(これからSSを投下します。TLに長文が投下されますので、気になる方はリムーブ・ミュートなどお気軽にどうぞ。感想・実況などは #ryudo_ss をお使いいただけると大変ありがたいです。忙しい方はtogetterまとめ版をどうぞ。それでは暫くの間、お付き合い下さい)
2016-08-17 21:02:06IRCログインアラート。YCNANのログインネームを確認したバシリデスは、携帯UNIXに生体LAN端子を差し込んだ。『ドーモ、バシリデス=サン』『ドーモ、ナンシー=サン。何用かね?』『例の記憶素子を、少し調べさせてもらったわ。一つ質問があるのだけど、いいかしら?』『構わん』1
2016-08-17 21:03:04『あれは、本当にニンジャソウルをデータ化したものなの?』『これは異な事を。まさか、中のデータを解析したとは、言わないだろうね?』バシリデスは僅かな期待を込めてタイプする。彼自身、カラテドレインしたソウルをデータ化こそできるものの、ソウルを電子的に解析したことはないのだ。2
2016-08-17 21:06:04ヤバイ級ハッカーである電子の妖精は、このソウル電子化現象を解明したのだろうか。だが、答えは違った。『いいえ。データは普通のプログラムじゃ読み取りもコピーも不可能だった。だから貴方に聞いてるのよ』バシリデスは失望した。『私が答えた所で意味が無かろう。信じるかどうかは彼次第だ』3
2016-08-17 21:09:04『なら聞き方を変えるわ。あのデータの中にあるのはニンジャソウルだけなの?』その質問に、バシリデスのタイプがしばし止まった。『何を』『以前、人の記憶と意識を移し替えたチップというものを見せてもらったことがあるの。プライバシーの為に、中の解析はしなかったけどね』4
2016-08-17 21:12:08『そのチップの容量と比べると、あのチップのデータ量は異常だわ。いくらニンジャソウルといっても、何百人分もの人格が入っているわけではないでしょう?』『鋭いな。ナンシー=サン』『質問に答えなさい。ニューロンを焼き切られたくなければ』バシリデスは正直に答えた。『私にも分からんよ』5
2016-08-17 21:15:02『何を言ってるの?』その言葉にこもっているのは、怒りか、困惑か。無機質なタイプ文字では窺い知ることはできない。『これは実験だ。私のサイバーカラテドレインで電子化したものは、本当にニンジャソウルなのか。そして、自我を真に電子化することは可能なのか、というな』6
2016-08-17 21:18:01『自我を?』『ああ。自我を電子化し、ネット上やドロイドのボディに移し替える。私のサイバーカラテドレインで、その仮説を立証できるかどうか、そうした実験がこの戦いなのだ』ナムアミダブツ!なんたる冒涜的研究か!生命の定義の根本を覆しかねない実験である!7
2016-08-17 21:21:01バシリデスは当初、ズンビーニンジャを研究するリー先生の元で、この研究を進めようとした。だが、ニンジャ真実を追求するリー先生と、生命体全般の自我を研究するバシリデスの方向性は次第に離れていき、最後には決裂。ソウカイヤの崩壊と共に2人は袂を分かった。8
2016-08-17 21:24:03『……なら、ソウルを5つに分けた意味は?』相応のショックを受けながらも、その点に気付いたか。バシリデスは素直にナンシー=リーを賞賛した。『君の言うとおり、ニンジャスレイヤーのソウルは予想以上に容量が大きかった。あの場では、5分割して保存するしかなかったのだよ』9
2016-08-17 21:27:03『随分いい加減ね。自我を吸い出すだけでなく、分割までしてしまうなんて。結果に影響はでないのかしら?』『出るだろうな。だが、これは最初の実験だ。どのような結果になろうと、データとしては有益だよ』ナンシーの返事が止まった。『他に質問は?』『もう無いわ』10
2016-08-17 21:30:05『それと、ニンジャスレイヤー=サンが4人目を殺したわ』『そうか』『ペースは順調よ。今のうちにハイクを考えておきなさい』回線が切断される。「順調か。果たして、ソウルの結合は上手く言っているかな」LAN端子を抜いて、バシリデスは呟いた。「どう思う、アブラクサス=サン」11
2016-08-17 21:33:03「予想をするには判断材料が少なすぎる」椅子に座った男が答えた。「それに興味もない」「まあそうだろうよ。……さて、少し早いが、私は帰るぞ」「私のソウルのデータを取るのではなかったのか?」「ニンジャスレイヤーがラースヤを殺した。じきにここに来る。巻き込まれては敵わんよ」12
2016-08-17 21:36:00「そうか。ニンジャスレイヤーが来るか」男はしばし、虚空に思いを馳せてから言葉を続ける。「オイランドロイドも来るか?」「恐らくはな。4つもソウルを取り戻した以上、じっとしていることなどできんだろうよ」「うむ。それなら話は早い」男は立ち上がり、机の上に置いてあった刀を手にとった。13
2016-08-17 21:39:02「バシリデス=サン」「何だ」「ニンジャスレイヤーに残ったソウル、何%ぐらいだ?」抜身の質問に、バシリデスは絶句した。「何を」「責めてはいない。何事も失敗はつきものだ」少しの間の後、バシリデスは言った。「10%以下だ」「なるほど。1割以下の力で、4人を屠ったのか。流石だ」14
2016-08-17 21:42:03誰にも告げてはいなかったが、バジリデスはニンジャスレイヤーのソウルを全て奪えたわけではなかった。周到なトラップを仕掛けた上で、6人がかりで襲いかかっても、サイバーカラテドレインで全てのソウルを吸い出せるほどの決定的な隙を作ることはできなかった。15
2016-08-17 21:45:03ソウルを5分割したのも、容量だけの問題ではない。1度に全てを吸い出そうとすれば、それだけ長く死神の間合いに入る。決してカラテが高くないバシリデスにとっては危険過ぎる。それ故、5回に分けてソウルを吸い出した。だが、ニンジャスレイヤーには僅かなソウルの残滓が残ってしまった。16
2016-08-17 21:48:01「どうして気付いた、アブラクサス=サン」「簡単な推測だ。全てのソウルを吸われたなら、カラテを振るうこともままならないはずだ。それに私のソウルは、あの死神の1/5というには、いくらなんでも少なすぎる気がしてな」この男の異様なニンジャ第六感の良さを、バシリデスは失念していた。17
2016-08-17 21:51:08「すまぬ。だが信じてくれ。騙していたわけではない」「ああ。分かっているとも。ただ確認がしたかった」アブラクサスはカタナを僅かに抜き、白刃を確かめると鞘に収めた。「ナラクのソウルを完全にするには、ニンジャスレイヤーを殺さなくてはいけない、ということをな」18
2016-08-17 21:54:06「……ナラク?」「教えてくれるんだ。私の頭の中のソウルが」謎めいた笑みを浮かべるアブラクサス。バシリデスはそれに不吉なものを感じた。少ない荷物をまとめて、エレベーターへ向かう。これ以上、ここにはいられない。「武運を祈っておくよ」「ああ。期待しててくれ」エレベーターが閉じる。19
2016-08-17 21:57:13ビルからビルへ渡り歩いていたフジキドとナラクであったが、襲撃地点から十分離れた所で一度立ち止まった。「どうした?このまま敵のアジトに向かうのではないのか?」「無論、そのつもりだ」フジキドはLANケーブルを取り出した。「その前にオヌシにソウルを流しこむ」21
2016-08-17 22:00:20ナラクは、フジキドが手に持つものを見た。ラースヤの生首だ。「のう……フジキドよ。それは後でも良いのではないか?」「何?」フジキドは訝しんだ。あのナラクが、自分の力を取り戻すことを遠慮することがあるだろうか。「何を企んでいる、ナラク」「何も企んでおらぬわ、バカ!」「なら何故?」22
2016-08-17 22:03:05