サイバー・スレイヤー【四殺目・ラースヤ】前編

劉度 @arther456

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【サイバー・スレイヤー】 【四殺目・ラースヤ】前編

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（これからSSを投下します。TLに長文が投下されますので、気になる方はリムーブ・ミュートなどお気軽にどうぞ。感想・実況などは #ryudo_ss をお使いいただけると大変ありがたいです。忙しい方はtogetterまとめ版をどうぞ。それでは暫くの間、お付き合い下さい）

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フジキド・ケンジの朝は早い。サラリマン時代と同じ時間に起床。フートンを畳み、立て掛けておいたチャブを置き、その上に朝食を並べる。レンジで温めたパック・ライス、黄色のピクルス、インスタントのミソスープ。いずれも昨日、コケシマートで買ってきたものだ。スシは売り切れていた。1

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いつもと変わらぬ朝。ただ、違う所が１つある。「なんと粗末な食事か。ブザマなり、フジキドよ」朝食を食べるフジキドの横で、少女ドロイドが畳んだフートンの上にアグラを掻いていることだ。「スシの１つも用意できぬとは！これではサンシタ相手に遅れを取るのも当然じゃのう」2

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「私はこれでよい。サラリマンの頃から、この朝食だった。手作りか否かの違いはあるが」「嘆かわしい。よいかフジキドよ。食うこともニンジャのイクサぞ。ちゃんと食事をせねば、オヌシのカラテはどんどん弱まるばかりよ」「ならばオヌシが作ってみるか？」3

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フジキドの提案に対し、ナラクは黙りこくってフートンの上に寝転んだ。「フートンがシワになる。降りろナラク」「うるさい！ほっとけ！そんな細かいこといちいち気にするな！」フジキドの記憶のナラクに比べ、この少女ドロイドの性格は幼い。全てのソウルを取り戻していないから、こうなのだろう。4

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朝食を食べ終えたフジキドは、チャブを立て掛け直し、その場でカラテ・トレーニングを始めた。狭い室内でも、腕立て伏せ、腹筋、スクワットなどは問題なくできる。その間、ナラクはフートンの上でふて寝を決め込んでいるかと思いきや、不意に身を起こした。5

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「フジキド」「分かっている」不穏なアトモスフィアが近づいている。窓から外の様子を伺うと、一糸乱れぬ動きでアパートに迫る黒服の男たちの姿が見えた。向かいの建物の窓にはスナイパーもいる。「どこぞのニンジャの手下か？フジキド、さっさとやっつけてこい」6

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「オヌシを逃がすのが先だ」赤黒の装束を生成したフジキドが言った。「私に続け」「バカモノ。ワシを誰だと思っておる。あのようなニンジャでもない兵隊に遅れをとるワシでは……」「今のオヌシに」フジキドはナラクの言葉を強く遮った。「万一のことがあっては、私が困る」7

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「ヌ……そうか。そこまでいうなら、うむ、仕方がないな」ナラクはフートンの山から降りた。「で、どうする？フジキドよ」「私が呼ぶまでここにいろ」言うが早いか、ニンジャスレイヤーはドアから飛び出しスリケン投擲、向かいのアパートに潜んでいたスナイパーヤクザを殺害！8

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「ザッケンナコラー！」周辺に待機していたクローンヤクザが飛び出してくる！「イヤーッ！」左側にスリケン３枚投擲！「「「グワーッ！？」」」道路上のクローンヤクザ３人死亡！「イヤーッ！」右側にスリケン３枚投擲！「「「グワーッ！？」」」車内のクローンヤクザ３人死亡！9

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「イヤーッ！」上空にスリケン３枚投擲！「「「グワーッ！？」」」屋根のクローンヤクザ３人死亡！「イヤーッ！」地面にスリケン３枚投擲！「「「グワーッ！？」」」マンホールのクローンヤクザ３人死亡！包囲網壊滅！「ナラク！」「イヤーッ！」ナラクが部屋の中から飛び出す！10

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見事な前転着地を決めたナラクは、自分の両手をまじまじと見つめた。「ほほう。ジョルリのガラクタかと思いきや、中々良いではないか」オイランドロイドのボディは人間のそれよりも頑強に作られている。「オヌシのいろいろ不便な体よりも、使い勝手は良さそうだぞ？」11

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「行くぞ」ニンジャスレイヤーは走り出した。ナラクも舌打ちして後を追う。敵はクローンヤクザが多数。マグロツェッペリンも、アマクダリのニンジャも襲ってこない。小規模な襲撃だ。恐らく首謀者はニンジャ１人。ASAPで見つけ出して殺す。ニンジャスレイヤーは殺意を滾らせ、路地裏を駆ける。12

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「イヤーッ！」ビル壁面を駆け上がり、屋上へ。追手のクローンヤクザの姿は未だ見えぬ。「イヤーッ！……何を立ち止まっておるか、フジキド」ナラクが追いついて来た時、ニンジャスレイヤーは耳をそばだて、周囲の様子を伺っていた。ヤクザスラングの最も濃い地点を探る。13

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数秒後、ニンジャスレイヤーは目を見開いた。「イヤーッ！」「ああっ、こら、待てっ！」走り出したニンジャスレイヤーの後をナラクが追う。赤黒の風が吹き込んだのは、無人となり廃棄されたアーケード区画だった。そこに数台のヤクザベンツが不自然なバリケードを作っていた。14

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「「「アッコラー！？」」」歩哨ヤクザが奇襲に銃を構える。だが遅い！「イヤーッ！」「「「グワーッ！」」」駆け抜けざまのカラテで瞬く間に全滅！ニンジャスレイヤーは中央の指揮車に到達。後部ドアを蹴り破る！「イヤーッ！」だが、無人！？CRAAAASH！頭上のアーケードが砕けた！15

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「イヤーッ！」落下してきたのは、蜘蛛型歩行戦車・ゴケヅクリである！ニンジャスレイヤーは鋭い前脚による斬撃を前転回避、立ち上がってアイサツをした。「ドーモ、ラースヤ＝サン。ニンジャスレイヤーです」「ドーモ、ニンジャスレイヤー＝サン。ラースヤです」16

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ラースヤの戦車の装甲は、先日よりも更に禍々しく変質していた。ソウルの力をより強力に引き出したのか。あるいは、暴走か。「予想通り、誘われてホイホイ出てきたねえ。我慢の効かないオジサンだ」「確かに、周到に用意されたハカバだ。弟を入れてやるつもりだったか？」16

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「その口でカチモトを汚すなっ！」ラースヤは怒気を露わにする。「アイツは僕がニンジャになった時から、ずーっと支えてくれたんだ！お前はタダじゃ殺さない！腕と足を引きちぎって、蜂の巣にして、ブザマな命乞いをさせながら、ゆっくり頭を潰してやる！」17

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「そのよく回る口で、ジゴクの弟への弔辞でも考えておけ。すぐに送り届けてやる」「弔辞はお前に聞かせてやるさ！」ゴケヅクリが屋根スレスレまで跳躍、機体後部から無数のワイヤーが射出され、ニンジャスレイヤーに降り注ぐ！「イヤーッ！」ニンジャスレイヤーはこれを回避！18

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「イヤーッ！」更にラースヤはワイヤーアンカーを次々と射出する！「ヌウッ、これは！」過剰ともいえるワイヤーの攻勢。その意図にニンジャスレイヤーが気付かぬはずがなかった。瞬く間に、周囲に蜘蛛の巣めいた硬質綱空間が展開された。19

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「イヤーッ！」ラースヤの着地際を狙い、ニンジャスレイヤーは回し蹴りを放つ！だが蹴り足は宙を切った。多脚戦車の脚がワイヤーを引っ掛け、その体を宙に浮かせたのだ。逆さ吊りになったラースヤは、両手にサブマシンガンを構えている！BRATATATA！20

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「イヤーッ！」ニンジャスレイヤーは銃弾を回避し、ラースヤから距離を取る。相手のフーリンカザンで戦う必要は無し。巣の外からスリケンで殺す。「イヤーッ！」新たなカラテシャウト！ラースヤの頭上に小さな影！ナラクが屋根から飛び降りながらチョップを放つ！21