【姫騎士ゾンビVSサムライオーク】後編

2
南雲麗/基本的に宣伝垢/不定期更新マン @nagumorei

【姫騎士ゾンビVSサムライオーク】【後編】

2016-08-24 17:38:39
南雲麗/基本的に宣伝垢/不定期更新マン @nagumorei

(前編のあらすじ) オークの塒の奥底で、死したる姫騎士が1人ゾンビと化した。 彼女に喰われたものはゾンビとなり、それに喰われたものもまたゾンビと化す。 地獄のねずみ算により追い詰められたオーク。 しかし、1匹の『変わり者』がゾンビ殲滅へと歩を進めたのだった。

2016-08-24 17:42:58
南雲麗/基本的に宣伝垢/不定期更新マン @nagumorei

一見頼りない、細身にして片刃の剣。しかし彼はこの刀の恐ろしさを知っていた。 かつて、1人の武人が塒を襲いに来たことがあった。彼は知恵者であり、洞窟に火を放り込んでオークを炙り出さんとした。 結果から言えば目論見は当たった。燻り出されたオークが『変わり者』だったことを除けば。㉓

2016-08-24 17:46:19
南雲麗/基本的に宣伝垢/不定期更新マン @nagumorei

『変わり者』のオークは投げ込まれた火に気付くと、それを直ちに消火した。そして燻り出されたフリをして武人に襲い掛かる。その時だ。武人は片手一本で恐るべき剣閃を繰り出した。 風切り音を残して空を切った細身の刀が、彼の頬に一筋の傷を与えた。オークは自分が無手で挑んだことを後悔した。㉔

2016-08-24 17:49:34
南雲麗/基本的に宣伝垢/不定期更新マン @nagumorei

それでも彼は結局生き延びた。他の仲間が駆け付け、武人を取り囲んで叩いたのだ。他に嬲る相手も居ないことを確信したオーク達の暴力は凄まじいものであり、知恵者の武人をもってしても敵わなかった。 全てが終わった後、『変わり者』は火種と武器を自分のものとした。それを使いこなす為に。 ㉕

2016-08-24 17:53:14
南雲麗/基本的に宣伝垢/不定期更新マン @nagumorei

修練の際に改めて見たその刀は、やはり変わった刀だった。片刃で細身。しかしよく切れる。そしてなにより、その気になれば片手でも扱える。 読者の皆様に分かりやすく言えば、日本刀に近い特徴をその刀は有していた。 彼はそれを『役に立つ』と確信した。そして、只管に振り続け、斬り続けたのだ。㉖

2016-08-24 17:56:52
南雲麗/基本的に宣伝垢/不定期更新マン @nagumorei

洞窟の奥に佇むゾンビの女王。彼女には座る玉座も傅く配下も居なかった。 彼女はかつて、武芸に長けた姫騎士だった。都に留まるをよしとせず、民の声に応えては東西を駆けずり回っていた。 彼女が死に至った一件もまた、同じであった。民の願いに応じ、姑息な獣を成敗する。その程度に考えていた。㉗

2016-08-24 18:03:00
南雲麗/基本的に宣伝垢/不定期更新マン @nagumorei

だが現実は違った。考えの甘さは慢心に変わり、成敗の行為は侵入者への鉄槌と変じた。 囲まれ、追い詰められた。武装を剥がされ、狂った宴へと連れ込まれた。尊厳を、命を奪われた。 しかし、なんということであろうか。それは彼女の意志の産物なのか。彼女は今、腐肉の女王として其処に在った。㉘

2016-08-24 18:06:15
南雲麗/基本的に宣伝垢/不定期更新マン @nagumorei

彼女は剣を取る。骨と血肉で構成されたとは到底思えない程の質量と威容を、その剣は備えていた。 そして駆け出した。生者の気配を、濃密に感じたのだ。道中、彼女は散らばる肉を貪り、更に姿を変える。 装束は更に鋭さを増し、刀は禍々しく脈動。その目は朱く光り、髪も逆立つ程の覇気を備える。㉙

2016-08-24 18:09:22
南雲麗/基本的に宣伝垢/不定期更新マン @nagumorei

彼女は今、『姫騎士ゾンビ』として最上級の力を有していた。 ㉚

2016-08-24 18:12:09
南雲麗/基本的に宣伝垢/不定期更新マン @nagumorei

そしてついに両者は対峙した。 かたやオークの変わり者。日本刀を片手に敵を睨んだ。 かたや姫騎士ゾンビ。得物の切っ先をオークに突き付けた。 両者の距離、僅かに刀2つ分。 そして水滴が落ちた。 「ヴォオオオオ!!!!!」 「PUGIIIII!!!!!」 それを切欠に両者が吠えた!㉛

2016-08-24 18:21:57
南雲麗/基本的に宣伝垢/不定期更新マン @nagumorei

上段と下段からぶつかり合った刀は、両者に手の痺れを残して再び手元へと戻る。だがそれで終わる両者ではなかった。 上下左右あらゆる軌道から互いを狙い、その度に剣のぶつかる音が洞窟に反響した。 「OON!!!」 オークの放った胴を両断するが如き一撃。 しかしそれは両手剣に弾かれた。㉜

2016-08-24 18:25:07
南雲麗/基本的に宣伝垢/不定期更新マン @nagumorei

「ボァアアア!!!」 姫騎士はそのままオークの刀を跳ね除け、振りかぶっての剣戟。命を狩りに行く両断の剣。 「PUGII!」 オークは飛び退く。しかし連続攻撃をさせぬ為に着地で踏ん張り、再度突っ込む。今度は心臓を狙う刺突の一撃。が、それをゾンビは刃を滑らせて逸らした。 ㉝

2016-08-24 18:28:19
南雲麗/基本的に宣伝垢/不定期更新マン @nagumorei

攻防一拍の度に互いに距離を置き、そしてまた打ち合う。その度に両者は消耗し、細かく負傷した。 「GYYE……!」 「ウヴァアア……!」 互いに致命を狙い合う攻防は既に10を越えた。両者は相手を見据えたまま膝をつき、僅かな休息を取る。示し合わせた訳ではない。たまたまそうなった。㉞

2016-08-24 18:31:57
南雲麗/基本的に宣伝垢/不定期更新マン @nagumorei

「PUGYYE……」 先に立ったのはオークだった。一歩一歩を踏み締め、姫騎士ゾンビの元へ。 「ヴァガッ……」 だが、彼女が大人しく斬られる事はなかった。攻防の中で千切れつつあった手足を、鎧装束を犠牲に再生させる。そして両者は静かに向かい合う。敵意を超え、呼吸までもが重なった。㉟

2016-08-24 18:36:17
南雲麗/基本的に宣伝垢/不定期更新マン @nagumorei

そして。始まりと同じように、雫が落ちた。 「GAAAAA!!!」 「ダヴァアアア!!!」 裂帛の気合と共にオークが首を、姫騎士ゾンビが頭の両断を狙って得物を振った。 ……キィン。 姫騎士の剣が地を打つ音が響いた。オークの刀は、彼の手によって敵の首。その平行線上に保たれている。㊱

2016-08-24 18:39:29
南雲麗/基本的に宣伝垢/不定期更新マン @nagumorei

長いようで短い一瞬。その後。 姫騎士の首が静かに落ちた。 オークは長く残心をした後、二目と見られぬ程にその首を刻んだ。 其処に再度の復活への恐怖があったか否か。それはオーク自身にしか分からない。 全てを終えた後、彼は身体を岩肌に預けた。そして回復を待ち、来た道を戻って行った。㊲

2016-08-24 18:43:44
南雲麗/基本的に宣伝垢/不定期更新マン @nagumorei

彼は酷く傷付いていた。今までは戦いによる興奮作用で気が付かなかったが、所々に深い傷を負っていた。そして、一部に至っては腐り始めていた。 身体を引きずり、霞む目を必死にこすって、彼はようやく外へと這い出した。同類達が飛び出し、彼を支えようとする。しかし彼はそれを断った。㊳

2016-08-24 18:49:34
南雲麗/基本的に宣伝垢/不定期更新マン @nagumorei

やがて、洞窟に火が投げ入れられた。全ては『変わり者』だった男の指示だった。保障はないが、焼けば奴等は跡形もなくなるだろうと彼は踏んでいた。 仲間達は住処を失ったが、元よりオークは陽の下でなければどうとでもなる生き物だった。 彼は仲間達が塒を離れたのを確認すると、池へと向かった。㊴

2016-08-24 18:53:28
南雲麗/基本的に宣伝垢/不定期更新マン @nagumorei

つい数時間前まで釣りをしていた池に、彼は佇んだ。腐りつつある己の身体に、彼は気付いていた。自らを同じにしないためには、手段は一つだけだった。 やがて胴から切り離された彼の首が、水音を立てた。そして身体も、静かに崩れ落ちた。 その後、この惨事は2度とは起きなかった。㊵

2016-08-24 18:58:56
南雲麗/基本的に宣伝垢/不定期更新マン @nagumorei

ドージョーヌシ:長らく皆様のTLをお借りしてしまいました。これにて『こけら落とし作品・姫騎士ゾンビVSサムライオーク』完結でございます。 誠に失礼致しました。

2016-08-24 19:03:00
南雲麗/基本的に宣伝垢/不定期更新マン @nagumorei

なお、もしこの作品にご感想、ご指摘を頂けるようでしたらば。 タグ #NGM_DJ、あるいはリプライにて呟いて頂けると平身低頭五体投地して喜ぶ次第でございます。 また、本作品は後々改稿の上、単発としてカクヨムの方に投稿する予定です。

2016-08-24 19:06:18