三角関数の話 (三角関数の微分と極限)

世の中で循環論法と悪名が高い数Ⅲのsinx~xの極限を、少し整理してみました。 弧長を持ち出して、弧度法をちゃんと定義するところまでやったのがえらいかも知れません。
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腰の痛み🈚️🎨 @lc33n

[三角関数の話] 1/16 任意の複素数zで df/dz=f(z), f(0)=1 が成り立つ定数関数ではない解析関数をf(z)とする。 解析関数なので、z=0まわりのベキ級数展開が存在し、定義より f(z)=Σ[n=0→∞] z^n/n! である。

2016-08-07 14:32:59
腰の痛み🈚️🎨 @lc33n

[三角関数の話] 2/16 d'AlembertのRatio testから、任意のzに対して lim[n→∞]|a_(n+1)/a_n|=lim[z→∞]|z/(n+1)|=0 なので、ベキ級数は任意のz∈Cで絶対収束する。 以降このf(z)をexp(z)と書く。

2016-08-07 14:33:04
腰の痛み🈚️🎨 @lc33n

[三角関数の話] 3/16 ある定数aについてexp(z)*exp(a-z)を考える。 zで微分すると、expの定義とLeibniz ruleから、 d/dz(exp(z)*exp(a-z))=exp(z)*exp(a-z)-exp(z)*exp(a-z)=0 が成り立つ。

2016-08-07 14:33:08
腰の痛み🈚️🎨 @lc33n

[三角関数の話] 4/16 よってexp(z)*exp(a-z)はzに対して定数なので、 exp(z)exp(a-z)=exp(0)exp(a-0)=exp(a) が成り立つ。特に、z=p,a=p+q (p,q∈C)のとき exp(p)exp(q)=exp(p+q) が成り立つ。

2016-08-07 14:33:16
腰の痛み🈚️🎨 @lc33n

[三角関数の話] 5/16 ここで、次のように関数g,hを定義する。 g(z)=(exp(iz)+exp(-iz))/2 h(z)=(exp(iz)-exp(-iz))/2i 定義と導かれた関係式から g(0)=1, h(0)=0, g(z)^2+h(z)^2=1 (続く)

2016-08-07 14:33:22
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[三角関数の話] 6/16 dg(z)/dz=1/2(iexp(iz)-iexp(-iz))=-h(z) dh(z)/dz=g(z) が分かる。特に (d/dz)^2 g(z)+g(z)=(d/dz)^2 h(z)+h(z)=0 はg,hが微分方程式の独立な2解を与えることを表す

2016-08-07 14:33:29
腰の痛み🈚️🎨 @lc33n

[三角関数の話] 7/16 さらに、expのz=0まわりのベキ級数展開が絶対収束することから、 g(z)=Σ[n=0→∞](-1)^n/(2n+1)! z^(2n+1) h(z)=Σ[n=0→∞](-1)^n/(2n)! z^(2n) が言える。

2016-08-07 14:33:36
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[三角関数の話] 8/16 |z|<1を考えることで、 |g(z)/z-1|<Σ[n=1→∞]|z|^n/(2n+1)!<|z|Σ[n=1→∞]/2^n=|z| なので、|z|→0で、|g(z)/z|→1が言える

2016-08-07 14:33:44
腰の痛み🈚️🎨 @lc33n

[三角関数の話] 9/16 特にθ∈Rの場合を考える。 g(θ)^2+h(θ)^2=1が成り立つことから、(Euclid距離の)xy平面上の点列(x(θ),y(θ))は、xy平面上の単位円上に乗る。 θ=0からθ=φまで点が動くと、g,hが連続関数であることから (続く)

2016-08-07 14:33:51
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[三角関数の話] 10/16 滑らかな曲線が定義され、その弧長は ∫[0→φ] √[(dg/dθ)^2+(dh/dθ)^2]dθ=φ となる。(ここで、dg/dθ=-h(θ)等の関係式を用いた) よって、弧長とパラメータθの増分は一致する。

2016-08-07 14:33:56
腰の痛み🈚️🎨 @lc33n

[三角関数の話] 11/16 このことから、θ=0を基準に取った弧長パラメータをθと解釈しなおして差し支えない。さらにこの事実から、単位円の各点に対して、少なくとも1つのθが対応する。つまり、点列の軌跡は単位円である。 また、xy平面の円弧は閉曲線であり有限の長さLを持つ(注1)

2016-08-07 14:34:02
腰の痛み🈚️🎨 @lc33n

[三角関数の話] 12/16 このため並進θ→θ+Lに対して、g(θ+L)=g(θ), h(θ+L)=h(θ)である。 π=L/2, sin(x)=h(x), cos(x)=g(x)とすると、これらは sin(x+2π)=sin(x), cos(x+2π)=cos(x) と書ける

2016-08-07 14:34:08
腰の痛み🈚️🎨 @lc33n

[三角関数の話] 13/16 ところで、以上のようにsin(x), cos(x)は単位円周上を弧度法の単位でパラメータ付けする関数であるため、所謂「幾何学」の文脈で導かれる三角関数と等価である。 特殊値は単位円から求まり、たとえばsin(π)=0, cos(π)=-1である。

2016-08-07 14:34:15
腰の痛み🈚️🎨 @lc33n

[三角関数の話] 14/16 変数zが複素数の場合に戻る。定義より exp(iz)=cos(z)+isin(z) exp(-iz)=cos(z)-isin(z) である。先の特殊値から、ただちにexp(iπ)=-1が言える。 exp(p)exp(q)=exp(p+q) より

2016-08-07 14:34:22
腰の痛み🈚️🎨 @lc33n

[三角関数の話] 15/16 exp(p+q)=cos(p+q)+isin(p+q) exp(p)exp(q)=(cos(p)cos(q)-sin(p)sin(q))+i(sin(p)cos(q)+cos(p)sin(q)) から

2016-08-07 14:34:27
腰の痛み🈚️🎨 @lc33n

[三角関数の話] 16/16 cos(p+q)=cos(p)cos(q)-sin(p)sin(q) sin(p+q)=sin(p)cos(q)+cos(p)sin(q) も言える。 これは三角関数の加法定理である。

2016-08-07 14:34:32
腰の痛み🈚️🎨 @lc33n

注1 自明ですが、論理の循環をなくすという、ある程度の厳密性を求める議論の中で、こんなふうに言い放っちゃっていいのかというのは少し引っかかります

2016-08-07 14:36:15
腰の痛み🈚️🎨 @lc33n

補足 この議論で、 lim[x→∞]sin(x)/x=1 は循環なしにいえたはず? 弧長を持ち出す必要があるのは、弧度法との対応をつけるためで、不可避だと思います

2016-08-07 14:37:38