- Eric_Ridel
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バリ(1)ニッポン放送のトイレに隠れて出てきたら、夏目房之介さんがいらして、硝子張りの小部屋で打ち合わせをされていた。ぺこんとアタマを下げたら、にこりと笑われた。髪の毛の質感が妖精のようで、あっ、房之介さんだ、と思った。
2011-02-14 08:30:56バリ(2)生放送が始まって、最初は一ヶ月歩いて4キロ痩せたという話をして、それから房之介さんがいらした。先生のカバンをもって、さっと入って来られた。座られて、それから漱石の話をはじめた。
2011-02-14 08:32:02バリ(3)そうなんだよな。漱石について、リスペクトするポイント。社会の評価とか、肩書きとか、そのようなことと関係なく、自分をつらぬいたこと。「へそ曲がりなんでしょ」と房之介さんは仰っていたけど。そうして、文明開化で追いつけ追い越せの日本の将来を見据えていたこと。
2011-02-14 08:33:09バリ(4)房之介さんとのマンガの話が盛り上がってもりあがって、流すはずだったK−POPをいろいろと飛ばした。子どもの頃、マンガを本当に好きでいろいろ読んでいた。ポイントの一つは、大人が見てアブナイと思うようなマンガを見ても、子どもは健全にすくすく育っていくということ。
2011-02-14 08:34:24バリ(5)CMの間も、ずっとお話をしていた。いくら話しても、足りない気がした。漱石が小説でやったことと同じことを、戦後のマンガがやったのだと思った。手塚治虫さんのすごい話を聞いた。それは、打ち上げの席でのこと。
2011-02-14 08:35:24バリ(6)焼酎をロックで飲みながら、房之介さんのお話を聞いた。手塚治虫さんが大阪で空襲に遭って、歩いて帰る時にすさまじい光景を見て、それから突然猛然とマンガを描き始めたということ。「あの人は、マンガを描かなかったら、生きてはいけなかったのです。」と房之介さん。
2011-02-14 08:36:34バリ(7)人は外形にとらわれる。だから、漱石の頃の小説と今の小説は同じだと思う。違うんだ。形にならず、エスタブリッシュメントからばかにされ、そこから何かを作っていく、その実質において何が同じなのかということ。
2011-02-14 08:37:52バリ(8)房之介さんがバリ島の話をした。大好きで、もう十回行かれているとのこと。ぼくも好きで、ぼくは三回。「裏通りを抜けると、もう水田が広がっていて、夕方になると子どもたちがごはんの匂いに誘われて戻ってきて」そうそう。
2011-02-14 08:39:10バリ(9)『坊っちゃん』の清の話をした。「漱石は、自分の愛した江戸が消えゆくことをロンドンで悟ったのでしょう。」と房之介さん。ぼくは泣きそうになった。焼酎を飲み過ぎたわけではない。「文明開化」の名の下で、日本で、バリで消えゆくものへの哀惜の情。いい夜だった。
2011-02-14 08:40:51