改訂版橋

夏の終わりに、あなた涼し気な空気を。
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女王様 @Q__rider

──ねぇ、マスター?ニホンでは夏に怪談っていう怖い話をするんでしょう?ね、私もしてあげましょうか? #女王怪談

2016-08-28 00:54:45
女王様 @Q__rider

(暗くなった部屋に蝋燭を灯し、鈍く光る蝋燭の火への顔を寄せ薄ら笑いを浮かべ)長くなるかもしれないけれど、この蝋燭が消えるまでには終わらせるからお付き合い。頂けるかしら? #女王怪談

2016-08-28 00:56:59
女王様 @Q__rider

【企画開始】 改訂版橋女、二夜に分けて語り部として女王メイヴが語ります。注意に関しては固定の確認をお願いします。また、企画中はアイコンの変動がございますのでご注意下さい。 #女王怪談

2016-08-28 00:59:10
女王様 @Q__rider

ある国に大きな立派な橋があったの。橋だしね、勿論大きな川もあった。男は毎夜毎夜その橋を通って家路につくのが日課だったの。何故か?男は結婚を控えてたのよ。相手は美しい髪の箱入り娘。女の父親に武功を立てねば嫁にはやらぬ。なんて言われたんだけどそれはまた別の話。 #女王怪談

2016-08-28 01:00:11
女王様 @Q__rider

男はその橋を通って、嫁入り行列をする予定だった。少年の頃初めて出会いやっと迎え入れられる事が叶った嫁に。思いを馳せながら橋を渡るのが日課だった。 #女王怪談

2016-08-28 01:00:59
女王様 @Q__rider

ある夜、男がいつも通り橋を通っていると水の…風も凪いだ夜なのに水の音が聞こえたの。橋の上から当たりを見渡すと女が一人見えた気がした。寒い夜よ、氷の様な水に女がいるのよ。 #女王怪談

2016-08-28 01:01:26
女王様 @Q__rider

「おい!お前!何やってんだ!死にたいのか!?」橋の上から思わず声をかけるとぼんやりと輪郭だけ見えていた様な女がはっきりと、目視出来た。女はとても、美しかった。自分の妻となる女と比べても謙遜無い程に。 #女王怪談

2016-08-28 01:02:26
女王様 @Q__rider

「はい、何かしら」「何やってんだお前、寒くて凍えちまうぞお前」「死なないわ。」ゆるりと振られる頭に揺れる髪だけは、婚約者の方が美しいな。なんて男は頭の片隅で思ったのでしょうね。ですがそれを差し引いても、女は酷く美しかった。 #女王怪談

2016-08-28 01:04:23
女王様 @Q__rider

「美しいな、お前は」不意に、頭の片隅でだけ思っていた言葉が、本当に。自然に、川が流れる様に。口から飛び出してきた。男は口元に手を当てるも飛び出した言葉は元には戻せない。その言葉を聞いた女は川の水に濡れ不格好だと言うのに恐ろしい程美しく微笑んだの。 #女王怪談

2016-08-28 01:05:16
女王様 @Q__rider

「よく言われるわ。貴方もとってもいい男……ねぇ、また会ってくれる?」毎夜、川に水を浴びに来ているの。耳障りのいい甘い言葉尻、男が頷くのを見ると女は消えたわ。消えた様に見えた。男がはっとすると女は見える範囲に居なかったの。結婚まで残るところ二十二日を残す日だった。 #女王怪談

2016-08-28 01:06:33
女王様 @Q__rider

───なぁに?え、モデル?……さぁ、どうかしら。マスターはどう思う?誰を想像しているの? #女王怪談

2016-08-28 01:07:46
女王様 @Q__rider

───あはっ!あはは!想像力は人の恐怖を煽るもの。マスターが思うまま、想像して頂戴よ。……ね? #女王怪談

2016-08-28 01:08:58
女王様 @Q__rider

次の夜 男は女の姿や交わした言葉を忘れていた。本当にぽっかりと忘れていたの。そうして昨日と同じ様に歩いていると水音が聞こえる。ふと、男は女の事を思い出した。橋の上から水辺に近付く男に女は優しく微笑む。「また来てくれたのね。嬉しいわ!」少女の様な微笑み。 #女王怪談

2016-08-28 01:10:01
女王様 @Q__rider

男は結構な色男でね、すぐピンと来たはずよ。「ああ、コイツオレにホレてるな」って。勿論そのとおり。水を浴びて白くなった頬は薔薇の色に染まり女は熱っぽく男を見ていたわ。そしてこう言ったの「今度はもっと近くであなたが見たいわ」って。 #女王怪談

2016-08-28 01:10:37
女王様 @Q__rider

男はまた頷いた。いいえ、なんだか頷く事しか出来なかったの。女の頼みを何故か断れなかった。また、女は消えたわ。消えた様に見えた。男がはっとするともう女の姿は無かったんだもの。 #女王怪談

2016-08-28 01:11:39
女王様 @Q__rider

この日も。この橋を通り終える頃には女の姿を朧気にしか思い出せなくなっていた。結婚を控えて二十一日を残す日だったわ。 #女王怪談

2016-08-28 01:11:54
女王様 @Q__rider

次の夜も、次の夜も、何度も何度も。何度も何度も何度も何度も!男は女と会った。優しく甘く囁かれる言葉を、女の姿を、男はどうしてだか、橋を渡り終える頃には忘れて、霞んでしか思い出せなくなっていた。いいえ、日が経つ事に女の姿が濃くなる気がした。 #女王怪談

2016-08-28 01:13:13
女王様 @Q__rider

そして、美しい女の頼みは夜毎に過激になっていくの。「もっともっと近くであなたが見たいわ」「あなたに触れたいわ」「あなたと手を繋ぎたい」「あなたの首に手を回したい」「あなたに口付けられたい」「あなたを愛したい」「あなたに愛されたい」「あなたの嫁になりたい」 #女王怪談

2016-08-28 01:16:53
女王様 @Q__rider

最後の願いを聞いた時、男は結婚を三日後に控える日になっていた。そこではっと、初めて、男は女の頼みを断ったの「それは出来ないオレは三日後に結婚するんだ、嫁になるのは美しい髪の女、裏切る事は出来ない」 #女王怪談

2016-08-28 01:18:24
女王様 @Q__rider

女は一瞬、まるで鬼女にでもなった様に目を釣り上げて怒った様に見えたわ。そこで、またふっと、女は消えたの。消えた様に見えた。男がはっとするともう女の姿は無かったんだもの。その夜だけは、橋を渡り終えても女の姿を男は覚えてた。少しだけ、霞んでいるけれど。 #女王怪談

2016-08-28 01:19:11
女王様 @Q__rider

男は朝起きて悟ったでしょうね。育ての親と、得物である槍の師匠に「自分は憑かれている。これは不味いな。性根の腐った茨よりも深く絡んでくる女の霊だ」と事細かに仔細を伝えた。育ての親は「そんな別嬪なら一夜お相手願いたい」なんて冗談を言って男を和まそうとしたけれど師匠は… #女王怪談

2016-08-28 01:23:36
女王様 @Q__rider

「橋とはお前が毎夜通るあの橋か、女はどんな姿だ、目の色は金では無かったか?」なんて意味深に聞いて来るのよ。男は女の姿を、目の色を思い出した。桃色だったの。目の色は。桜の花の様な色。それを伝えると師匠はほっと胸を撫で下ろしたの。 #女王怪談

2016-08-28 01:24:50
女王様 @Q__rider

「なら良かった。あの橋、あの川の水に二十一夜身を浸すと生きながらにして鬼神となるらしい。鬼神ならば太刀打ち出来ん。それ、これを持っていけ。」 #女王怪談

2016-08-28 01:27:41
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