希有馬さんによる最近の宮崎駿先生論

駿先生は、何を越えようとしているのか?!
宮崎駿 ジレンマ 井上純弌 巨匠
34709view 7コメント
113
井上純一(希有馬) @KEUMAYA
じゃあ、最近の宮崎駿夫論 始めますか。
井上純一(希有馬) @KEUMAYA
宮崎駿はポニョのドキュメンタリーでこういってる(うろ覚えだけど)。「ファーストカットが決まると、映画の大部分は決定してしまう」。これは宮崎駿のように天才じゃない、凡人の自分にも分かる。
井上純一(希有馬) @KEUMAYA
つまり、ファーストカットが決まると、結末が決まってしまう。そして結末に至るまでに必要なシーンも決まってしまう。たとえば、ラピュタで言うと……
井上純一(希有馬) @KEUMAYA
飛空挺で悪漢に追われる女の子→女の子が落ちる。となれば、これはもちろん女の子を救うお話であり、悪漢は敗れるお話だ。するとその女の子を救う人間が出てくるシーンが必要になり、女の子がなぜ追われているかのシーンが必要になり、むろん悪漢を倒すシーンが必要になる。
井上純一(希有馬) @KEUMAYA
凡人な自分はこの程度だけど、宮崎駿クラスの天才になれば、どのシーンにどれだけの時間が必要で、そのためにはどんな演出が必要になるかは、すぐに計算できてしまうだろう。これをして「最初のシーンが決まると、映画の大半が決まってしまう」と言っているのだ。
井上純一(希有馬) @KEUMAYA
彼のイメージ力で、どのくらい濃密に想像し、計算されているかはもう凡人の想像の及ぶところではないです。
井上純一(希有馬) @KEUMAYA
で、口汚い往年のファン(俺とか)は、最近の宮崎映画にこういうわけですよ。「最近の宮さんのシャシンはわけわかんない」「ラピュタのようなエンタメがなぜやれない?」「物語になってない」「麒麟も老いては駄馬にも劣る」とか(俺とか)
井上純一(希有馬) @KEUMAYA
でも、これは宮崎駿が劣ったわけではないのです。逆に彼が映画に真摯に向き合っている証明なのです。
井上純一(希有馬) @KEUMAYA
みなさん知っての通り、宮崎駿は絵コンテを途中まで描いて、そのまま制作に突入します。むろんこれは制作スケジュールが押せ押せになってしまうために、仕方なくやってることですが、しかしもう一面として宮崎駿が意図してることがあるわけです。
井上純一(希有馬) @KEUMAYA
それは制作ドキュメンタリーを見てると分かるんです。彼がやろうとしてるのは……
井上純一(希有馬) @KEUMAYA
映画を越えようとしてるんです。映画を越えた向こうに行きたいらしいんです。
井上純一(希有馬) @KEUMAYA
つまりです。宮崎駿はファーストカットの時点で、結末まで見えてしまうわけですよ。これを監督になった1970年ぐらいからずーーーーーっと繰り返してるわけです。あなたが天才宮崎になったことを想像してみてください。かなり難しいと思いますがw
井上純一(希有馬) @KEUMAYA
どんな企画を思いついても、ファーストカットを思いついた時点で、全てのカットが見えてしまう。「つまらない!!」と思いません? 「これでいいのか?」と思いません? 「ありきたりだ!」と思うだろうし、もしかしたら「このまま作ることは観客に真摯に対峙してない!」と思うかも知れません。
井上純一(希有馬) @KEUMAYA
そこであなたは考えるわけですよ。「今は思いつかないが、もしかしたら作業中になにかインスピレーションが下りてくるかもしれない……」
井上純一(希有馬) @KEUMAYA
かくて、ハウルは絶対に解決しきれない問題が後半に集中することになり、ポニョは悲劇を回避しようとするあまりにボンヤリとしたよく分からない映画になってしまうわけです。 http://bit.ly/fOj1c7
井上純一(希有馬) @KEUMAYA
そして、宮崎駿を苦しめているジレンマがあるのです。それは彼が『子供が見る長編漫画映画は必ず希望を持ったハッピーエンドでなければならない』と思い込んでいることです。これが実は最大にキツイ枷になっているのです。
井上純一(希有馬) @KEUMAYA
だから宮崎映画は、かつての『物語を越えた何か』をもたらした(そして物語的には破綻した)名作達の取った「投げっぱなしエンド」とか「主人公が挫折して終わり」とか「解決できない謎を残し物語は終わる」とか、そういうことができない。そしてなにより……
井上純一(希有馬) @KEUMAYA
ハッピーエンドこそが、「物語が物語の構造をしていなければ得られないもの」なのです。
井上純一(希有馬) @KEUMAYA
ラピュタでラスト5分で出てきたキャラが「バルス!」と唱えて、ラストの「さんざん苦労してこれっぽっちとはね」「へへへ~!!!」で笑えるかって話ですよ。残念ながらかなり難しい。
井上純一(希有馬) @KEUMAYA
「あのキャラ何!?」って話になるでしょう?
井上純一(希有馬) @KEUMAYA
だから宮崎駿が天才な以上、宮崎映画がラピュタのような典型的な、美しい、完璧なエンタメに戻ることはないのです。なぜなら彼は天才だから。しかし!!
井上純一(希有馬) @KEUMAYA
だからといって悲観することはないのです。
井上純一(希有馬) @KEUMAYA
映画というのは完璧であればいいという物ではありません。多くの名作映画は「よくできてない」部分。ライムスター宇多丸先生の言うところの「ほつれ」があるものなんです。その「ほつれ」が映画を豊かにすることもあるのです。
井上純一(希有馬) @KEUMAYA
聞くところによると欧米の評論家の間では「ラピュタ」より「千と千尋」の方が評価が高いと聞きます。糞アニメファンの俺に言わせると「千と千尋」は駿作品の中では下から数えた方がいいゴミですが、そんなことはないわけです。
井上純一(希有馬) @KEUMAYA
つまり完璧だった駿先生は、行きすぎることで図らずも「映画の醍醐味であるほつれ」に到達したのです。ある意味、彼は勝った。宮崎映画を越えたんです。これから作られる作品もまた、我々の予想を超えた、めくるめくものになるでしょう。
残りを読む(3)

コメント

井上純一(希有馬) @KEUMAYA 2011年2月16日
まとめてくれてありがとうございます。もちろん、「ラスト5分少女」はものの例えであり、映画によって「なんであんだけ人が死んでるのに、ほのぼのにこやかに終わるんだよ!」とか切り替えて使ってください。
楓里(ふーりP) @fuhri 2011年2月17日
コメントありがとうございました!
碓井央 @usuiou 2011年2月17日
いったんできあがってしまったものをただなぞるだけってのは創作としてはつまらないですよね それは分かります ただアニメという共同作業においてはやり直しがきかないからシナリオが完成しない状態で作業続行はリスクが高いのも確かですね
Sirius☆彡 共謀中一般人 祈ります @sitesirius 2012年1月23日
今だからわかる、ポニョの鮮烈さ… #宮崎駿 QT @KEUMAYA: かくて、ハウルは絶対に解決しきれない問題が後半に集中することになり、ポニョは悲劇を回避しようとするあまりにボンヤリとしたよく分からない映画になってしまうわけです。 http://bit.ly/fOj1c7
mastakos @mastakos 2012年8月24日
確か魔女の宅急便の本(ピンクのやつ?)に「映画の0号を見た時ががっかりする、構想とこんなに違うのか、あとは下がってけりをつけるだけ」と書いてたと思います。先で思いつくであろう予測も含めて作り始めるけど周りの状況や体力の衰えなどでそう予測通りはいかないよ、ってことなんでしょうね
川本幸作 @kaspart_j 2012年8月24日
しかし…これ以上発展しないことが判っていてよく完成までの1-2年間制作のモチベーション続くなぁ。天賦の才は勿論ですが、そのプロ意識に脱帽しますわ。 他人の作品見てもそうなんだとしたら、ゲド戦記にあれだけ反対した理由が判る…
石膏粉末P 3Dプリンタ@東急ハンズ渋谷 @sekkou_p 2012年8月25日
仮面ライダーのデザインができあがる過程における「初期デザインは格好良すぎるのでボツにして、不気味なドクロをモチーフにした」という逸話に通じるものがありますね。
ログインして広告を非表示にする
ログインして広告を非表示にする