部屋から出ようとしたら、禍々しい風采の男がのそりと入ってきた。簡潔に一言、「匿え」誰から、などと聞くまでもない。「クーちゃん! クーちゃんってば何処行ったの!?」彼女から逃げるなら、内実はともかく外見は女の私の部屋は甚だしく不適当だと思うのだが。
2016-07-05 12:48:43が、さすがに女王様は一室一室をご用改めするという発想は無いようで、声は部屋の前から遠ざかっていった。この部屋での恐るべき修羅場は回避された。「行ったが」「ああ」もっとも、狂王様は私のベッドに腰を落ち着けてすっかりおくつろぎあそばしていた。暫く付き合うしかないのだろうか……。
2016-07-05 12:56:29「おぬしは、あの馬鹿弟子の機嫌を何処で見分けておるのだ?」そんなことを訊いてくるスカサハは、何となく楽しげだ。「主に尻尾で」私も正直に答えた。「尻尾、……か?」「尻尾」重ねて答える。影の国の女王は、思い切り噴き出した。「ははは、これは良い! おぬしに掛かれば所詮はあれも狂犬か!」
2016-07-05 20:44:54「しかし、君も大変だな」「いえ、まあ働くのは構わないんですよね。私、生前、最後の方は全然お役に立てなかったから、頼りにされるのは嬉しいくらいなんです。でも……」「でも?」「聖杯でも、病弱は治せないっていうじゃないですかー! それ込みの英霊とか酷いですよー!」「あー……」
2016-07-06 17:45:56「呪いの一種のようなものだからな__」「そうなんですよ、本気で聖杯にはがっかりです! あんなのノッブに爆弾に……は駄目です、被害が半端ない……どーしよもないですねアレ」はー、とテーブルになついてしまった天才剣士に、煎茶と大福をそっと差し出した。「まあ、これで少し寛ぎたまえ」
2016-07-06 17:56:01「わっ! ありがとうございます、美味しそう! ……そういえば、エミヤさんも日本人でしたね」「一応な」「西洋のお菓子も美味しいけど、やっぱりこっちの方が和みますねえ」と、用意した甲斐以上に喜んでくれたのはいいのだが。
2016-07-06 18:04:28「次のイベント、日本人特効だから。特に沖田さん、期待してるからねー」「は、はい、頑張りますとも!」マスターからの宣告に、沖田総司の笑いが少し虚ろだった気がした。 #弓子inカルデア
2016-07-06 18:08:03最初は、子供向けにささやかな楽しみとして菓子作りなどしていたが、このところ三時頃になるとやたらと食堂に人もといサーヴァント達が集まってくる。誰だ広めたのは。 #弓子inカルデア
2016-07-14 15:02:16「酒の肴に上等も下等もあらへんよ。違いがあるとしたら、酒が旨く飲めるかどうか、やね」額に角持つ鬼が、実に艶やかに笑う。「せやから、何も心配せんでもええよ。あんたはんの作らはる料理は、ほんま食べる相手のことよう考えてるの分かるさかい」「……そうかね」空になった酒杯に注ぎ足す。
2016-07-16 15:36:27「おおきに。ここは雪も月も花もないからなあ。せめて、可愛いおなごの酌で楽しみたいもんやわ。……ああ、そや」実に面白そうに、酒呑童子は私の顔を覗き込んできた。「あんたはん、ほんまは男なんやってね? 何か二倍お得って感じがしていいわあ」この視線に捕えられたら、大抵の人間は逆らえまい。
2016-07-16 15:45:21「今日こそは、余に付き合って貰うぞ! 嫌とは言わさん! 言ってもいいが聞かぬからな!」どーん、と私の前に仁王立ちする赤い衣装の皇帝陛下……後ろに積み上げているその箱は何だ。「まあ、何も言わずに従った方が面倒が少なくてすむと思いますけどぉ」無理矢理付き合わされてるのか玉藻の前。
2016-07-17 14:17:41「いや、付き合えと言っても」ついさっき、昼食の後片付けを終え、部屋にでも戻ろうかとしたところにこれである。「そなたが本来男であることは、よく余も知っておる。だがな、せっかく女の身体になったのだから、こう、もっと華やかに装えというのだ! 見目は悪くないのだ、勿体なかろう」
2016-07-17 16:06:02あれは全部衣装箱か!「と、いうわけだ。良いな?」「よくな」「聞かんと言ったぞ」「あーあまり抵抗すると、呪術で縛れって言われてるんですよね私。無駄な魔力使いたくないんで、大人しく従って下さいまし」「……」脅迫か。まあ、大騒ぎのあげくにカルデア内破壊行動が起こるのも良くは無い、が。
2016-07-17 16:15:00仕方が無いので、降参のポーズをする。「よし、分かれば良い。ではまず、脱ぐが良い」満足そうな皇帝陛下はいきなりこれである。「……脱ぐ?」「当然だ、脱がねば別の服を着られぬではないか。さて、どれが良いかな……」と、衣装箱をごそごそと探る。どれだけの服を持ってきたのだ……。
2016-07-17 16:40:56「!?」と、あっけにとられているといきなり上着をはぎ取られた。実際、狐巫女が見た目よりも強引なのは知ってはいるが。「何なんだね!?」「往生際悪くしていないで、さっさと済ませてしまいましょうね、さっさと!」「……ところで君、なぜ、彼女の言うことに従っているのだ?」
2016-07-26 15:42:24すると、実に忌々しそうに玉藻の前は口を開いた。「……じゃんけんです」「む?」「だから! じゃんけんに負けたんです! あんな単純な遊戯に! この玉藻が!」そんなに悔しかったのか、尻尾の毛が逆立っているぞ。「まあ、そんなわけです。諦めてあなたもこの遊びにおつきあいくださいまし?」
2016-07-26 15:50:26いやいやいや。「着るものを決める前に何故脱ぐのだ!」「いやー本当に女の身体なんですねえ。服があのくーる&わいるどとやらの、破廉恥な裸革ジャンじゃなくて良かったじゃないですか」「その話は無かったことに」「まあそうでしょうねえ」言うなり、何故か玉藻の前は私の胸をわし掴んできた。
2016-08-02 23:30:05あまつさえ揉んでくる始末だ。「しかし大きいですこと……これ元は全部筋肉だったんでしょうか」「知らん!」相手が女性だと、どうしても私が抵抗出来ないことを知っているな……。「あ! キャス狐! そんな楽しそうなこと一人でずるいぞ! 余もやる!」何か違う! 何か違うぞ!!「君らな……!」
2016-08-09 12:41:36「むう、これはなかなか良い感触だな」「男だというのなら、こんなこと平気でございましょ」さすがに女性二人がかりで胸を揉まれる状況というのは……。「かまわん! かまわんぞ! 是非続けたまえ!!」……衣装箱の背後から、今までどうやって隠れていたのか物凄い重量級の物体が飛び出てきた。
2016-08-09 12:48:46「何故いる」「カエサル殿がこの衣装箱達を運ぶのを手伝ってくれるというので、手を借りたのだが」「いや実に眼福な光景。まさに役得とはこのこと! 素晴らしい、実に素晴らしい!」アサシンもかくやと言わんばかりの気配遮断ぶりだったが……。「演説ならよそでやれ!!」クラス相性ではこちらが上。
2016-08-09 12:59:13赤い物体を思わず蹴り飛ばしたら、思った以上に吹っ飛んでいった。「……」こほん、と玉藻の前が咳払いした。毒気を抜かれたとはこのことか。良かったのやら悪かったのやら。「では気を取り直しましょう。この赤いドレスとかいかがです?」「赤は余のシンボルカラーだが、似合う者には惜しまんぞ!」
2016-08-09 13:05:47