意地はあるが、意地で務まる重責であれば苦労はない。それでも結局、「隊長……いや。まほさんからの推薦もあった」と言われれば下がるしかない

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@haoblackj 西住まほは私が唯一尊敬した先輩だった。というと語弊があるかもしれないが、もちろん私だって先輩を軽んじるようなことはしていない。人間的に尊敬できる先輩は多くいたし、お世話になった先輩もいる。それとは別に、純粋に戦う上で尊敬に値する先輩は、西住まほだけだった

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@haoblackj その先輩に推挙されたとなれば嬉しくもなるが、同時にプレッシャーにもなる。最近のアイスの消費量も、それにつられて跳ね上がっていた。 「変人とオタクしかいないんですよ、参謀本部」 「似たようなもんでしょ」 「それひどいです、みほさんに言いつけます」

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@haoblackj ごめんと拝むエリカさんのハーゲンダッツをひとくち掬い上げて、私は携帯にみほさんのLINEを呼び出す。 「あ、みほさんから……さすが大洗、耳が早いですね」 「もう割れてるわけ? スパイでもいるんじゃないでしょうね」 いるでしょうねと応じて、私はアイスにぱくつく

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@haoblackj 戦車道を導入している学校は、同時に情報機関のような学部も有している。俗にいう情報収集学というやつで、代表的なものが高校では聖グロの情報処理学部、大学では桂蘭大学人文社会科学部実証分析科。当然戦車道開始と同時に大洗もそれを整備しており、全国で見てもやり手らしい

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@haoblackj 文科省とやりあったというのだから何をか言わんやではあるが。 「来年はそれを見越した作戦立案も検討しなければなりませんが、変人オタクしかいない参謀本部でそれを徹底させるのは骨です」 「技術情報学部と情報幕僚部には私からも一声かけておくわよ……大変ね」

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@haoblackj 誰のせいだと思ってるんですか、と噛みつく。 「本当なら副隊長ポジションでしょうが……」 「ツェスカを育てないといけないんだからしょうがないでしょ?」 ドイツの留学生を副隊長に迎える人事は、反対も多かったが概ね下馬評通りに順調に通った。本人はやる気十分らしい

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@haoblackj 「今まで別立てだったシュバルツバルト戦闘群を統合し、司令部機能も一元化。名ばかり幹部隊員を一掃した上で相互作用を期待するっていう、まほさん肝いりの案系ですけど……」 「なあなあに仕上がってる二年生よりも、まだ間に合う一年生をサルベージするほうが楽でしょ?」

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@haoblackj 残っている時間が長い後輩を育てて、この空気を継承させなきゃ。エリカさんもエリカさんで、それなり以上に考えた采配をしていたらしい。 「留学期間の問題はあるけど、副隊長はどのみち年次交代制。来年はまた別の二年生を充てるわ。……ツェスカも戻るか悩んでいるらしいし」

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@haoblackj 「え、戻らないっていう選択肢もあるんですか」 「先方はもともと黒森峰の分校扱い。黒森峰に役立つとわかれば無理のひとつも通すでしょ。本人に決めさせたいけど、学校からは結構圧力あるみたい」 「優秀ですからね、ツェスカさん」 「ちょっと喧嘩っ早いけどね」

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@haoblackj 学生寮で起こる喧嘩の7割はツェスカ絡みだ。問題児、異端児の名をほしいままにする彼女は同時に、みほさんやエリカさんと同じようなセンスを感じさせることも多い。同級生は逸見みほだのミニエリカだのと読んで憚らないが、なるほど言い得て妙だ

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@haoblackj 「……後輩の問題はわかりましたけど。別に役職がほしいわけでもないですし」 「ほんとそういう欲はないわよね。アイスだけは持っていくくせに」 「アイスは燃料です。立場で頭は回りません」 「糖分がほしいなら丼ごはん食べとけっていうのよ」

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@haoblackj 「熱が身体にこもるとパフォーマンスが下がるんです。冷やさないといけないんです」 「はいはい」 ゲーマーも作家も大食いの甘党が多いじゃないですか。はいはい。聞いてませんね? はいはい。……みほさんに言いつけますから。ちょっとまって

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@haoblackj みほさんのドン引き苦笑に弱いエリカさんには、みほさんに言いつけるという脅しがきく。ちなみにまほさんにはこれが通用しないかわりに、毎日しているドジの画像を送るというと弱腰になる。転がし方はすでに知悉していた。 「ねえ、ちょっと許して?」 「冗談ですよ、もう」

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@haoblackj 知悉しているからこそ、取引材料として使うことができる。無限の譲歩を引き出すことができる外交カード……いや、そんなものではない。こうして日常の光景の中でからかうために使われる、ちょっとした弱みだ

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@haoblackj 「あと一年で私たちも引退ですよ?」 「大学でも続けるんだから、引退という呼び方どうにかして欲しいんだけどね」 「みほさんの進学先も聞いておかないとですね」 「そうよ、大学でまた4人で組むんだから」 いつの間にか数に入っていたらしい。「はいはい」と返す

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@haoblackj 「まほさん、私、あなた、みほ。ツェスカが混じるなら尚いいわね」 「黒森峰しかいないじゃないですか。もっと他にいないんですか?」 「……聖グロの」 「あの人は勘弁」 「でもまほさんいるし、抑えられるでしょ」 「サンダースの隊長とか」 「ハイテンションお化け」

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@haoblackj 「その言い方はないでしょう」 笑い混じりに言うと、エリカさんはどうでもよさそうに「だってお化けでしょ」と応じる。 「あの人はダージリンさんが抑えられるから」 「もう数に入ってるんですね……強引な人」 「あっちが応じるかわかんないでしょ、もう」

はおこっこ @haoblackj

@haoblackj 荒唐無稽な夢物語でも、進んでいけばあるかもしれない未来。少なくとも、この人の隣にいればその未来に向かって進めるかもしれないと思える。 「みほが入ると絶対あのⅣ号のメンバーも来るわよ」 「あら、いいじゃないですか」 「あの装填手と喧嘩しそうなのよね……」

はおこっこ @haoblackj

@haoblackj 「いい人ですよ、だってみほさんのお友達ですもの」 「わかってるわよ。みほと仲良くしてるんだからいい人でしょ。まったく……いい人なんじゃなくていい人にさせられるのよ」 みほさんの雰囲気に中てられて、と言いたいのだろう。「庇護欲がね」と応じてやる

はおこっこ @haoblackj

@haoblackj 「そうそう。絶対あのメンバーだってみほのぼけぼけが放っておけなかったのよ」 「私たちみたいですね」 「小梅がナンパした時は驚いたわよ。西住の娘だって知らなかったのよね」 「あの時は心底他人に興味がなくて……みほさんとエリカさんではじめて友だちだったんです」

はおこっこ @haoblackj

@haoblackj 「今も友だちかしら」 「今後の心がけ次第では?」 「あらつれない。せっかく晩ごはんごちそうしてあげようと思ったのに」 「友だちです今友だちになりました」 「ちょろいわねぇ……まほさんも誘うけどいいでしょ?」 「もちろんです」