「JASRACがMIDI文化を潰した」みたいな流言

-JASRACはMIDIを殺したか? http://togetter.com/li/1009875 -参考 小寺信良:「補償金もDRMも必要ない」――音楽家 平沢進氏の提言 - ITmedia LifeStyle http://www.itmedia.co.jp/lifestyle/articles/0606/12/news005.html
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まどちん● @madscient

ここ数日、「JASRACがMIDI文化を潰した」みたいな流言がまた出回ってるので、ちょっと歴史を整理しておく。

2016-08-08 22:30:19
まどちん● @madscient

まず、いわゆる「MIDI狩り」について。DTMブーム当時、JASRACには「シーケンスデータをネットで配信する」ことに対する利用規程が存在しなかった。

2016-08-08 22:32:43
まどちん● @madscient

が、耳コピ曲などでは原著作権を侵害していることは明白なので、Niftyの特定フォーラムなど一部で「暫定措置として」MIDIデータの流通を認めていた。この際、利用者は特に利用料を支払わなくて済んでいた。

2016-08-08 22:35:30
まどちん● @madscient

この状況は草の根BBS等にも波及し、DTMブームを支える要因となっていた。先の特定の商用BBS以外では原則としてコピー曲のMIDIデータは流通が認められていなかったが当時の建前は、「暫定措置が終了したらやめるor使用料を支払う」というもので、ほぼ黙認状態だった。

2016-08-08 22:38:32
まどちん● @madscient

その後、携帯着メロをターゲットとして「シーケンスデータのネット配信」に対する利用規程が整備され、暫定措置は終了した。同時に、正規の利用料金を支払う着メロサービスを保護するため、野良配信に対しても利用料の請求をすることになった。これが悪名高い「MIDI狩り」である。

2016-08-08 22:40:58
まどちん● @madscient

これは本来、JASRACが著作権を信託されている曲のみが対象になるはずだったが、野良配信をしているユーザーが信託曲と非信託曲をとくに区別するはずもなく、またJASRACも拙速に活動を進めたため誤請求も頻発した。もちろん誤請求されても非信託曲であることを証明すれば請求はされない。

2016-08-08 22:44:22
まどちん● @madscient

しかし、コピー曲を配信していてJASRACに請求された野良配信者の大半は、「利用料を払ってまで配信を続ける」事を選ばなかった。個人がネットのユーザから集金するシステムが無かったので、原資が払えなかったという事情もあるが、やめた背景として当時のDTMを取り巻く状況の変化がある。

2016-08-08 22:47:28
まどちん● @madscient

90年代に興ったDTMブームでは、「標準音源」と呼ばれるMT-32やSC-55が「データ制作者」と「リスナー」の両方に普及していたため、制作者の意図した演奏を多くの人が再生することができた。

2016-08-08 22:49:54
まどちん● @madscient

ところが、DTMブームが発展していくと、ハードウェアが多様化・高度化していって、データ制作者はより高度な制作環境を追求し、ライトユーザーやリスナー(いわゆる聞き専)との環境が解離しはじめた。それでもSC-88くらいまではなんとか追従していた聞き専は多かった。

2016-08-08 22:52:08
まどちん● @madscient

SC-88ProとかMU2000のようなハイエンドDTM音源が出るに至ると、もはや聞き専には手に負えない。データ制作者が技術を高めていっても、リスナーに意図した演奏を届けることができないという状況が生まれてきた。

2016-08-08 22:55:10
まどちん● @madscient

これがBBS上では、「GM音源をターゲットにベタ打ち曲を粗製濫造するライトユーザーの作品の方が、ハイエンド音源を極限まで使いこなすヘビーユーザーの作品よりもDL数が多く高評価」という結果となって現れ、ヘビーユーザーのモチベーションをゴリゴリ削っていた。

2016-08-08 22:58:27
まどちん● @madscient

当時のネットワークインフラでは録音データそのものを配信するにはまだ回線が細く、音楽をネット上で発表するにはMIDIしかない、しかし音を追求しても聞かせる相手がいない。多くの人が聴けるようにすると、ローエンド音源縛りにせざるを得ない、というジレンマに陥っていた。

2016-08-08 23:01:21
まどちん● @madscient

「データ制作者とリスナーが同じ音源を持っていれば少ないデータ量で音楽を再生できる」というMIDIの利点がDTMブームの原動力だったわけだが、「データ制作者とリスナーが同じ音源を持っていなれば意図した音楽を再生できない」という全く同じ理由がDTMブームの終焉を招いてしまった。

2016-08-08 23:03:58
まどちん● @madscient

これが、2000年前後の、BBSからインターネットへ移行しつつあったときのDTM界隈の偽らざる空気感だったと思う。JASRACが野良MIDI狩りを始めたのがまさにこの頃。既に限界を感じ始めていた野良配信者達は「金払ってまで続けなくていいや」と思った。

2016-08-08 23:08:17
まどちん● @madscient

そういうわけで、MIDI狩りはきっかけにはなったかも知れないけど、ヘビーユーザーにとっては音楽を発表する手段としてのMIDI配信はとっくに終わっていたのだった。

2016-08-08 23:16:18
まどちん● @madscient

それから数年、ネットワークインフラが急速に高速大容量化し、ニコ動やYouTube等のサービスも充実して、ネットで音楽を発表するのに録音をそのまま配信することが一般的になった。もしMIDI狩りがなかったとしても、今の状況は全く変わらなかったと断言できる。

2016-08-08 23:29:06
まどちん● @madscient

以上、当時DTM界隈の片隅にいた無名ライトユーザーから見たMIDI狩り前後までの歴史でした。何か齟齬があれば訂正よろしう。

2016-08-08 23:32:35
碓井 康裕(うすい)/Yasuhiro Usui @usui_y

@madscient 色々勉強になりなるほどーと思いました。自分は88proまで追いかけてましたが、パワーユーザが上位のラックタイプMIDIに移っていって、自分がMIDIから離れる時期と重なります。CD頒布が出始めインディーズCDが広がりM3が出来て~などみるみる変化しましたねぇ

2016-08-08 23:42:59
まどちん● @madscient

@usui_y もう環境が多様化しすぎてて、ゆい末期になると「要88Pro+U220+ギターカード+ドラムカード」とか「要MU2000+PLG150-VLカード」とかヘビーユーザー同士でも意図通りに再生するのが困難な状況でしたね。

2016-08-08 23:47:43
まどちん● @madscient

88Proクラスまではギリギリ付いてきてた聞き専も多少いましたけど…。ただ聞き専向け廉価版も88STProで打ち止めなので、実感としては88Proがとどめかな。 twitter.com/kai_grayshblue…

2016-08-09 00:22:41
お見積り @kai_grayshblue

聞き専だったけどSC-88ST Pro買ってたなぁ……一応その辺りはローランドさんも意識してST出したんだろなーとは思うけど、ただ自分のような人間が多かったどうか、というとやっぱり少数派だったなという自覚はある。 twitter.com/madscient/stat…

2016-08-09 00:09:39
まどちん● @madscient

サウンドブラスターにGM音源をやらせたのはほんとに暴挙だと思う。しかも音源ファームがクソ。 twitter.com/preta774/statu…

2016-08-09 02:02:59
まどちん● @madscient

暫定措置終了後の話ね。商用BBSは有料化するの分かってたし、一連のツイートは野良配信にフォーカスしたもんだからまあ書かなくてもいいかなと思った。有料MIDI配信の話はまた別立てで書くかも。 twitter.com/okaz6809/statu…

2016-08-09 02:12:41
🅾🅺🅰🆉 @okaz6809

ん?JASRACのMIDI狩り(というのもどうか)の話。一時期NiftyでMIDI曲DLしようと思ったら別料金かかってたの書いてないな。しかもアレ視聴出来ないから無茶苦茶賭けだったよね

2016-08-08 23:54:44

 

MA-X @ B-Cat Software @max_2608

シーケンスデータと音源モジュールがあれば誰でも同じ楽曲を再生できるが故に、その後に爆発的に普及したMP3と問題の根っこは同じなんだよね。 楽曲のデジタル化に対してJASRACの初動が遅れてしまい、アマチュアにはペイが難しい利用料が請求される事になった。

2016-08-09 06:25:11
MA-X @ B-Cat Software @max_2608

その後に色々と見直されたり、YouTubeやニコ動など包括契約で利用料を肩代わりして広告でペイするプラットフォームが現れた事で、権利者と二次創作の作者との間に存在し続けてきた課題が一気に解決した。

2016-08-09 06:32:53