【HYDE】The last story.

宿命の交差、此処に終結。 二体の古龍の魂宿す双刃の主と仲間の意志背負い戦鎚振るう戦士の、暴食の王宿す絶望の化身との決着を、ここに───。
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ばしこし@文垢 @bs_ks_0

其れは、終局を告げる物語。 ーーーThe last story.

2016-07-29 01:44:38
ばしこし@文垢 @bs_ks_0

捻じ曲がった時間は、正す存在をただ待ち続ける。未来に存在を拒絶されし魂は、歪みに亀裂を作り出す。 書き換えられた運命の中、正義と覚悟を貫く為。 最後の闘いが、始まる。

2016-07-29 13:44:45
ばしこし@文垢 @bs_ks_0

"此処は?"。そう自問する必要はなかった。身体が軽いのは、目の前に鎮座する存在が"この場を設けた"事の何よりの証拠だろう。「あの日以来、だな。...祖龍」。時の狭間にハイドとイースの魂を導き呼んだミラルーツは、紅に揺れる瞳で彼らを静かに見据えている。《久しいな...人の子よ》。2

2016-07-29 22:05:31
ばしこし@文垢 @bs_ks_0

彼らはその運命を変えた。いや、正確には"書き換えられた"。祖なる龍と謳われる白き古龍、ミラルーツによって。本来、ハイドの生きる未来にイースは存在しない筈だった。その"消えたはずの存在"が此処に生きている事こそが。その未来を歪め、書き換えた何よりの証。《...少し、話がある》。3

2016-07-30 00:15:03
ばしこし@文垢 @bs_ks_0

「だろうとは思ってたよ。だから、俺達を呼んだんだろう?」。小さく息を吐くと、イースが静かに口を開いた。その瞳はどこか、何かを悟ったように憂いを帯びていた。隣に並ぶハイドも、その視線を地に落とす。仮説と呼ぶのが正解か、凡その検討は彼女にもついていた。歪んだ未来の中の、"矛盾"を。4

2016-07-30 00:22:28
ばしこし@文垢 @bs_ks_0

悲劇の結末を辿った未来で。イースの命は、赤き隻眼のティガレックスと共に果て。そして、彼は器として"生かされた"。黒く淀む、暴君の魂によって。そう、本来ならば。「俺という存在は、俺が仇を取る前に時間軸を戻している」。まるで独り言のような。しかし、その声には力が込められていた。5

2016-07-30 00:34:11
ばしこし@文垢 @bs_ks_0

同時に、それはハイドの中の仮説を確立させるには十分なものだった。書き換えられた運命に生きるイースは"彼自身"の命で鼓動を刻んでいる。誰のものでもない、己の心で。「...イースを喰らわんとしたイビルジョーの魂が、この未来に影響を及ぼそうとしている...のか」。6

2016-07-30 00:39:28
ばしこし@文垢 @bs_ks_0

《...その通りだ》。ミラルーツの低い声が、2人の耳に響く。《暴君の魂は想像以上に膨大だ。この時間軸を狂わせ、己の魂の生きる未来への亀裂をこじ開けようとしている》。即ちそれは。「...奴を倒さなければ、俺は」。"また、死ぬんだな"。困ったように、口角を少しだけ上げて彼は笑う。7

2016-07-30 00:46:36
ばしこし@文垢 @bs_ks_0

「...イース、」。何か、何か。伝えたい気持ちは山程あるのに、声にならない。喉が握り潰されるような感覚さえ覚える中、不意にハイドの背に暖かさが触れる。「大丈夫」。そう言って彼女を見やるイースは、笑っていて。「...つまり、決着をつけたら良い。俺が生きるか...奴が、生きるか」。8

2016-07-30 00:52:03
ばしこし@文垢 @bs_ks_0

彼女の瞳に映るイースは、強かった。目に宿る輝きは、脈動して燃ゆる命のように。力強い言葉は、覚悟を貫く迷いなき剣のように。《...すまない》。ふと、祖龍の口から謝罪の言葉が漏れ出た。《我にできるのは、運命を歪め書き換える事。"歪んだ時間軸を正す事"は、お主らに託す事しか出来ぬ》。9

2016-07-30 00:58:46
ばしこし@文垢 @bs_ks_0

「......イース」。しばしの沈黙を破ったのは。「...これは、私が望んだ未来だ。そのせいで、お前をまた過酷な状況に追いやってすまないと思ってる。...だから」。互いの視線が交じり合う。語尾に近づくにつれ強くなる語調が、ハイドの感情を表しているようで。「共に、戦いたい」。10

2016-07-30 01:16:42
ばしこし@文垢 @bs_ks_0

また、無の時間が帰ってくる。少しだけ見開かれたイースの青い瞳は、すぐに優しく揺らめいた。「...俺としては、君を危険な目に合わせたくはないんだが、」「嫌だと言われても勝手についていく」「わかったわかった」。目の前で不満気に眉をひそめる存在が、今まで以上に。「...頼んだよ」。11

2016-07-30 01:23:40
ばしこし@文垢 @bs_ks_0

ゆっくり撫でた髪は、手を滑るようにふわりと流れる。(あぁ、)。あの日、君を傷付けてしまったこの手で。今度は、君を護れるように。「...ミラルーツ」。視線を上げ、己の死の運命を書き換えた伝説の存在を見やる。瞳には、鋭さが宿っていた。「...俺達を、暴君の処へ連れて行ってくれ」。12

2016-07-30 01:36:37
ばしこし@文垢 @bs_ks_0

《...ここから先は、我の干渉出来ぬ深く淀んだ場所になる》。ミラルーツが言い終わるとほぼ同時に、2人の体が光に包まれる。《...気を付けてな》「...ありがとう」。彼方を見据えるイースの声は、落ち着いていた。刹那、祖龍の前に2人の姿は無い。《...お主らの絆、信じているぞ》。13

2016-07-30 01:51:45
ばしこし@文垢 @bs_ks_0

どれだけ時間が経っただろう。数時間、いや、たった数秒かもしれない。視界が開けると、そこには。「......ここは、」。ハイドの脳裏に刻まれた記憶が、熱を帯びたように小さく疼く。「...あぁ。俺達はここで......剣を向け合った」。曇天は明ける事なく、暗く沈む空気は肌を刺す。15

2016-07-30 01:58:54
ばしこし@文垢 @bs_ks_0

その中に混じる微かな棘。それは、あの日も此処で感じた、禍々しく悍ましい狂気の心。「......イース」。視線を前に向けたまま、ハイドの声が静かに彼の名を紡ぐ。その意図、その心情。すぐにイースにも理解出来た。開けた頂きの中央、そこに揺らめき立つ黒い影。「あぁ」。心が、ざわめく。16

2016-07-30 17:20:48
ばしこし@文垢 @bs_ks_0

「お前と決着をつけるために...俺達は此処に来た」。言わずとも、聞かずとも。目の前に見える存在が、今の自分達の背負う宿命なのだと。辛うじて人型を保っている黒い影の瞳は、狂おしいほどに赤く煌めいている。《...忌々しき者共よ...》。微かな唸り声。言葉と共に、殺気が2人を刺す。17

2016-07-30 17:31:23
ばしこし@文垢 @bs_ks_0

身を刺すような眼光も、胸を抉るような殺気も。彼の心を蝕み、彼女に牙を剥いた"破滅の暴君"のもの。「ハイド。...覚悟は良いか」。血の海の中で己を喰らい、地を蹂躙せんとした禍々しい漆黒の魂。再び、君臨を渇望するのは。「...当たり前だ」。ハイドの両手に、氷炎の剣が握られる。18

2016-07-31 16:37:02
ばしこし@文垢 @bs_ks_0

《...我ハ滅びぬ...全テに絶望を...!》。暴君の纏うオーラが激しく揺らめいた。大地を振動させ、空気を震わせるその鋭い雄叫びは、彼の戦意を2人に示す。「...私は、この時間を失いたくはない」。ギュッと相棒達を握り締めるハイドの手に、力がこもる。「もう二度と、絶対に」。19

2016-07-31 18:25:21
ばしこし@文垢 @bs_ks_0

「...俺だって」。"手離したくない"。静かに呟きながら、背に携えた鉄槌を構え持つ。相棒に殺気を込めるのは、いつ振りだろう。命賭けるのは、お互いの胸に抱く唯一の希望を守る為に。「...俺は、生きたい」。今、この時間軸で。彼女の隣で。「ーーー行くぞ!」。轟く咆哮が、死闘の合図。20

2016-07-31 18:38:35
ばしこし@文垢 @bs_ks_0

「...強い...!!」。膨大なオーラの力に幾度と無く弾かれた腕は痺れ始め、危うく手に持つ双剣を落としそうになる。覚悟こそしてはいたが、暴君の力は想像以上に大きく、何より恐ろしいものだった。武器こそ生成しないものの、身に纏うオーラはそれだけで全てのものを圧倒し、ひれ伏せる。22

2016-08-01 00:42:24
ばしこし@文垢 @bs_ks_0

「はぁっ!」。曇天の下、煌めく金の鉄槌が暴君に迫る。が、かざされた手から放たれる禍々しいオーラの前に、傷を付ける事さえ叶わない。「......ッ!」。イースの体は、黒い波動によって軽々と後方へ吹き飛ばされる。とっさに受身をとるが、度重なる疲労とダメージで鈍る体は体勢を崩した。23

2016-08-02 02:05:30
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