ウィッチハント・カーテンコールに関する思い出語りby作者
- kamishiro_b
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さて……ここからは前作ウィッチハント・カーテンコールの思い出語りです。新作も出るし区切りとしてやります。1年半前に著者コメントのJDCとうみねこのタイトルに釣られた人や、ラノベミステリという名の荒野を旅する開拓者(失礼)だけ読んでくだされ。
2016-09-06 21:19:28【ウィッチハント昔話:あのトリック】 色々考えましたが、やっぱりあのトリックの話をします。ネタバレはしませんが、これ読んでるような奇特な人は覚えてると思います。アレです。
2016-09-06 21:36:51【ウィッチハント昔話:あのトリック2】 まず私、アレをあんまり斬新だとは思ってません。「せっかくファンタジーだしトリックも派手にすっか」と思っただけで。「既存の密室トリック分類に含まれないトリックがあるとしたらなんだろう?」と考えたら、必然的にああなったわけです。
2016-09-06 21:42:23【ウィッチハント昔話:あのトリック3】 すごい世間知らずっぽいこと言いますけど、あのトリックには元になった別のトリックがあって、それは『たとえ見抜かれても犯人は絶対に捕まらない、究極の完全犯罪トリック』でした。冗談抜きです。ちゃんと説明すれば割と納得できると思う。
2016-09-06 21:45:23【ウィッチハント昔話:あのトリック3】 あのトリックは私にとって、その『究極の完全犯罪トリック』とかいう新本格的ロマンの塊みたいなやつをグレードダウンしたもの、という印象だったわけで、正直あんまり自己評価は高くない。なんかうまくハマったなあ、とは思いましたけど。
2016-09-06 21:47:50【ウィッチハント昔話:お蔵入りになった2巻】 いつか公開するかもしれないしサブタイトルだけ言うと、『超支配的殺人事件』でした。内容は1巻より尖ってた……っていうか、めっちゃうみねこだった。趣味に走りすぎ。よくあんなの集英社から出させてもらおうとしたなと我ながら震えます。
2016-09-06 22:08:27【ウィッチハント昔話:お蔵入りになった2巻】 1巻で触り切れなかった要素は、2巻で触れるつもりでした。特に処刑シーンの仕組み。結果的に単巻になったことで、その辺が粗や矛盾として残ってしまいました。「これはあえて説明してないよ」というエクスキューズを入れなかったのは反省点ですね。
2016-09-06 22:16:10書くときに考えたことあれこれ。
ここから先は、ウィッチハント・カーテンコールを書いたときに考えたことを資料として残します。
いちいちツイートする意義も薄いのでこういう形で。
一応、本格っぽい要素を持つラノベミステリで新人賞を取った人間が実践したこととして、そういうの書きたい人は参考にしてください。
失敗したことや反省点も書きます。
というか失敗談なのでそういう使い方しかできない。
ライトノベルでミステリを書こう! と思った私がまず私が考えたのは、ターゲット層の設定です。
なぜって、ラノベ読みの中に潜んだミステリファンにだけ対象を絞ると、市場規模が猫の額ほどになるのは明白だったからです。
ミステリを読んだことないラノベ読みをターゲットに含まないとお話しにならない。
わざわざこれを読んでるような濃い人は、あの小説を超マニア向けだと思ってるかもしれませんけど、実際のところは、むしろ全然ミステリ読んだことない人のほうが楽しめたんじゃないかと思います。
どうかな? 別にアンケートを取ったわけじゃないので根拠ないんですが。
まず前提として、ミステリファンって特殊です。
ミステリを読まない人に言わせれば、密室で人が死んだのを調べる話は「地味」な話です。それが普通なのです。
っていうか密室という単語だけでテンション上がるような人間は変態以外の何物でもありません(言い過ぎ)
その感覚のままに書くと、ミステリファン以外にはまったく響かないものになってしまう。
だから、あえてライトノベルでミステリを書こうと思うなら、それはミステリというジャンルの面白さを布教するつもりでないといけない。
ミステリの本源的な面白さだけを抽出して、ライトノベルの形に仕上げる。
それが目指すべき形であることは疑いようもありませんでした。
じゃあミステリの本源的な面白さって何かと言うと、当時の私が考えたのは三つ。
推理、伏線回収、意外な結末。
このうち一番重要なのは当然ながら推理です。
けれど推理という行為は慣れてる人じゃないと難しいものなので、これを促すためには一種の単純化が必要だろうと考えました。
まず事件と死体の数は一つにしようと決めました。
連続殺人は伏線の量もやたら増えて把握しきれなくなってしまうので。
次いで論点も絞ることにしました。
『どんな魔法が使われたか』だけ考えてもらって、残りはこっちで勝手にやっときますんで、というスタイルを取ることにしたわけです。
この方針に関するエクスキューズが足りなかったかなー、というのは反省点の一つです。
『どんな魔法が使われたか』だけ考えてもらって、と書きましたけど、実際には推理のお手本をするような書き方をしました。
『それじゃあ一緒に考えてみましょう』という感じの。
解決篇時に手掛かりが初出になってしまうのをいくつか許したのはそのため。
探偵役の解決宣言前に推理が出来上がっていることは最初っから求めず、解決篇を読みながら考えてもらおう、という目的で書いたのです。
通常の本格ミステリの書き方とは違うけど、そうしたほうがいいと当時の私は思ったのです。
魔法を11のリストに纏めたのは、ファンタジー要素を限定する、という目的ももちろんあるけど、それ以上に、『勘で推理できるように』という意図がありました。
そりゃ推理じゃないだろというのはお説ご尤もなんですけど、『まったく考えなくても真相当てに参加できる』のが重要だと感じたのです。
フーダニットなら犯人はこいつかなそれともあいつかなって感じで、推理をまったく働かせなくても考えられる。
だけどハウダニットではそうもいかないんで、犯行手段そのものをリスト化したのです。
魔法全書はいわば、『登場人物一覧』に相当するものでした。
フーダニットにしなかった理由は、容疑者の数を確保するためだけの無駄なキャラクターを作りたくなかったからです。
これをやるとライトノベルとしての完成度は極端に下がると思います。
無駄じゃなければいいんですけど。六花の勇者やダンガンロンパはその辺うまいよね。
それ以外はまあ普通です。
ヒロインを可愛くし、サスペンスをバトルに替えて、対立構造を明確にし、解決篇の舞台を整え、どんでん返しでぶっ飛ばす。
私はあの話をミステリというよりは『推理を使ったバトルもの』として書きました。
これは、犯人が不明であるがゆえに『敵の顔』が見えにくい、という問題点をクリアするため。
エルシリアという敵キャラを立てることで、ストーリーをわかりやすくしたのです。
(トリックが複雑だからストーリーは単純にしようと思ってました)
思い出してみてほしいのですけど、世の人気あるエンタメ寄りミステリにはほとんどと言っていいくらいちゃんと顔と名前のある敵キャラがいます。
黒ずくめの組織であり、御剣検事であり、モノクマであり、ベアトリーチェです。
そんなわけで、『敵に顔がある』というのは重要なことだと私は思っています。今でも。
ファンタジーにしたのは正直言えば流行ってたからです。
ところがどっこい、当時の私はその流行の勘所をまったく掴んでいなかったのだ。ミステイク!
ミスは他にもいくつかありますが、でかいのはパッケージングですね。
もっとミステリ読み以外を引き付ける方法を考えるべきだったんだと思います(あらすじ書いたのは私)。
いっそミステリを名乗るべきではなかったのかもしれない。
でもそれだと本末転倒のような気もする。難しい……。
そこをミスったから、最初に言った『猫の額ほどの市場規模』にしか届かなくて、残念ながら数字は出なかったわけです。
いや、具体的な数字は私も知らないんですが。
ちなみにお蔵入りになった2巻は、趣味に走りすぎてここまで書いたことをすっかり忘れています。
控えめに言ってアホだなこいつ。
こんなところかな?
この辺のことはずっと言いたかったことなのですっきりしました。
自己満足したから別に誰にも読まれなくてもいいや(笑)
ネットの隅にそっと置いておくことにするぜ……。
結果で言えばウィッチハント・カーテンコールは売れなかったけど、面白くなかったとは欠片も思わないので、今度の新作にもその遺伝子は確実に受け継がれております。
今度は売れる。マジで。
10月25日発売の『遊者戦記』をよろしくお願いします!!!