セイバー提督と神通さん【第四話】

完結編・・・の予定だったけど、長くなりそうだったので分割しました 次で完結 ※一部致命的な誤植に思える箇所がありますが、そこは致命的な誤植です 続きを読む
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深海さかな @dzurablk_kai

川内は自らの荒い息がコックピットに響き渡るのを、ぼんやりと聞いていた 作戦が始まってからもう何時間が経ったかもわからない 肉体と精神の限界を越えての戦いで機内の温度と湿度は際限無く上がっていく #私の彼はブラストランナー

2016-08-09 18:33:01
深海さかな @dzurablk_kai

じっとりと汗で体に張り付いた制服が気持ち悪いが、それを引き剥がす暇もない 川内はコンデンサの充填が終わったことを告げる甲高い電子音が鳴ると同時に、左手に握る操縦悍を一息に倒し、押しっぱなしにしていたトリガーを解き放った #私の彼はブラストランナー

2016-08-09 18:35:53
深海さかな @dzurablk_kai

激しく右に体を押さえつけるGと共に、全長五メートルの鋼の巨人は狭い路地から躍り出ると、両手に保持した得物を構える 直後にコックピットを襲う激しい震動 トリガーを押さえつけられていた鬱憤を晴らすかのように、ガトリング銃身から止めどなく溢れる砲弾の雨 #私の彼はブラストランナー

2016-08-09 18:39:13
深海さかな @dzurablk_kai

川内の駆るケーファーはマシンカノンの電動ノコギリのような咆哮と共に、大型トレーラーやパイプラインの向こうから迫り来る深海棲艦の群れを、一気になぎ倒していった 『川内、榴弾砲の冷却が終わったぞ』 若い男の声で、機体のAIが告げる #私の彼はブラストランナー

2016-08-09 18:43:37
深海さかな @dzurablk_kai

「今脚を止められるとでも!?」 叫び返す川内の言葉を、敵からのロックオンアラートが遮った すかさず川内は、マシンカノンをECMグレネードに持ち替え投擲 巻き上がる白煙とアルミ箔に敵の姿が遮られると、砲身冷却の終わったマシンカノンをリロード #私の彼はブラストランナー

2016-08-09 19:12:31
深海さかな @dzurablk_kai

そのままモードを切り替え、今度はコンデンサに電力をチャージすることなく、油圧モーターでガトリング砲身を駆動した さっきほど早い発射速度ではないものの、敵をほふるには十分な威力の砲弾が、白煙に数多の穴を形作り撒かれていく #私の彼はブラストランナー

2016-08-09 19:14:54
深海さかな @dzurablk_kai

爆発音と共に晴れる白煙と、ケーファーの足元へと飛んでくる明らかに深海棲艦とは異なる金属部品 「ああもう!! なんなのよこいつらは!?」 川内は苛立ちを紛らわせようとするかのように、その敵の残骸を数十トンのケーファーで踏み潰した #私の彼はブラストランナー

2016-08-09 19:17:55
深海さかな @dzurablk_kai

人類と深海棲艦との戦争に新たな勢力が加わったのは、半年ほど前のことだった 『エイジェン』、そう名乗る彼らの軍勢は、ある日突然、海の向こうから飛来し、あちこちの海軍基地を深海棲艦と協力して壊滅させていったのだ #私の彼はブラストランナー

2016-08-09 19:20:24
深海さかな @dzurablk_kai

川内たちが今いる、中国沿岸のウーハイ産業港も今や、それら壊滅した基地と同じ運命を辿ろうとしている 「友軍の撤収状況は!?」 『先程四水戦の避退が完了、二水戦はまだ時間がかかる』 「何やってんのよ!」 #私の彼はブラストランナー

2016-08-09 19:22:55
深海さかな @dzurablk_kai

『そう言うな、あっちはあっちで苦労してるんだ』 川内はその言葉に、辛うじて舌打ちを飲み込んだ 神通がいなくなったことによる士気の低下に加え、厄介なのはエイジェンの率いるドローンだ 深海棲艦と違って強固な武装と装甲を有するこれら自立兵器には、 #私の彼はブラストランナー

2016-08-09 19:24:42
深海さかな @dzurablk_kai

艦娘の装備では太刀打ちできない 今この付近で頼れる戦力は、川内の乗る重ブラストのみだった 「砲撃支援を開始する!!」 川内がタッチパネルを操作して友軍の展開状況を確認しようとした、その時だった 『川内、敵だ!! 三時の方向!!』 #私の彼はブラストランナー

2016-08-09 19:27:13
深海さかな @dzurablk_kai

すかさず回避行動を取るべく操縦悍を前へ倒す川内 だが、背中に背負った榴弾砲の発射のために腰を屈めた構え動作を取っていたケーファーのレスポンスは、一瞬ながらも致命的に遅れた コックピットを襲う激しい揺れと耳を弄して鳴り響くブザー #私の彼はブラストランナー

2016-08-09 19:28:56
深海さかな @dzurablk_kai

「くそ、この・・・!!」 川内が悪態混じりに機体を引き起こすと、メインディスプレイに敵の姿が現れる 深海棲艦よりも大型で、ボールに火器をくくりつけたかのようなドローンとは異なる人形のシルエット 「・・・新型か?」 #私の彼はブラストランナー

2016-08-09 19:32:45
深海さかな @dzurablk_kai

そう呟いた刹那、敵の黒い機体はケーファーのすぐ目の前まで迫っていた 「ッッ・・・!!」 回避行動を取るが、間に合わない 機体に敵の凶刃がめり込む嫌な音 『クソ、射出する!!!』 イジェクトと共にGで体を前に持っていかれながら、川内が最後に見たものは #私の彼はブラストランナー

2016-08-09 19:36:02
深海さかな @dzurablk_kai

『・・・敵機、連続撃破』 黒塗りの上半身とは対照的に金色に輝く脚部パーツの、ケーファーとよく似た丸いシルエットの機体と 「今の声・・・神通?」 半年間消息を絶っていた、姉妹艦の声だった #私の彼はブラストランナー

2016-08-09 19:38:30
深海さかな @dzurablk_kai

川内の乗機が前線で時間を稼いでいた丁度その頃、神谷の駆るセイバーはそのマップの反対側、自陣のベース付近にいた 辺りには破壊された自動砲台と、放棄され散らばった機銃や艤装 それらのうち使えそうな物を回収、またはグレネードで破壊処分しながら神谷は、 #私の彼はブラストランナー

2016-08-11 09:19:27
深海さかな @dzurablk_kai

強襲揚陸ベースに接続されたホバークラフト、LCACに部下の駆逐艦たちが撤収し終わるのを待っていた 神通を失った部隊はただでさえ戦力も指揮官も欠いている上に、機体の操作に不馴れな那珂の乗るネレイドは早々に大破している #私の彼はブラストランナー

2016-08-11 09:21:28
深海さかな @dzurablk_kai

神通という唯一無二のパイロットを欠き、負荷の高い無人操作で辛うじてセイバーを操る神谷にとってはかなり辛い状況だった 先程から増しつつある敵の圧迫から鑑みるに、前線で体を張る川内とケーファーも限界が近い頃だろう 『川内、間もなく撤収を終える 後退しろ』 #私の彼はブラストランナー

2016-08-11 09:25:30
深海さかな @dzurablk_kai

そう無線を送るも、返送は無い 『川内、聞こえているのか!? 送れ、送れ!!』 だが苛立ちと焦りから語調が激しくなる神谷の声に答えたのは、想像だにしない人物だった 『貴方の帰る道は、もう無いの・・・ ウフフフ・・・ もうないのよォ?』 #私の彼はブラストランナー

2016-08-11 09:27:51
深海さかな @dzurablk_kai

それは、調子外れに甲高い不気味な声になっているものの、とても聞きなれた声だった 『神通? 神通じゃないか!? 今どこに・・・』 それに答えるかのごとく、身体があれば身を乗り出していたであろう神谷の視線の先、ベースの入り口付近に一機の機体が現れる #私の彼はブラストランナー

2016-08-11 09:30:21
深海さかな @dzurablk_kai

背後で燃え上がる重油タンクの朱に混じっても尚目立つ、真っ赤に燃えた二対の複眼 夜闇に溶け込むかのような深海棲艦の漆黒の肢体 神通が研修に行って消息を絶った黒い噂の絶えない北欧企業、ナクシャトラ社の開発した、中重量機体『ディスカス』 #私の彼はブラストランナー

2016-08-11 09:35:17
深海さかな @dzurablk_kai

そのケーファーとは異なる特徴的な姿が武器を構えるや否や、反射的に神谷は主武器を手に突貫していた およそ最速の連射で弾幕を張るstar20セミオートライフル だがもうもうと上がる弾着煙にも、ディスカスは避けるどころか身じろぎひとつしない #私の彼はブラストランナー

2016-08-11 09:39:41
深海さかな @dzurablk_kai

『ッ・・・バリアユニットか』 舌打ち混じりに神谷は、残弾の乏しいstarを投げ捨てるとこちらも使用限界の近いアサルトチャージャーマルチウェイを起動 ディスカスの左方へ一気に回り込みながら、近くに転がっていたネレイドの腕部に残されたS90をもぎ取った #私の彼はブラストランナー

2016-08-11 09:46:58
深海さかな @dzurablk_kai

アイビスのライフル弾が3発おきにバリアユニットへ突き刺さる 時を同じくしてブースターの推力を底上げする燃焼剤が尽き、アサルトチャージャーは使用限界を迎えた 新たな燃焼剤を調整し安定化するまで機動力の補填は見込めない #私の彼はブラストランナー

2016-08-11 09:50:27
深海さかな @dzurablk_kai

副武器のグレネードも使い尽くしている以上、神谷に残された手段は1つしか無かった バリアユニットを貫通しうる近接武器による格闘戦闘だ セイバーは背面のウエポンラックからアイビスと入れ違いにロングスピアを取り出した #私の彼はブラストランナー

2016-08-11 09:54:40
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