窒素(硝酸イオン)が多いとなぜ作物はおいしくないのだろうか?

SHINICHIRO HONDAさんによるツイートをまとめました。
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SHINICHIRO HONDA @s_honda8541

窒素(硝酸イオン)が多いとなぜ作物はおいしくないのだろうか?(Twitter版)

2016-09-03 13:57:05
SHINICHIRO HONDA @s_honda8541

アメリカのスーパーで買う野菜は全然おいしくない。セロリは香りがなくて味が薄いし、逆にホウレンソウやレタスはエグい。あちこちのスーパーで買って食べてみたが、例外なくまずい。

2016-09-03 13:57:21
SHINICHIRO HONDA @s_honda8541

オーガニックのマーケットで買った野菜は、日本の野菜と同じくらい美味で、香りとスパイシーさは日本の野菜より強い(品種の違い?)

2016-09-03 13:57:38
SHINICHIRO HONDA @s_honda8541

一般にアメリカの農地の土は、腐植率が高く、収穫量も多い肥沃な土だ。にもかかわらず、味がよくないのは、速効性の窒素肥料を使用するせいだと思う。いくら土壌中の腐植が多くても、腐植物質(腐植酸、フルボ酸など)には、アンモニウムイオンNH4+や硝酸イオンNO3-を保持する力はあまりない。

2016-09-03 14:00:28
SHINICHIRO HONDA @s_honda8541

土壌養液中に硝酸イオンが豊富なため、硝酸イオンのぜいたく吸収がおこり、野菜の細胞中の硝酸イオン濃度が高くなるだと思う。

2016-09-03 14:00:45
SHINICHIRO HONDA @s_honda8541

ノースダコタの畑作農家に、肥料は何を入れているのかたずねると、窒素肥料以外は施用したことがないという。「リン酸は入れないの?」というと、「リン酸‥‥、農業高校のときに習った」との返事だった。

2016-09-03 14:01:09
SHINICHIRO HONDA @s_honda8541

それでも、この農家の小麦や大豆の収穫量は、日本の平均収量の1.5倍はとれる。3家族の親子兄弟からなる家族農場だが、耕作面積は3600ha!で、もちろん堆厩肥を入れるなどという発想はない。 pic.twitter.com/XyISRrlVty

2016-09-03 14:02:08
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SHINICHIRO HONDA @s_honda8541

そのかわり、小麦→大豆→ビート(テンサイ)という輪作によって、土壌に有機物を補給している。「収奪農業」は養分を補給しないで土から奪うだけという意味なら、窒素以外は完全な収奪農業だ。

2016-09-03 14:02:32
SHINICHIRO HONDA @s_honda8541

コメでもジャガイモでも野菜でも、窒素の含有率が高くなるほど、味は悪くなる。窒素は植物の生長に直接に関与する養分だし、雨で土壌から流出する量も多い。そのため、農家は作物を少しでも多くとろうとして、どうしても窒素を多く入れてしまう。

2016-09-03 20:59:17
SHINICHIRO HONDA @s_honda8541

昔、ある地方の稲作農家と話していたときに、その地方では、コメの多収穫をねらって、穂肥(追肥)を2回施用しているのだが、自分の家の飯米用の田んぼには穂肥を1回しか振らない。なぜ1回しか振らないのか聞くと「まずくなるから」とあっけらかんと答えていた(20年くらい前の話)。

2016-09-03 20:59:29
SHINICHIRO HONDA @s_honda8541

窒素は植物のみならず、人間の身体を構成する基本元素の一つだ。アミノ酸もタンパク質も窒素からできているし、うまみ成分のグルタミン酸もイノシン酸も窒素の化合物だ。なのに、どうして我々は窒素(硝酸イオン)が多いと「まずい」と感じるのであろうか。

2016-09-03 20:59:50
SHINICHIRO HONDA @s_honda8541

堆厩肥、有機質肥料、化学肥料を畑に投入すると、それらに含まれるアンモニウムイオンNH4+が土壌中に溶出する。NH4+は硝化菌(亜硝酸菌、硝酸菌)の働きで、硝酸イオンNO 3 -に変わる。植物の多くは、窒素を硝酸イオンで吸収する。

2016-09-03 21:00:21
SHINICHIRO HONDA @s_honda8541

根から植物体内に入った硝酸イオンは、再びNH4+に還元される。植物細胞の中では、酵素の作用によって、NH4+からグルタミン酸が合成される。

2016-09-03 21:00:34
SHINICHIRO HONDA @s_honda8541

植物が合成する各種のアミノ酸は、おもにこのグルタミン酸をもとにして作られる。各種アミノ酸から、さまざまなタンパク質が合成されて、植物の茎、葉、根、花、子実ができる。 pic.twitter.com/w3qLFsCGC9

2016-09-03 21:01:16
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SHINICHIRO HONDA @s_honda8541

一方、人間をふくむ動物は、植物のタンパク質、脂肪、炭水化物(でんぷん、糖)を食べて、養分やエネルギーとして利用する。植物のタンパク質は消化酵素によって、タンパク質→ぺプチド→アミノ酸へと分解され、体内に吸収される。

2016-09-03 21:02:08
SHINICHIRO HONDA @s_honda8541

このアミノ酸を材料にして、さまざまなタンパク質が合成され、血液、筋肉、皮膚などの身体が作られる。利用されたあとのアミノ酸は、アンモニアと炭素骨格に分かれる。アンモニアは尿素回路を通じて尿素に変えられ、体外に排出される。 pic.twitter.com/GWVzlP6vZ5

2016-09-03 21:02:41
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SHINICHIRO HONDA @s_honda8541

人体の細胞の中では、硝酸イオンNO3-は代謝反応に登場しない(存在しない)。アンモニアのほうは、排出物として登場する。植物にとっては、硝酸イオンやアンモニウムイオンは欠くことができない物質であるが、人間にとっては排出すべき物質である。

2016-09-03 21:02:54
SHINICHIRO HONDA @s_honda8541

これが、人間が、硝酸イオンやアンモニウムイオンが多い作物を「まずい」と感じる理由だと思われる。動物が進化の過程で、身体に必要な窒素化合物の合成を、植物にゆだねてきた結果なのであろう。

2016-09-03 21:03:09
SHINICHIRO HONDA @s_honda8541

文献 Donald Voet、Charlotte Pratt、ヴォート基礎生化学、東京化学同人

2016-09-03 21:03:27